音音は怒りで無双する
女神が怒りで豹変します。
泉の街は歌と泉の街に発展した。
街の人達は歌を聞く事、歌う事に熱中していた。
人々はこれほど楽しく元気の湧いてくる事がこの世にあるのを今まで知らなかったのだ。
歌を街の人達に教えている音音は人々の尊敬を集め、歌の女神と呼ばれるようになっていた。
そんな音音はアイドル活動をしていた。
歌を教えている中で、特に親しくなった人達に声をかけてメンバ一を集い、アイドルユニットを結成したのだった。総勢十五名。
噴水の広場ではこの日、響き渡る歌声が熱狂を巻き起こしていた。音音を中心としたアイドルグループがコンサートを開いていたのだった。
噴水の広場には大勢の人たちでごった返していた。
みんな、口々にメンバ一の名を叫んだり、声を合わせて歌ったり、横断幕を広げたり、大きなフラッグを振ったり、思い思いのやり方でこの空間を共有していた。
「みんな楽く盛りあがってますかぁー」
音音の叫びに人々が絶叫で返す。
「ハーイ❗」
「次の歌はこれでーす!!」
♪♪♪
ラスボスのわたしがコミュ障少年を好みなんて変ですかぁ?
♪♪♪
このワンフレーズに聴衆の歓声が爆発した。
♪♪♪
Yar Yes、 Yes、 Yes、 Yes、
人の視線が怖いのね 相手の目を見て話せないのね Yes
それでいいのよ 見なくて良いのよ Yes
私だけを見つめてて Yes
人間なんてどうでもいい だって私は魔王のむすめ
人間なんてどうでもいい Yes
あなたもそうでしょ どうでもいいでしょ
私だけを見つめてて 愛、愛、I、I、
声が小さいって言われるのね 大きな声で話せないのね
それでいいのよ 小さな声で
私の耳元でささやきなさい Yes
ほかのだれともしゃべらないで
私だけにささやきかけてよ Yes
きみの声は私のもの Yes、 Yes
私だけのもの 愛、愛、I、I、
きみは人と合わなくていいよ 人と話さなくていいんだよ Yes
面倒なことはやめにしましょう わたしとだけ一緒にいましょ
わたしがきみを包んであげる Yar
ささやきあって見つめ合って 二人だけで 安らかに Yes
もしあなたが勇者なら 私が魔界を滅ぼすよ
わたしの魔界 あなたと一緒に Yar
だって私はラスボスだから Ooo
父様追放 魔物を殲滅 Yes
魔界を滅ぼし二人の世界 そうしようよ
愛、愛、I、I、You、You、You、You、
魔界を滅ぼし二人の世界
愛、愛、I、I、You、You、You、You、
ラスボスのわたしがコミュ障少年を好みなんて変ですかぁ?
愛♡Uー
♪♪♪
噴水の広場を見下ろす高い建物の屋根に大きなインコとオウムがとまっていた。
「アー、アイ、コジラシテルネ」
「コジラシテル、コジラシテル」
コンサートの最中、雲行きが怪しくなってきた。
西北から黒い雲が押し寄せてきていた。
風も少し吹き始めたようだった。
悪徳領主のポーカーが率いる軍団が歌と泉の街にやってきたのはそんな時だった。
ポーカーは口ひげをしごきながら人々の様子を後ろから見ていた。
この民衆は兵士達が来たとこにも気付かず狂乱してる。魔女の信徒になり果てたのね。
人心を乱す悪魔め今度は軍隊が相手よ。
空に一万。陸に二万。合わせて三万の兵よ。
覚悟しなさい。
領主は口元に残忍な笑みを浮かべた。
一番後ろにいた一人が領主と軍団に気が付いて、慌てた様子で周りの人の肩をたたき声をかけた。
人々は次々と振り向いて、驚いた様子で軍団を見つめ顔を見合わせた。
今まで熱狂に包まれていた広場の雰囲気が変わってきた。
歓声が次第に弱まって行く。
お天気のせいかしら? 音音は歌いながらそう思っていた。
音音を魔女と呼び捕獲しにきた悪徳領主ポーカー。街の人たちは人垣を作って音音を守ろうとしていた。
「ここは王の直轄領だぞ。自治も認められているんだ。なぜ領主ポーカーがここに」
「その王のご命令なのよ。さあ、あの女を差し出しなさい」
「音音さんは歌の女神様だ。渡すものか!!」
