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僕は自分の世界で無双する  作者: ウエンズディー・S・水田
音楽無き世界で歌う女神

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僕はトラップ攻略に奮闘する

 ダンジョン攻略にはトラップを切り抜ける事も必要です。

 どうすればこのミノタウロスの名前を当てることが出きるのだろうか……。

 チャットも制作に関わっているのだからノーヒントと言うわけでは無いだろう。

 ヒントを見つけないと。


「ミサ。石像を詳しく調べて見るよ。何か分かるかも知れないし」

 僕はそう言って神技空中浮遊を発動させた。


「説明しよう。神技空中浮遊とは体を宙に浮かせ、自由に空中を飛び回る技である」

 インフィニティの説明が入る。

 口調を工夫して、いかにもそれらしい解説にしてくれている。

「フィニットちゃんの解説それらしいね」

「うん。それらしい。それらしい」

 僕たちは大満足だ。


「私も調べるよ」

 美崎も空中浮遊で石像の周りを飛び回った。


 僕たちがしばらく飛び回っていると美崎が空中で静止した。

「あっ、持ち物に名前が書いてある」

 美崎の言葉を聞き、僕は彼女の所に行ってみる。

 美崎は石像が振り上げている剣の柄を指さしていた。

 見ると確かに剣の柄に名前らしきものが彫り込まれている。

「念のためもう少し調べてみよう」


 僕たちは更に飛び回って石像をくまなく調べた。

「あっ、ここにもある」

 楯の裏に同じ名前が刻まれていた。

 そこには『アリーナレンタル』と書かれている。

 持ち物にはしっかりと名前を書きましょうと僕たちは小さな頃から教わってきた。

 僕は確信した。


「分かった!! この石像の名はアリーナレンタルだ!!」

 僕は自信満々に叫んだ。

 声が闘技場にこだました。


「ブッブー。はずれでーす」

 インフィニティの残念な言葉もこだました。

「アリーナレンタルのアリーナは闘技場のことで、レンタルは貸すことだよ。武器と防具は闘技場からの貸し出しものなんだ」

 インフィニティが説明してくれる。

「チャンスはあと一回だよ」

 この一言で闘技場のボルテージはマックスに跳ね上がった。

 スライム達の歓声が熱を帯びる。

「人間どもを叩き潰せ」

「やっちまえ」

「あと一回。あと一回。あと一回。あと一回」

 まずい。どうしよう。


「インフィニティ。パパとママのトラップ攻略を手伝って」

 僕は我が子の力を借りることにした。

「うん。いいよ。ヒントを出すね」

 インフィニティは素直に応じてくれる。なんて良い子なんだろう。


「ヒントはこの場所だよ」

 この場所?

 僕は考え込んだ。

「ここはアリーナ。観客がいるよね」

 闘技場の名前はアリーナで、アリーナに観客か……。

「アリーナで観客がする事だよ」

 ここの観客ってステイムの事だよな……。

「ふつうはしゃべらないステイムをあえてしゃべる様にしたのは何でだと思う」

 スライムにしゃべらせたかった……。

 アリーナの観客が声を上げてする事!!

 そうか分かった!!

「私分かったかも」

 美崎がつぶやく。

「僕も分かった!!」

 僕は石像の顔を見上げた。


「僕の名はハルだ。さあ、名乗れ。正々堂々と勝負だ!!」

 僕は石像に向かって名乗りを上げた。


 石像の顔が動いて僕を見た。

「お前に名乗る名など無い」

 石像がつれなく答えた。


 へっ!? 僕はがっかりした。失敗だ。

「違うわよ。こうすればいいのよ」

 そう言うと美崎は手拍子を打ち出した。

 そして、手拍子に合わせて僕の名を連呼し始めた。

 パン!!、パン!!、パン!!、パン!!

