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僕は自分の世界で無双する  作者: ウエンズディー・S・水田
音楽無き世界で歌う女神

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45/50

僕はダンジョンの出来映えに感心する

春海と美崎がダンジョンに潜る時の話です。

 かつて悪徳領主ポーカーを嵌めるために作った架空の町は第二都市として発展した。

 都市の住人を避難させ第二都市の西に作ったダンジョンの入り口がその堂々たる姿を現していた。

 ダンジョンは岩盤が隆起して出来た岩山を深く掘り進めて作られていて、その入り口は巨大な岩の扉が重たく閉ざされていた。

 扉には魔物封じのルーン文字が刻まれている。

 そんな扉を囲む山の岩肌には、かつてこのダンジョンで繰り広げられたら伝説の戦いの数々が象形文字で刻み込まれていた。


「完成してみると想像以上の威圧感だね」

 僕は美崎の横顔を見つめて話しかけた。

「いい雰囲気に仕上がったね」

 隣に立つ美崎はダンジョンの出来映えに満足した様子で笑みを浮かべていた。


 これはまだ王もポーカーも軍勢を整え出した頃の話し。

 音音がラスボスっぽくなるしばらく前の事。

 僕と美崎。それに坂田君と黒出流先輩の四人は完成したばかりのダンジョンの前に立ち、入口の巨大な扉を見上げていた。


「本当に先輩二人だけで攻略するんですか? 通常ならば五人以上の編成が必要ですよ。ここのモンスタ一かなり強いですから」

 心配している坂田君の言う通りこのダンジョンの攻略は相当に難しい。


 ダンジョンに出現するモンスターをデザインするにあたって、坂田君はおふざけを封印して取り組んだ。

 しかもチャットがアイデア出しに加わっている。

 相当に本格的な手強いモンスター揃いとなっているだろう。


 そしてダンジョンの深さは百階層。しかも広い。

 奥に進む程モンスターのレベルも上がって行く設計だ。

 一階層目がレベル一から九までのモンスター。二階層目がレベル十一から十九までのモンスターと言う具合。

 各階層の再奥にはボスが控える部屋があり、ボスを倒すことで下に降りる階段が出現する仕組みだ。

 

