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26.アヒル料理を気に入って貰えたようで

「あら?今日は随分とおめかしね。何かいい事でもあったの?」


好師匠の所に着くやいなや毛師姉に声を掛けられたのだが、まだ黄師姉はすぐそこにいる。その機嫌のいい感じはちょっとまずいぞ!


「ふぅん?いつの間に小青とそんなに仲が良くなったのかしら?」


「あら、黄師姉は早く薬会に行ったらいいんじゃないかしら?金師兄がきっと首を長くしてお待ちですよ」


「それはそうでしょうけども、小青は私が秦師姉から預かった大事な童僕なんだから、くれぐれも変な気は起こさないで頂戴ね?」


「変な気ってどんな気かしら?黄師姉も知っての通り私にとっては常に師尊が一番ですから、いつも真面目に師尊にお仕えする小白と黄師姉じゃ対応が違うのも当然じゃございません?」


何か女同士の口喧嘩にしてもあけすけって言うか、本当にはっきりものを言うんだな。


それからもなんやかんやと、やりあっていたが、黄師姉も金師兄に会いたいのだろう。適当なタイミングで退いて行った。


「全く小白も大変ねぇ。やっぱり自立した方がいいと思うわよ」


「そうしたいのも山々なんですけどね。まぁ何かとしがらみもありますから、無理せずやっていきます」


「ふーん?それで、今日は何でそんなにおめかしなの?」


「ああ、この服の事ですよね。そもそも自分は貢献点のこと知らなくて、一文無しだと思い込んでたんですよ」


「あら!黄師姉ったらそんな事も教えてなかったのね!」


「いやどちらかというと秦師姉が、言葉が足らなすぎるんですよ」


「それは仕方ないわよ。誰もが認める天才肌だもの、言わずとも分かるだろうって思っちゃうんじゃない?」


うん、やっぱりこの毛師姉は悪い人じゃないんだよな。人の気持ちをよく汲み取るし、何でも悪い方にとる訳でもない。


ただ分かり過ぎるがゆえに黄師姉の好師匠に対する淡泊な感じが目に着いちゃうのか。


だとしても黄師姉は利害関係にない目下に対してはちょっと冷淡よりの雰囲気すら感じるんだけどな。


「それで?今日は何を作るのかしら?」


「それは何の材料があるか次第ですかね」


「ふふふ!今日はいいものを仕入れてきたわ!最近小白のお陰で師尊様の食欲もあるし、ここは一つ肉料理もいいかと思って!」


そう言いながら厨に連れて行かれると、そこには確かに鶏肉の塊が置いてあった。


「これは?鶏?」


「違いまーす!これはアヒルよ!外苑で偶々売ってたのを見つけたのよ。何かいい料理無いかしら?」


アヒルかー……北京ダックか、はたまたタイ料理になっちゃうけどカオナーペットとか?


〔多分後者の方がいいんじゃないか?似たような料理はレシピがあるぞ〕


システムが言うが早いか、頭に一気に湧き上がる料理手順。


さらにそこに加えて前の世界で自分が食べた事のあるカオナーペットの味とミックスし、脳がミキサーの如く元のレシピと自分のイメージを一体化させ、電子レンジのチーン音が頭に鳴り響いたと思ったら、新レシピが完成し、気が付いた時には手が動き出す。


まずはソースづくりだが、自分のイメージでは何となく甘くてちょっと生姜風ってそれだけの情報だったのに、いつの間にやら見た事のない多分聖域産の果物や香辛料に香味野菜を選び取り、あっという間に切り刻んで煮詰め始める。


自分でやってるのにほぼオートパイロットのような動きで、もう止まらない。


そこら今度はアヒルをローストしていくのだが、とりあえず現時点で羽も抜いてあるし血抜きもしてあるので、下味をつけて焼くだけだ。


だけとか言いながら前の世界の自分では到底無理だったろう筈の料理が、あっさり簡単に形になっていく。


聖域の調理器具の謎性能のお陰だ。


カオナーペットのアヒルは皮をパリパリに仕上げなきゃいけないので、油を上手く使わなきゃいけない筈なんだが、何かただのオーブン的な所につっこんで銀の葉っぱに真気を流しつつ、結果をイメージさえできれば、物の数分も経たずに理想的な結果だけが現れる。


それを真気を流した包丁で適度なサイズに切り分ける頃には、上にかけるソースもちょうどいい塩梅に煮詰まっている。


前の世界でやったらこの工程だけで何時間かかるんだよって感じで、絶対個人で出来るようなもんじゃないだろと思うのだが、本当にあっという間においしそうなカオナーペットが出来てしまった。


とりあえず好師匠の所へ持っていくと、細い目を一杯に広げた師匠がひょいひょいと箸で摘まみ上げてあっという間に完食してしまう。


「本当によく食べるようになってくださって、この分ならもっと寿命が延びてもおかしくないわね!」


「そうなんですか?気に入って貰えるのはありがたいですけど」


「そうよ!体に霊力が満ちれば当然それに伴って体も強く健康的になるんだから、これからも小白の腕には期待してるわ!私も負けずに師尊様に気に入られるようなご飯作るんだから!」


それはやめておいた方がいい。もう間違いなくこの好師匠は辛い物好きじゃないだけだから。


「好」


一瞬心の声が聞こえたのかと思って、ドキッとしたが毛師姉の様子を見る限り何か違う様だ。


「師尊様が小白はとてもいい子だから、何かしてあげたいって言うんだけど、小白は何か望みがある?」


何であれで通じるのかは分からないけど、望みと言えば今の所一つかな。


しかし、あえて謙遜してみるのも一つか?その方が印象良さそうだし。

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