僕は反則技で無双した
ダンジョン一階のボスと決戦です。
僕たちは再び何でも溶かすスライムを前にした。
スライムの全てを溶かす液が僕たちに吹きかけられる。
僕たちは溶けて消えるが、瞬時にその場に復活する。
全てを溶かすスライムは、今まで戦ったどのスライムよりも巨大だ。
僕たちが溶けないと思ったスライムは更に巨大化して、大量の溶解液を滝のように僕たちに浴びせ続けた。
僕たちは全身から泡を立ち昇らせながらも平気で立っている。
肌が少しピリピリする程度のものだ。
「うぁっ」
「きゃっ」
その時僕たちは気が付いた。
僕たちの姿が素っ裸に見える。
「説明しよう。防具が溶けて消えた後、パパとママはやられてしまうからである。溶解液への耐性が上がり続けているので、裸の時間が長くなり、はっきりと見えるようになったのである」
僕たちは身を丸めて身動きが取れなくなった。
これはまずい。
「ハル。覚悟を決めましょ。私たちって家族よね」
美崎が決心したように言う。
「そうだよ。僕たちは家族だけど?」
それがどうしたのだろうか?
「家族ならば家の中で一日中裸で過ごしたって恥ずかしく無いわ」
そう言うと美崎は体を隠すのを止めてスクッと立ち上がった。
「さあ。ハルも立って」
僕は美崎に促されて立ち上がる。
「家族ならばお風呂にだって一緒に入って見せるわ」
「そ、そうだね。僕はどぎまぎしながら相づちをうつ」
突然美崎の全身が真っ赤っかになる。
僕も真っ赤だ。
一緒にお風呂の発想は恥ずかしすぎる。
「い、行きましょうハル」
そう言うと美崎はスライムに突進する。
僕も後に続いた。
「私たちは家族よー」
「そうだ。僕たちは裸族だぁー」
剣を持っているのか持っていないのか分からない腕を振り下ろして僕たちはスライムを攻撃し続ける。
突然スライムはボムンとはぜて消滅した。
足元の床が地の底まで溶けて消滅した。
美崎がすかさず浮遊魔法を発動させ僕たちは空中で抱き合って喜んだ。
「やったあー」
ムギットした柔らかい感触。
僕たちは素っ裸だった。
ちょうど裸になったタイミングで勝利だ。
「あっ、ご、こめん」
僕は慌てて美崎から離れようとした。
しかし、美崎は僕の首に両腕を巻き付けたまま動こうとしない。
「ハル。私から離れると落っこっちゃうよ」
美崎は静かにうっとりとした声で僕の耳元でささやいた。
魔法を発動させているのは美崎だから確かにその通りだが。
「えっと、僕たち裸なんだけと」
「平気よ」
美崎はそう言っただけで動かない。
裸を完全克服したのだろうか。
「ねえハル。もしも私たちが元の世界に戻って、学校を卒業して大人になったら、私たち結婚するのかしら」
美崎は唐突にそんな話をし始めた。
「そうだと思うよ。きっとそうだよ」
僕たちが大人になったらきっとそうなるだろう。
僕は確信していた。
ダンジョンの床の修復が始まった。
足元の大穴はふさがり石畳に戻った。
「ダンジョン一階の攻略完了ね。降りましょう、ハル」
美崎は幸せそうな笑顔を浮かべた。
僕たちがゆっくりと床に降り立つとそそくさと装備を整えた。
二人の間に沈黙が流れる。何となく居心地が悪いというか気恥ずかしいと言うか、おかしな雰囲気が漂っている。
床がフワンと光ると宝箱が現れた。
「あっ宝箱だ!」
僕はわざと大きな声を出して宝箱にずかずかと歩いて箱を開けた。
中には金の鍵が入っていた。
ボス部屋の奥の壁がキラッと光ると、壁の真ん中に輝く鍵穴が現れた。
「これこれ。これだよ」
僕はそう言ってそそくさと壁に歩み寄ると鍵を鍵穴に差して回した。
ガラガラと壁がせり上がり、地下へ続く階段が現れた。
「行こう。ミサ」
僕は振り返って美崎に声をかけた。
「うん」
美崎は僕の隣に立つ。
「ねえハル。結婚するならばいろいろと話し合わないとね」
美崎は僕の肩にぴったりと体を寄せていう。
「えっと、あの、結婚前の話し合いって?」
まさか、子供は何人欲しいとかって言うそんな話……。
「夫婦の役割分担よ。食事は誰が作るのかとかお掃除、洗濯、ゴミ出し当番とか」
「えっ、そんなの決めるの?」
「当たり前じゃない。しっかりと決めておかないと夫婦喧嘩の元よ」
「僕たちって夫婦喧嘩するのかな?」
「当然よ。そうならないためにも、しっかりと結婚前に話し合っておくの」
僕たちは結婚生活をシミュレーションしながらダンジョンを進んで行った。
ポーカー:「炊事、洗濯、火事全般。全部女の仕事だわ」
ズドン!! (ポーカーのみぞおちに拳が打ち込まれる音)
ポーカー:「グハァー。オェッ。ゲホゲホ」
ポーカーの妹:「何だとこのS'年代の悪徳領主。腸ぶちまけて消え失せろ」
ポーカー:「なんなのこの凶暴な女は。私は悪徳領主だけどS'年代じゃないわよ。あんた誰よ」
ズドーン (ポーカーの脳天に蹴りが炸裂する音)
ポーカー:「私の脳天から血が噴水のように。グハァー」
ポーカーの妹:「おめーの妹だろうが」
ドスッ、ボコボコ (ポーカーがボコボコにボコられる音)
ポーカー:「グハァー。わ、私の妹は死んだのよ。あの時確かに」
ポーカーの妹:「はたしてどうかしらね」
ポーカー:「それにあんたみたいに凶暴じゃないわよ」
ポーカーの妹:「なんだとぉー」
ボカボカボコボコドスドス (ポーカーがありとあらゆる攻撃を身に浴びる音)
ポーカーの妹:「もういっぺん言って見ろよ」
ポーカー:「だからこんな凶暴な女なんて私の妹なんかで有るものですか」
ズンッ! ドゴッ! ドスッ! ボカボコボコドスドスガツンガツン ギリギリギリ、グキィー
ポーカー:チーン