「ハルっ、ハルっ、ハルっ、ハルっ」

 美崎のシュプレヒコールに観客席からブーイングが上がる。


「だまれー」

「ハルだと。やつを踏み潰せー」

「ハルをやっちまえー」

「そうだ。そうだ。やっちまえー。グラッド」

「やっちまえー。グラッド」


「グラッド、グラッド、グラッド、グラッド」

 美崎のシュプレヒコールをかき消さんとばかりに、会場にスライム達のシュプレヒコールが巻き起こった。

 美崎はすかさず石像を指さして叫ぶ。

「あなたの名前はグラッドよ」


「ピンポーン。ママ大正解。トラップ解除だよ」

 インフィニティの嬉しそうな声が闘技場にこだました。

 正解と共に石像が動き出す。

 大きな盾と剣を足元に置くとバッファローの頭を両手でつかんで持ち上げる。

 ミノクウロスの頭部だと思っていたのはバッファロー型のヘルムだったのだ。


 中から屈強そうな四角張った顔が現れた。

 髪を短く刈ったひらたい頭。

 彫りの深い目鼻。薄い唇。

 えらの張ったしゃくれた顎の真ん中は割れている。

 如何にも古代の戦士と言った顔立ちだ。


 石像の男は真っ白な歯を見せてニカッと笑うと、僕たちに親指を立てて見せた。

 いいね! と言ってるようだ。


 そして足元から剣と盾を拾い上げると、猛然と観客席に乱入してスライムの集団を蹴散らし始めた。

「グラディエーターの反乱だー」

「グラディエーターが反乱を起こしたぞー」

 観客席が騒然とした。


 ステイム達は観客席の一カ所になだれ込むと、吸い込まれる様に消えて行く。

 通り道が有るようだ。


「多くを取り逃がしてしまった。冒険者達よ私がお供をしよう」

 石像のグラディエーター、グラッドは僕たちの所に戻って来るとそう言った。

 グラッドはかなりの戦力になる。

 僕はそう思った。

「いいよ。一緒に行こう」

 僕の返事にグラッドはニカッと笑って親指を立てた。


 僕たちが闘技場のスライム達が消えた所に来てみると、観客席の足元に小さな穴が開いていた。

 穴はパイプの様に水平に、奥の方に伸びているようだった。


「冒険者よ下がっておれ」

 そう言うとグラッドは石の大剣を穴のある観客席に振り下ろした。

 観客席がきれいに崩れて、人が一人通れるくらいの通路が現れた。


「私はここまでだ。冒険者よ心して行かれよ」

 グラッドの言葉に僕は、えっ! ここまでなの!? とがっかりしたが、この通路の狭さでは仕方が無い。

「ありがとう。グラッド」

 僕の言葉にグラッドはニカッと笑って親指を立てた。


「ここから先、まずはスライム退治からだね」

「そうね。行きましょう。ハル」

 僕と美崎はダンジョンの奥に進んで行った。

音音:「わたし分かった!! 石像の名はグラッドよ!!」

春海:「音音さんも正解だ。美崎も正解だし。どうして二人とも分かったんだろう!?」

音音:「グラディエーターだからグラッドよ」

春海:「いや、そうじゃなくて」

美崎:「答えを誘導したの」

春海:「??」

音音:「先輩。ほら、アリーナの観客はステージに向かって名前を叫ぶでしょ。そうさせるように誘導したのよ。美崎先輩が」

春海:「剣闘士を奮い立たせる様にスライムにコールをさせたって事か。でも、そしたら反乱? 変じゃない?」

黒出流:「変じゃないさ」

坂田:「変じゃないですよ」

春海:「いきなり観客席に乱入だよ。応援してたのに。設定がおかしいよ」

黒出流:「しっかりと考え抜いて作ったさ」

坂田:「考え抜きましたよ」

春海:「急に味方になるし。もし、失敗したら敵だよね。不自然だよ」

黒出流:「トラップとは不条理なものさ」

坂田:「そうですよ。トラップなんですから」

春海:「もっとちゃんと作って有れば解けたのに」

美崎:「私、解けたよ」

音音:「先輩。私も解けました」

黒宮:「私も解いてたわね」

吉田先生:「テスト結果を発表します。コロセウムのトラップに引っかかったのは春海さんだけでした。春海さん、補習です」

春海:「……」

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