36.農術
今回のレベルアップは普通に混元功をやってる最中に来た。
〔来たみたいだな。想定よりずっと早いペースで修為が上がってるのは、いい傾向だ〕
「前にゆくゆくまずい事になるとか言ってなかったっけ?」
〔まあな。別に後からどうとでもなる事だから安心しろ。それより次は【農術】でいいな?〕
「いいよ。他に選択肢は無いんでしょ?」
〔あるにはあるがな。状況的には【農術】だろう〕
「どんな選択肢があんのよ?」
「そうだなまずは【符術】だ。これは前に言ってた身を守る為に役立つだろう。後は【錬器術】とかな〕
「どっちもよく分かんないんだけども、結局優先は【農術】なんでしょ?」
〔そうだな。今は兎にも角にも修為を上げるのに身の回りの霊気の濃度を上げて行った方がいいだろう〕
毒食べて混元掌の威力を上げれば、それだけでも護身になるみたいだし、混元掌も武術だと思って修練すると、自然と戦う時の使い方も見えてくるのが、システムの凄い所なんだろう。
「じゃあ、そのおススメの【農術】で」
「あべべべべべべべべ」
言うが早いか、脳天に直撃する衝撃、頭を一つふるって正気を取り戻すと【農術】に必要な情報が勝手に頭から引き出される。
頭の中で整理し、その日は眠る。
|
|
|
翌日
丁度、好師匠の所に行く日だったので、いつも通り過ごし、帰り際に好師匠に尋ねてみる。
「花って一株貰ってもいいですか?」
「好」
「良かったわね!師尊様は花を大事にされてるから分けて貰えるなんて、よっぽど気に入られているのね!やっぱり早く独立して、師尊様の直弟子になるべきよ!」
「いや、自分はまだ雑役弟子の身分なので、いきなり一つ飛びで直弟子なんてなれる訳ないじゃないですか」
「そんなのは心持と努力次第よ!小白ならそう遠くない内に二品丹薬を作れるようになるし、そうなれば内門弟子にだってなれるに決まってるでしょ!」
そんな物なのだろうか?正直一品丹薬に関しては安定してるし、いずれは二品薬も手を出したいとは思ってはいるが、こんな簡単にできてしまったら、それこそ何年も修行してる人達はどうするんだ?って話だ。
とりあえず、毛師姉の好意だけは受け取っておくとして、好師匠の家の花を一株貰っていく。
小振りの菊の様な黄色い花を植えた植木鉢を持って、外苑に向かう。
まずは兎にも角にも土づくりじゃん?って事で肥料になる様な物を買っていきたい。
ってな訳で、最初に目を付けたのが骨屋さん。
いや、本当に多種多様な骨を売ってる店があるのよ。何のために売ってるのかは知らんけども。
「すみません。畑作りたいんですけど、骨粉ってありますか?」
「あぁるぅよぉ」
怖ぇぇぇぇ。
「じゃあ、この花育てるのにいいのってどれでしょう?」
植木鉢を見せると、にちゃぁっと笑う深くフードを被った店主が、二つの太い骨を差し出してくる。
〔右だな。化け象の大腿骨だ。なかなか手に入らんから絶対手に入れとけ〕
なんか、珍しく勢いのある感じでシステムが言ってくるので、右を指さす。
にちゃぁっとした笑みがさらに深くなり、周囲の気温すら一度下げたような感覚に陥る。
「いぃ目ぇしぃてぇるぅねぇ。サービスすぅるぅよぉ」
そう言いながら、骨をハンマーで砕いて、更に石臼の様な物で粉にしていく。
そして麻袋一杯の骨粉が手に入り、お代は金の葉一枚とちょっとお高め?
〔かなり安いぞ。普通末端価格でその三倍はする。この店はいい店だ〕
何かやばい粉みたいに言わないで欲しいんだが?
更に肥料も欲しいので、他も店に行くと燃料を売っている店がある。
燃料と言っても、石油ではない。乾かしたうんこ屋さんだ。
「あの肥料にしたいんですけど……」
「好きな物を選べ」
言い終わらない内に、突き放されたんだが?
〔一番左だ。竜糞だろう。多分地竜かその亜種だ。絶対それにしておけ!〕
かなりシステムが興奮気味なので、一番左を指さす。
「ちっ!その歳で大した目利きだな!それともあえてその見た目のまま抑えてるのか?まぁしょうがねぇ」
そう言いながら袋詰めにしてくれたのだが、お値段はやっぱり金の葉一枚とお高め?
〔まじか!竜糞がこんな値段で手に入るなんて、相当いい買い物してるぞ!〕
との事なので、特に文句も言わず笑顔で露店を去る。
そして、黄師姉の家に帰り、とりあえず自分の部屋の前の土を掘り返していく。道具は使用人部屋の所にあったので勝手に拝借だ。
「何をしているの?」
「黄師姉!李長老から花を貰ったんで植えようと思って」
「そう?ちゃんと気に入られているみたいね。分かったわ好きに庭は使っていいから大事に育てなさい」
という事なので、大っぴらに好きに使わせていただきます。
まずは掘り返して柔らかくした土に骨粉を混ぜていく。
〔あまり混ぜすぎるなよ?結構強力だからな〕
という事なので、かなり控えめにちょっとだけ撒いて混ぜ込んでいく。
更に、桶に水を汲んで銀の葉を一枚投入、真気を流し込んでいくと、銀の葉が普通の緑の葉へと変わり、水がうっすら赤く色づいていく。
その水に掘り返した土をぶち込み、例の竜糞?とやらを少量混ぜ込んでよくかき回し、それらを先程骨粉を混ぜ込んだところに投下して、更に混ぜ込み、花を植える。
|
|
|
翌日
黄色い小振りな菊みたいだった花は、白、黄色、オレンジ、紫、ピンクの5又に分かれ花を咲かせていた。




