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32.水霊根ってのがあるらしい

 「しかし、何でまた《翠霊薬》なんですか?ただの一品薬なのに」


「ただのじゃ済まないよ!私みたいに元々霊根の質がそこまで良くない修士は霊薬が頼りだってのに!」


そう言えば、霊根って何か度々聞くんだけどあまり意味がよく分かってないんだよな。


〔よく才能がとか言うだろ?そこに直結してる体の器官でな。まず霊根がない者は修仙の修行が行えない〕


「(あれまぁ、じゃあその質が悪いって事は才能もちょっとよろしくない?)」


〔そうなるだろうな。まぁそれだけじゃ測れない部分もあるから、絶対では無いが〕


「それで、何で《翠霊薬》じゃないと駄目なんです?」


「私は水霊根なんだよ。単霊根なのに質もあまり良くないんだ」


「(それだとどうなるのさ?)」


〔まぁ、辛い所だな。霊根の種類が多くても修行の速度が落ちるとは言われてるが、そもそも霊根の質自体が悪いとなるとな。ちっと辛いかもな〕


「(そもそも霊根って何なのさ?)」


〔実はよく分からん不思議な器官だが、それが無いと霊気を霊力に変えられないんだ〕


「うーん、つまり《翠霊薬》と相性がいいみたいな?」


「そう!水の霊根の私は水薬からの霊気の吸収がいいんだ!でも何故か丹薬士ってのは水が苦手な事が多いんだよ!」


「(そうなの?)」


〔いや聞いた事無いぞ?ただ複数霊根は修行は遅いが、持ってる者も少ないからな。丹薬をやる以上、木霊根は確実に持ってると見ていいだろうし〕


「(つまり修行の早い才能のある丹薬士は木霊根の単霊根の事が多いんだ?)」


〔だろうな。調べてみた事は無いから分からんが、可能性としては高いと思うぞ〕


「(ちなみに自分って何霊根なの?調べたりできないのかな?)」


〔お前は五霊根で質は平凡だ〕


「(え?微妙って言うか、それこそ修行進まなくない?)」


〔頑張れとしか言えないな〕


「聞いてるのかい?!」


自分がシステムと霊根について話していると、自分が楊さんの話を全く聞いてない事がばれた。


慌てて取り繕おうとしたが、よくよく考えたら今の自分は子供だし、もっといい言い訳があるじゃん。


「いや、話が難しすぎて分かんない」


「そうだよね」


うん、凄い素直だなこの楊さん。


まぁ、美人だから特別扱いする訳じゃないが《翠霊薬》の出所はそもそも自分だし、一応ちょっとだけストックも持ってる。


しかし、問題はその辺の流通のルールを全く知らないって事なんだよなぁ。だって売り物じゃん?勝手に自分の判断で売ったり譲ったりしたら、後から追徴課税とかされても困るんだが、果たしてどうするか。


「要は《翠霊薬》が欲しいんだよね?」


「そうだよ」


「手には入るんだけど、自分が勝手に渡していい物か分かんないんだよね」


「な!そ、そうか!黄師姉と関わりがあるって事は、李長老とも?」


「うん、黄師姉が順当に李長老の後釜に据えられるように、関心を買うべく李長老の所で働いてるけども」


「そういう事かい。なんか最近急に子供がこの辺をちょろちょろしてると思ったら、そんな事情が」


「まぁ、自分も元々秦師姉に拾われてきたんだけども、まだ子供過ぎるから一旦黄師姉に預けられてるって感じかな」


「その割に随分と重要な任務を任されてるみたいだけどね」


「なんかね?まぁ、自分みたいな子供が誰と敵対できる訳でもないし、大人しくしてるしかないんだけども」


「ふーん、それでいくらで《翠霊薬》を手に入れてくれるんだい?」


「値段って言うか、その辺の売買のルールが分かんないんだよね。薬を勝手に正規ルートの外で売買して後で怒られたり、捕まったりしない?」


「大丈夫じゃないかね?それこそ性質の悪い連中は平気で奪いに来たりもするからね」


「犯罪じゃん?」


「良くは無いけど、どうしたって力がモノを言うのが聖域だからね。圧倒的な力の前には逆らえないよ」


ふーん、だから何か皆して後ろ盾とかつながりとか大事にするのか。そりゃ個人の力でつっぱって生活するのは厳しいよな。だって強盗が正当化されるんだもん。


「何なら私があんたを守ってやろうか?」


「何言ってんの?」


「いやだから、あんたを護衛する代わりに《翠霊薬》で支払ってくれればいい」


「そんな事言ったって、自分が普段歩くのって、この辺と内門くらいだよ?」


「……暇なんだもん」


「もんって、仕事してないの?」


「一応はするけど、危険な仕事は道侶が許してくれなくてさ」


「何?道侶って?」


「え?何って言われてもな……」


〔俗世で言うところの伴侶みたいなもんだ〕


「(じゃあ、何で伴侶って言わないの?)」


〔さぁなぁ?まぁ、元々は共に修行を進める仲って意味もあるし、俗世と違って修行の進み方次第で寿命なんかも大きく違っちまうからな〕


「何となく分かったけど、それでどうやって《翠霊薬》買うお金貯めたのさ」


「そりゃあ、色々とコツコツ頑張って節約とかしたのさ。いずれは揃って築基に至るつもりだし、本当は築基丹の為に貯めておきたいのもあるんだけど」


「ふーん、よく分かんないけど、とりあえず沙さんが店中から物凄くしっかりと真っ直ぐな目でこちらを見てくるから、仕事してくるね」


楊さん的には《翠霊薬》が手に入るかどうかの瀬戸際なんだろうが、自分は自分で沙さんが変なセリフで怒りださないか心配な所なので、仕方なし。

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