 そして百階層目にはレベル九百九十九のモンスターが出現する事となる訳だが、最後の部屋に控えているモンスターは文字通りラスボスだ。


 更にダンジョンには罠が仕掛けられていて、一階層降りるごとに罠が巧妙凶悪になりダンジョン自体の攻略レベルも上がって行く。


「まあ、大丈夫だろう。ダンジョンの至る所に俺の作ったマジックアイテムが配備されてるから」

 黒出流先輩はダンジョン攻略を有利に進められるアイテムをたくさん作ってくれていた。


「ところでお前たち初期装備はどうするんだ。良ければこしらえてやるぞ」

 黒出流先輩は更にアイテムを作ってくれると言う。

「ありがとう先輩。そうですね……。ミサと相談しますね」

 そう言うと僕は美崎に話しかけた。


「ミサ。現在のステータスをおさらいしよう」

 僕と美崎はオプション画面を開いた。


 まずは種族。

 僕たちは人間(ヒューマン)。パラメーターのベースだ。


 次に職業(ジョブ)。

 種族に次ぐ基本要素だ。

 僕たちはレベル三十五の聖職者。クラスは都市級伝道師。

 僕が修道士(モンク)で美崎が修道女。

 僕は建築、美崎は神事をする事で、ここまでレベルを上げてきた。

 決して低い数値ではないが、王の軍勢の中にはレベル五十を超える者もいる。

 まだまだレベルが足りない。


 セカンドジョブ…ゲームクリエイター

 サードジョブ…ゲームプレイヤー

 これが謎ジョブ。

 この世界を作ったのが僕たちだから設定されているスペシャルなジョブなのだろう。


 そしてサブクラス。

 闘神バーバリアン……。

 レベル80。

 あらゆる行動に経験値が乗るゲームデザインが作り出した追加のクラス。

 これをアクティブにすればほぼ無敵に戦えるが敵味方区別無く攻撃を仕掛けてしまうので使えない。

 今回のダンジョン攻略は他の使えるクラスを獲得して王の軍勢と渡り合うのが目的だった。


「僕は両手持ちの剣を装備しようかな。勇者らしくしてみようと思うんだけど」

 やはりロールプレイングゲームのプレイヤーは勇者が良いと思う。

「クラスに勇者が加わるの、良いと思うよ」

 美崎は賛成だった。


「それじゃ私は聖戦士。楯と剣の装備で行こうかな」

 勇者と聖戦士。強そうだ。僕たちはこれに決めた。


 オプション画面を閉じて先輩に僕たちの装備を伝える。

「これも持ってけ。あれも持ってけ」

 そんな感じで先輩は更に追加していろいろな装備を作ってくれた。

 美崎は背中に楯を背負い両腰に剣。手に魔法の杖を持っている。

 僕は右手に剣。左手に楯。背中に二本のグレートソードを背負っていた。


「アー、ハル。ミサ。イッテクルヨー」

「イッテクルヨー」

 エコーとパロペディアが大勢の仲間たちを引き連れてやってきた。

 出発の時だ。


 美崎はダンジョンの固く閉ざされた重たい石の扉に片手をあてがうと目を閉じた。

「我等は迷宮に挑みし者。さあ古(いにしえ)の扉よ開きたまえ」

 美崎声に呼応して、扉のルーン文字が青白い光りを放つ。

 すると石の扉は真ん中に筋が入り、両開きで内側にゆっくりと開いて行った。

 扉の奥は真っ暗で見通せないが魔物の気配が凄まじい密度で渦巻いているのが感じ取れる。

 早く扉を閉じなければすぐにでもダンジョンから魔物があふれ出しそうだ。


 みんなの前で僕と美崎は手を振る。

「それじゃ行ってきます」

「行ってらっしゃい」

「お気をつけて」

「期待しておりますぞ」


 僕と美崎は学友や兵団長たちに見送られて、ダンジョンの扉を抜ける。

 背後で音もなく重たい両開きの扉が閉ざされて僕たちは暗闇の中に取り残された気分だ。

 何かのアトラクションに踏み入れた気分。緊張感とワクワク感がせめぎ合っている。


「ダンジョンは暗闇。灯りが必要だよ」

 インフィニティの声が聞こえた。

 インフィニティは今回ダンジョン解説を手伝ってくれる。

 ただし、インフィニティは今ここにはいない。

 本人はと言うと少年少女探偵団を率いて都市に潜んでいるテロリストの居場所を、奴らが活動を始める前にあぶり出すため奔走中だ。

 だから声のみの参加となっていた。


「マジックライト」

 美崎が唱えると空中に光球が現れた。

「巨大化。分裂。上まで上がって明るく照らせ」

 美崎の追唱に従って、たくさんの光球がダンジョンの天井に広がって、広い空間を照らし出した。


 足元には巨大なすり鉢状の窪みが広がっていた。


「ここは闘技場(コロセウム)だよ。深さは約三十メートルあるよ」

 インフィニティの説明が入る。


 だが、何より先に目に飛び込んできたのは、闘技場の観客席を埋め尽くす、おびただしい数のスライムの集団だ。

 様々な色、かたち、大きさ。


 僕は素早く剣を構えた。

 美崎も杖を構える。

「ミサは炎で!!」

 僕が叫んで飛び出そうとすると、美崎に腕をつかまれた。

「待ってハル。様子がおかしいよ」

 美崎の冷静な声に僕は動きを止めた。

「スライムが動かないの」

 美崎の言う通りだった。

 僕たちの気配を察知していてもおかしくないはずのスライムが微動だにしない。

 これはもしかしたら闘技場に集まっている観客……。

「何かのギミックかもしれないわ」