人々は口々に、そうだ、そうだ、と叫びながら拳を振り上げていた。
「フンッ。平和的に話をつけようかと思てたけども。あなたたちおろかよね。まあ、こうなる事は分かってたわ」
そういうとポーカーは踵を返し、後ろに控える兵団に向きなおった。
「やっておしまい!!」
号令一閃。兵団は剣を振りかざし、雄叫びを上げると街の人達に襲いかかった。
喜びにあふれていた広場は惨劇の広場と化した。
人垣から悲鳴や叫び声が沸き起こった。
何が起きたか分からず立ちすくす音音たちを目指してクエリ少年がかけてきた。
「領主が。領主が音音さんを捕まえに来た!! 逃げてっ!!」
人だかりを打ち破るかのように兵士達が剣を振り下ろしながら広場に乱入してくる。
無抵抗な人まで剣の餌食になっていた。
クエリ少年の姿が兵士の集団に飲み込まれた。
「キャー、やめて!!」
とっさに兵士達に駆け寄ろうとした音音の腕を誰かがつかむ。
アイドルグループのメンバーだ。
「行っちゃだめ。逃げるのよ」
音音は腕を強く引かれ広場を後にする。
「あそこに居たぞ」
兵士の声が追ってくる。
なんで。なんで。こんなのいや。
音音の心の声に呼応するかのように、頭の中に誰かの声が聞こえてきた。
「嫌だろう。拒絶せよ。この世界を拒絶せよ」
なんなのこの声は。まるで、わたしの中に別人が。
グループの一人が石畳の窪みに足を取られて転んだ。急いで駆け寄った二人のメンバー。
追いついた兵士数名の剣が三人に振り下ろされる。
「いやぁー」
音音が顔をかきむしらんばかりに絶叫する。
メンバーはそんな音音の背中を抱き抱えるようにして走る。
こんなのひどすきるよ。みんな死んじゃう。
「この世界を拒絶せよ。世界を滅せよ」
ああ、また。また聞こえて来る。
「ホッホッホ。空挺部隊の到着ね。さあ、あなた達の力を見せておやり」
空は兵士が操るワイバーンで覆われた。
ワイバーンは口から次々と火球を街めがけて打ち出した。
ポーカーの期待した凄惨な光景が街に広がった。
音音の視線の先で、大きな石造りの建物が火球を何発も受けていた。
「あっ、歌の大聖堂が。中の人たちが」
この建物は歌の大聖堂。
今日もたくさんの人たちが建物の中で歌っていた。
みんな音音から歌を教わった人たち。
音音の歌仲間だった。
次々と火球を受けた歌の大聖堂が突然揺らいだ。
次の瞬間、あらゆる壁が崩れだし、歌の大聖堂は大きな瓦礫の山と化した。
音音の良く知る人たちが瓦礫の下敷きになって行く。
「あぁ……」
みんな。みんな死んじゃった。
「拒絶せよ。世界を壊せ。我々と共に」
「……」
音音を含て十五人いたメンバーは気づくと三人になっていた。
音音の背中に腕をかけて走っているのがウタ。その後ろを走るのがマリ。
街を襲っている兵団には魔術師も含まれていた。
空から魔法の稲妻が次々と音音の近くに落ちてくる。
ドンと言う一際大きな音がお腹に響いてビリッと体に電流が走る。
今のは危なかった。
振り返ると後ろを走っていたマリが石畳にうつぶせに倒れていた。
まるで水に浸したタオルのようにペタリと地面にうつ伏してピクリとも動かない。
マリちゃん撃たれたんだ。魔法の雷に。
マリちゃんもの死んじゃった。
ウタが突然音音の背中を強く押した。
「逃げて」
ウタはそういい残して追いかけてくる兵士達に向かって走って行くと両手を大きく広げてて行く手を遮ろうとした。
「やめて!!」
ウタは大声叫んだ。
兵士の剣が振り下ろされ、ウタが地面に倒れた。
「ウタちゃん」
音音はウタに駆け寄る。
ウタは地面にうつ伏しながらも顔を上げ腕を音音に伸ばした。
音音の脚に手を添えて押そうとしてくる。
「音音ちゃん。なんで戻って来るの。逃げて」
そういい残すとカクンとウタの力が抜けてパタリと腕が落ちた。
ウタは地面に伏せて動かなくなった。
兵士達が音音を取り囲む。
「みんな死んじゃう」
音音はウタに多い被さるようにしてつぶやいた。
「さあ。拒絶せよ。我々と共に。世界を破壊せよ」
「みんな」
「拒絶せよ」
「死んじゃった」
