25.もうレベルアップ?
それは、唐突に起こった。
いつもの通り寝る前に自室で混元功の修行を行っていた時の事、何故か全身に霊気が漲り、全身の細胞がざわついたかのような、それでいてとても心地のいい感覚に陥った。
「なんだこりゃ?」
〔おめでとう。どうやら練気二級に至った様だ〕
「え?早くない?」
自室に一人という事もあり、普通にシステムと話してはいるが、一応既に日も暮れてるので声のボリュームは調整してる。
〔確かに普通に考えれば、かなり早いな〕
「何でまたそんな事に?まさか自分にそこまでの才能が?あっ!だから自分なんかにシステムがくっついてるのか!」
〔残念ながらそれは無い。お前の修行の進みが早いのは環境がいいから、それのみだな〕
「はいはい、分かってましたよ。タダでいいもの食べてるんだから、そりゃあ成長もいいでしょうよ」
〔それだけじゃない。そもそもお前の才能で最初から内門で生活できるなんてそうそうないんだよ。どうしたって修行者は霊気を霊力に変える都合上、霊気の濃い所で生活した方が修行の進みもいい〕
「成る程ね。まさしく環境がいい訳だ。それなら人知れずどんどん修行を進めていく事も可能?」
子供で周りから甘く見られてる内に修行を進めておけば、将来大人になった時に身を守りやすくなるんじゃなかろうか?
〔どうだろうな?ある程度の所で間違いなくバレるとは思うが、修為を上げていくこと自体は、どんどんやっていい。あるタイミングまで行けばちっとまずい事もあるだろうが、その辺の対策もおいおい考えればいいさ〕
ちっとまずいって、なんだよ。不安になる事言うよな~このシステムもさ。
「それじゃあ、当面は行ける所まで修為とやらを上げるって事でいいんだけどさ。また何か術とかくれるの?」
〔ああ、そのつもりだ。今のおすすめは【錬丹術】【農術】辺りだろうな〕
「身を守る術みたいなのはないの?」
〔それも考えてはいるが、まだ修為が低すぎて操れる真気が少なすぎるのがネックになってくる〕
それじゃ致し方なしか。何だかんだシステムは自分に対して都合の悪い事はやってこない。勿論システムなりの目的に沿っていればなんだろうけども。
「【錬丹術】ってのは要は薬作るって事なんでしょ?【農術】は?作物育てるとかってなら畑借りないといけないんだけども」
〔何でその二つを薦めたかって言うとな。【錬丹術】は文字通り師匠になる人がいて、あわよくば錬丹炉も貸して貰えるだろ?今のお前のポジションならな。【農術】に関しては確かに畑を借りて食べる物を作った方がいいが、それだけじゃなく花を育てる事も出来る〕
「花育ててどうするの?師姉たちに気に入られてもうちょっと自分の地位を盤石にでもしろと?」
〔違う。よく考えてみろあの好の錬丹師の家は花だらけだったろ〕
言われてみれば、好師匠の家は花がいっぱい植えてあるけど、あれって師匠とか毛師姉の趣味じゃないのか?いや、そんな理由だったら一々こんな説明しないか。
「花も修為を上げるのに役に立つんだ?」
〔ああ、地中の霊気を吸って空気中に放散してくれるからな。まさかに土を食べて土の霊気を吸収する訳にもいかないだろ〕
「つまり、そういう植物系の生育を助けるのが【農術】って事でいいんだよね?」
〔その通りだ。なんなら好の錬丹師の所で少し花を分けてもらって、お前がこの家で増やしたのをまた返してもいい〕
「してもいいって言うけど、自分は自慢じゃないけど木だろうと花だろうと昔から容赦なく枯らしてきたよ」
〔【農術】を使えば、化け物みたいな花がいくらでも育つようになる。好の錬丹師の所の花は、ただ山に生えてるものを植え替えただけの様に見えるし【農術】を使ってやれば、今より気に入られてもっといい待遇を受けられる可能性も出てくるだろ〕
確かに。
正直な所、黄師姉に関しては程よい距離間で接していると言っていい。
それこそ前に予想した通り、黄師姉は自分を預かる事で秦師姉との間柄を良好な状態に保っておきたいというのが見え隠れしている。
とはいえ、今の所問題を起こす素振りの見えない自分に対しても、別に嫌悪感を抱くとか面倒だとかそういう様子も見えない。あくまで自分の観察の範疇だけども。
対して毛師姉は自分を懐に入れようとしている。
それはあくまで好師匠に有益だからでしかないが、今後も好師匠にとって有益でいられれば、自分の立場がもっと良くなることは可能性として高い。
そして黄師姉、毛師姉共に自分に対して求めているのは好師匠にとって都合のいい童僕である事な訳だから【農術】を取るというのは合理的な判断かもしれない。
同時に【錬丹術】を手に入れて、こっそり好師匠に錬丹を教わる事が出来れば、今後何かの役に立つかもしれない。
いや、そんな事ないか?好師匠や黄師姉と同じ事が出来た所で、自分にとっていい状態が訪れるかは、別問題か?
〔そんな事は無いだろう。修為を上げるのに丹薬を使うなんてのは常道もいい所だし、何よりお前自身の為になる事だ。今はまだ修為が低くて環境だけで何とかなるが、ゆくゆくは丹薬の力は必要になるぞ〕
偶に脳の中直接読み取って来るんだよな。でもそう言われると、好師匠と関係が良くうまくコミュニケーション取れてる内に丹薬作る練習しておくのがいいかもしれない。
〔じゃあ【錬丹術】な〕
「いや、ちょまっ!あべべべべべべべべべべべべべべべべべ」
流石に慣れてきたのか倒れこそしないが、中々にきついぜ。