 美崎の言う通りだ。

 僕は落ち着いて闘技場を見ると、すり鉢状の闘技場の底には円形のバトルフィールドがあって、中心に大きな石像が立っているのが見えた。

 意味ありげだ。

「トラップかもね」

 僕の一言に美崎は頷く。

「解除しないと先に進めないかも」

 そう言って美崎は闘技場を見回した。


「ママの言う通りだよ。解除しないと進めないよ」

 インフィニティが説明してくれた。


 トラップは坂田君と黒出流先輩とチャットが共同で作ってる。

 この訳の分からなさは、それっぽい。

「あそこが階段よね」

 美崎が指を指し、僕たちはそこに行ってみると大きな階段が二つ並んでいた。

「下に降りてみよう」

 そう言いながら僕が右の階段に近づく。

 すると、ブーブーと警報音が鳴り、階段がこちらに向かって次々と迫ってくる。

 上りのエスカレーターだ。

 やってしまった。エスカレーターを間違えた。これは気まずい。

 しばらくの間、エスカレーターがブーブー言いながら動き続ける。

 恥ずかしさがじわじわと強まって来る。

 地味に精神攻撃を仕掛けてくるトラップだ。

 美崎に見られちゃったけど、他には誰も見てないし……。

 そう思ったタイミングでクスクスと、スライムたちから笑い声が聞こえ出す。

 恥ずかしすぎる。マジやめてくれ。

「ハル。こっちよ」

 僕は美崎に促されて、下りエスカレーターに乗った。

 僕たちが下り始めると観客席のステイム達から歓声が上がりだした。

 闘技場の底に近づくにつれ歓声が大きくなって来る。

 闘技場の底に降りた時には、闘技場を揺るがすような大歓声になっていた。


「やっちまえー」

「人間を叩き潰せ」

「生きて返すな」

「人間どもを抹殺だー」

 ここでは僕たちが敵役だった。

 それにしてもステイムって、しゃべられるんだっけ?


 闘技場の真ん中には高さ十メートル以上ありそうな、巨大な石像が立っていた。

 首から下は筋骨隆々たる人間の体。顔は勇猛なバッファローだった。


 左手に楯。右手に大きな剣を持ち、吠える表情で両手を頭上に振りかざし雄叫びを上げるかの様だった。

 近づいてみたら本当に大きい。

 動き出したらヤバそうだ。


 そう思て見上げていると、突然スピーカーっぽくピーガーガーと音がした。

「我が名を当てろ。チャンスは三回」

 黒出流先輩の声だ。

 僕が思わず「えっ、何だって?」と言うと再び。

 ピーガーガー

「我が名を当てろ。チャンスは三回」

 また同じ声。

 もしかして、これは録音!?


「黒光(くろびか)り先輩の録音だよね」

 美崎が言う。やっぱりそうなんた。


「この石像の名前を当ててね。当たれば先に進めるよ。でも三回はずすとこの動く石像と、なだれ込んでくるスライムたちとバトルだよ」

 インフィニティが説明してくれた。


 スライムは何万もいそうだ、しかも観客席の上の方の特等席にはキングスライム。更に上の方にはエンペラースライムやスライムロードまでいる。

 レベル三十ちょっとの僕たちじゃこれらをまとめて相手などできるはずもない。


 もう一度石像に目を向ける。

「これはミノタウロスかな?」

 僕がつぶやくと。

「ブッブー。はずれです。チャンスはあと二回だよ」

 インフィニティが応える。

「あっ、違うよ。今のはノーカンで」

 答を言ったわけではない。

「パパだめだよ。ルールだから。ユニーク名で答えてね」

 闘技場の歓声が更に高まる。

「あと二回っ、あと二回っ、あと二回っ」

「やっちまえー」

「皆殺しだー」

「叩き潰せー」

 さあ、どうしたものか……。

 どこかにヒントがあれば良いんだけど。

 僕と美崎はじっと石像を見上げていた。

音音:「ラスボスのわたしがコミュ障少年を好みなんて変ですかぁ?」

モネトス:「チャンチャラおかしいわ」

音音:「まだ言ってる。これは歌よ」

モネトス:「おかしい歌ですね」

音音:「おかしくないわよ。コミュニケーションが苦手でも良いんだよって肯定してるの。愛よ。愛」

モネトス:「愛の歌なのですか」

音音:「そうよ。そうなのよ。今のままで良いんだよ。だって私はあなたを愛してる。今のあなたを愛してる。今のままで良いんだよ。そう歌ってるのよ」

モネトス:「なるほど」

音音:「人が苦手でもいいよ。でも、私だけは好きでいてねって」

モネトス:「そもそも彼女は人間で無いですしね」

音音:「分かってきたじゃないモネトス」

モネトス:「魔界を滅ぼすのですか」

音音:「もちろんそうよ。彼が望むならね」

パロペディア:「アー、アイ コジラシテル」

エコー:「ゴジラシテル ゴジラシテル」

音音:「あっもしかして、あのときのインコとオウムって……」

モネトス:「今回は落ち無し」

音音:???

パロペディア:「オチナシ」

エコー:「オチナシ」

モネトス:「次回はダンジョン攻略の続き」

パロペディア:「ツヅキ」

エコー:「ツヅキ」

音音:「どうしだのみんな。誰に向かって話してるの?」

モネトス:「お楽しみに」

パロペディア:「オタノシミニ」

エコー:「オタノシミニ」

音音:???

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