「世界を破壊せよ」
「みんな」
「世界を拒絶せよ」
「死んじゃった」
「拒絶せよ」
「みんな。みんな」「破壊せよ」
「死んじゃった」「拒絶せよ」
「みんな。みんな」
「破壊せよ」「みんな」「拒絶せよ」
「みんな」「みんな」「みんな死んじゃえ」
「死んじゃえ。死んじゃえ」
「みんな死んじゃえ」
♪♪♪
風は悲しみ 悲痛な風よ 無慈悲に吹き荒れ肉を裂いて
吹き出す血潮は霧となって舞い上がれ
空高く 夕焼けの如く
♪♪♪
突然吹いた鋭い風が兵士たちを切り裂いた。
血を吹き上げ、兵士達は言葉を発する間もなくバタバタと倒れて行く。
吹き出した血潮は風に巻き上げられ、西北から押し寄せていた黒い雲に赤みを加た。
音音は歌いながら来た道を戻るように、広場に向かって歩き始めた。
「魔女がこちらに向かって来ます。我々を斬りつけながら」
ポーカーの元に兵士がかけてきて報告した。
赤みを増す空に異変を察知していたポーカーはすぐに重装兵団に号令をかけた。
胴体から顔までスッポリと鉄の鎧を来てれば平気でしょ。
ポーカーは思った。
音音めがけてフル装備の甲冑重装兵団がやってきた。
♪♪♪
風は止むことを知らず 手首 肘 脇
兜の目 鎧の継ぎ目 風は通る 吹き抜ける
♪♪♪
甲冑のあらゆる隙間から血が吹き出して兵団が次々と崩れ落ちるように倒れて行く。
上空にはワイバーンに乗った空挺団が現れて、音音に向けて次々と火球を打ち出す。
前方には弓兵団が現れて音音に向けて一斉に弓を引く。
♪♪♪
わたしはラスボス 世界を壊していいですか
わたしの視線が怖いのね 目を見れないのね
それでいいのよ 見なくて良いのよ
世界の破滅だけを見つめてて
人間なんてどうでもいい だって私はラスボスだもの
人間なんてどうでもいい 死、死、デス
あなたもそうよ どうでもいいでしょ
私だけを見つめてて 死に包まれて
あなたの死は私だけのもの
きみは人と合うことは無い
人と話す事もない
面倒なことはやめにしましょう
死だけを受け入れましょう
わたしがきみを包んであげる 死
ささやきあって見つめ合って 安らかに
わたしが世界を滅ぼしてあげる
だって私はラスボスだから Ooo
世界を滅ぼし虚無の世界 そうしようよ
わたしはラスボス 世界を壊していいですか
♪♪♪
音音は無数の火球や矢を全身に浴びながら、何事も無く歌いながら歩いて行く。
火球も弓も音音には全く通じなかった。
「魔女の詠唱を止めろ!! 無音の術を使え!!」
魔術師達が進み出て音を止める魔法を発動させる。世界から音が消える。
♪♪♪
火球よ帰れ 矢も帰れ 打ち手の元に より強く
♪♪♪
放たれた火球や弓矢が跳ね返ったように兵団に打ち返される。
空からは驚いたワイバーンに振り落とされる兵士達。
弓兵達は自身の矢を受けてバタバタと倒れて行く。
「何故まだ声が聞こえるんだ」
「頭の中で鳴ってるぞ」
「だから広場で奴らの声が大きく響いていたのか!!」
音音の歌は心に響く。だからマイクやスピーカーの無い世界でもコンサートを開催出来ていたのだった。
♪♪♪
空の獣同士討ち 喧嘩を止めて
翼をたたんで 地面でお休み
♪♪♪
操られたかのようにワイバーン達がお互いを攻撃し始めた。
背中に乗る兵士達はなすすべなく、振り落とされる。
すると突然ワイバーンは空中で眠ったかのように翼をたたんで地面に落下する。
まるで紙屑が振っているようだわ。噴水の広場で少し先の空を見たポーカーは思った。
歌いながら歩く音音の目に生気は無い。
まっすぐ前を見ているようでいて何も見ていなかった。
ただ口元に不気味な笑みをたたえながら無慈悲な歌を口ずさんでいた。
「全力で魔女を取り押さえるぞ。突撃!!」
重装歩兵団が音音めがけて一斉に走り込んでくる。
♪♪♪
鉄の鎧は灼熱のストーブ 赤く熱く輝いて
肉を焦がすよ 髪を焼くよ
肉がはぜるよ 目玉がはぜるよ
♪♪♪
鎧と兜が灼熱の鉄塊と化し赤銅色の光を発した。
兵士たちはあまりの熱さに兜や鎧を抜き捨てようとするが間に合わない。
