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30.買い物とかしてみる

何て言うか、思ったより治安いいよな。


子供一人で宗内を歩いているのに、別に誘拐されるでもなければ、カツアゲにあうでもない。


まぁ、当たり前と言えば当たり前なのだろうが、同時に前の世界の各国の治安を考えれば、やっぱり子供一人というのは、危険な匂いがする。


そんな事考えつつも今、自分は鸚鵡緑外苑で露店を眺めつつ歩いているのだが、なんでそんな危険な事をしているのかと問われれば、ズバリ暇だから。


午前中は黄師姉の家の掃除って言っても既にもう綺麗だし、午後は沙さんの店でアルバイトか、好師匠の所で料理しつつ、薬作り。


それはもう、お金が貯まってしょうがない。


そんな中、黄師姉がずっと休んでないからと言って、休みをくれたのだが、本当の理由は明確だ。


黄師姉が金師兄とデートの日だから邪魔されたくないだけの事。


この世界の童僕に休みなんて与えられるんだ?って感じだったけど、前の世界を知ってる自分からすれば、週一休みのないこの世界の労働状況に思う所が無い訳もない、休みをくれると言われれば喜んで取らせていただきます!


結果、外苑でお金を使う方法を探しているというのが現状だ。


食べる物に関しては辛い物しかないって言うか、何なら自分が供給側だし、何か生活に必要な物って言っても、衣食住に苦労してない現状で何を買おうか?


一応貢献点ってやつがまだあるし、蔵書閣で買えば事足りるんじゃない?っていうのも一因ではあると思う。


しかし必要な物が無い状態で他にお金を使う方法と言えば、娯楽しかないだろう!と思いつつも、それほどの娯楽も無さそうだ。


前の世界のそういった娯楽に関する文化はちょっと進み過ぎていたんではないのか?と思う程には、何にもない。


いっそ他にも子供がいれば少しは荒唐無稽なアホな遊びの一つも教えてくれるのかもしれないが、この宗に現状子供は自分だけだ。


確認した訳ではないが、別に子供用シェルターがある訳でもないのに、子供と一度も会った事ないのは、その可能性が高い事を示してるのではないのだろうか?


さっきから適当に露店を覗いては邪魔にならない程度にサッと、退いて次の露店を覗くようなことを繰り返しているんだが、形状だけは結構馴染み深いというか、見た事あるような箱とか鍋とか服とかなんだけど、使い方がよく分かんないな。


何しろこの聖域って何でも変な効果があるし、鍋は料理に使うんだろうって言っても、真気を流すことでどうなっちゃうのかちょっと怖い所がある。


服も今の所は蔵書閣で手に入れた物があるし、元々襤褸を着てても文句言われない程度にはおおらかな場所がらだし、あえて綺麗な服なんか手に入れた所でって感じだ。


そんな中、ふと懐かしい感じのする露店があったので、吸い寄せられるように近づいていく。


そこはちょっと怪しい感じのするアクセサリー屋さん。


前の世界でも駅前とかに何故か露店を開いてたシルバーアクセを売ってるあの怪しいやつ。


よくお兄さんとかが、自分のオリジナルなんですよ~っとか言いながら、絶対どっかで見た事ある形状なんだよな~?みたいなさ。


そのお店もまんまそんな感じで、何て言うかネイティブアメリカンみたいな象形的な動物を銀の部分と燻した黒い部分の二色で表現してるそんな図柄だ。


「やぁ、坊ちゃん指輪がご入用かな?」


「見てるだけです」


「ふむ、でも手に指輪をつけてないって事は、一つくらい持っててもいいんじゃないかな?」


指輪って、アクセサリーだよな?一つくらい持ってた方がいいってのは、何かこう……文化的な意味でもあるのかな?


言われてみると、街行く人には指輪をつけてる人が多い気がする?


「安心しな。うちはいつでも良心価格で、坊ちゃんの様なまだ修行の浅い子でも使えるような物から揃えてるからさ!」


この言葉に一気に緊張感が高まる。


何しろ今まで会った人達は皆して自分がまだ子供だから修行できないと言ってたのに、この人は何故か自分が既に修行を始めている事を知っている。何かそういうのを見抜く手段でもあるのか?


「何を警戒されたんだろうねぇ?」


「何で自分が気の導入をしてるのを知ってるんですか?」


「この前、あの店で料理作ってたじゃないか?気の導入もしないで霊気の籠った食事を提供できる訳が無いだろ?私もよく食べに行くし」


何の事は無い沙さんのお店の常連さんだった。それじゃあ、買える物なら一つくらい買っておいてもいいかもしれない。


「じゃあ、この指輪ってなんで皆して着けてるんですか?」


「それを知らなかったのか!そっかそっか、指輪ってのは色々な道具やなんかを仕舞っておけるんだよ」


「道理で皆、鞄も持たないで手ぶらな人が多いと思った!」


「成る程ね~俗世からきてまだ日が浅いのか。じゃあこの辺はどうかね?」


そう言って、9個の指輪を立てた小振りな箱を差し出してくる。


「それは本当に気の導入を始めたばかりの人におススメの品なんだけど、大体10尺四方位の空間に物を仕舞えるよ」


10尺って日本人の感覚だと3m位だけど、ここは古代中国風世界観だし、下手したら2mかもう少し短い可能性もあるな。


とはいえ、まぁまぁなサイズ感じゃないか?例えばリュック背負ったってそんなにいっぱいの物を持ち歩けない訳だし、これは便利じゃん?


「一個いくらですか?」


「一応南方の聖域から遥々持ってきたものだし、この宗では珍しい物だからね~」


「じゃあ、やめときます。蔵書閣で自分にちょうどいい物さがしてきます」


「はい待った!坊ちゃん!辛くない食べ物を作れる坊ちゃんだからお得な価格で提供しちゃう!ちなみに差し支えなかったら坊ちゃんは今練気何級だい?」


「2級になったばかりですけど」


「その歳で2級なら大したもんだ。分かった!今ならこっちのもう少しいいやつを金の葉一枚でご提供!」


金の葉一枚だったら翠霊薬一個作れば手に入る額だし、別にいいか。


「じゃあ、それ下さい」


するとニッコニコで、店主がシルバーアクセ風の指輪を差し出してきた。


やっぱり騙されたかなとは思いつつも、どうせ使う当てもないお金だしと思ってお金を差し出し、指輪と交換した。


「坊ちゃん、いい買い物したよ。この辺じゃ珍しいから敢えて買う人も少ないんだけど、そいつは収容量こそ控えめだけど、坊ちゃんみたいなまだ身を守るすべのない子供にはちょうどいいお守りになる」


とりあえず親指に嵌めてみると、どうやら蛇みたいな模様が彫られてて、目の所に青い石がはめ込まれているようだ。


うーん、悪くない気がしてきた!

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