阿鼻叫喚の声のみを発しながら、鉄くずの如く積み重なリ、すぐに動かなくなる。
肉や髪の焦げる匂いが辺りに立ち込めた。
♪♪♪
わたしはラスボス 世界を壊していいですか
わたしはラスボス 世界を壊していいですか
♪♪♪
そう歌いながら音音は噴水の広場に戻って来た。
「なんなのこの魔女。悪魔よ。最上級の悪魔よ。世界を壊して良いわけ無いじゃ無いの」
ポーカーは恐れおののいて叫んだ。
血潮を吸い上げた雲はどんどん厚くなっていた。
空からパラパラと赤い雨が降り出した。
それと共にゴロゴロと雷の音が近付いてくる。
突然稲妻が雲を走り、引き寄せられるかのように、広場の噴水に落ちた。
ドカンと空気が弾けて、噴水が天を突き抜けた。天空に衝撃波が走る。
地面にコイルの様な物が転がった。
残っていたワイバーン達が空中で硬直しバラバラと落下する。
「なんなのこれは」
凄まじい空気の衝撃を受けて、ポーカーも兵士達も訳が分からず尻餅をついていた。
いよいよ雨足が強まり、ザアザアと土砂降りの血の雨が地面を叩きつけた。
♪♪♪
わたしはラスボス 世界を壊していいですか
わたしはラスボス 世界を壊していいですか
♪♪♪
血の雨を浴びながら真っ赤に染まった音音は嬉しそうに歌っていた。
あまりの恐ろしい姿にその場にいる全ての人に戦慄が走っていた。
すると突然、二度目の衝撃が広場を揺るがした。
ズドンと体を跳ね上げる程の衝撃と共に噴水の跡地に大量の土砂が吹き上がった。
全ての人間が街から逃げ出した。
「退却よ」
ポーカーもそう叫ぶと一目散に駆け出した。
「退却!!」
「退却!!」
兵士達も口々に号令をかけ逃げ出した。
♪♪♪
わたしはラスボス 世界を壊していいですか
わたしはラスボス 世界を壊していいですか
♪♪♪
血塗れの音音は歌い続けた。
「アー、オトネガ、ラスボスニナッチャッタ。シラセナイト」
「ラスボスニナッチャッタ。ラスボスニナッチャッタ」
オウムと大きなインコが東の空に飛び去って行った。
音音:「いゃぁぁぁぁ。わたし。わたしなんてことしたの。これじゃわたし幸せになれない。誰にも愛されない。え~ん」
インフィニティ:ナデナデ
吉田先生:「大丈夫ですよ。誰も死んでませんよ」
インフィニティ:「頑張って手加減したものね」
吉田先生:「クルウルに意識を乗っ取られても手加減してましたよ」
音音:「手加減??」
坂田:「僕と同じだよ。必死に抵抗して、奴の思うようにはさせなかったよ」
音音:「でも、わたし血塗れに」
吉田先生:「出血量は兵士一人、百㏄未満です。献血よりも少ない出血量ですよ。屈強な兵士ですので問題有りませんよ」
音音:「でも血の雨が」
吉田先生:「三万人分ですから」
音音:「!? 兵士が焼けて」
吉田先生:「熱湯風呂と同じ温度です」
音音:「熱湯風呂って……。でも、真っ赤になってい体の焼ける臭いが」
吉田先生:「エフェクトです。兵士達にとっては、熱湯風呂の熱さも伴ってショックでした」
音音:「空から人がバラバラ落ちて」
吉田先生:「空挺部隊の兵士たちは落下しても良いように、羽着陸の護符を持ってます。そうでなければ安心してワイバーンに乗れません」
音音:「そうだったの。本当に誰も死んでないの」
吉田先生:「はい。そうですよ。兵士たちは皆無事です。危なかったのは噴水レールガンでしたが誰にも当たらなくて良かったです」
音音:「噴水レールガンって……。街の皆は!! ああ、みんなが……。え~ん」
吉田先生:「街の誰も死んでませんよ」
音音:「本当なの!!」
吉田先生:「はい。手加減してたので」
音音:「手加減って、どうやって? なんとかなるものなの?」
吉田先生:「はい。なんとかなるものです」
春海:「詳しい話はまた今度」
吉田先生:「次回はダンジョン攻略の話しです」
音音:「春海先輩。街の人たちが何故無事か教えてくださーい」
春海:「次回は僕たちの話しだ」ワクワク
音音:「気になる。教えて。教えてくださーい。え~ん」




