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僕は自分の世界で無双する  作者: ウエンズディー・S・水田
音楽無き世界で歌う女神

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僕はみんなの才能に感心する

救出後の先輩と後輩の様子です。

 僕と美崎とインフィニティ。それと坂田君の四人は、待機室にかつての解析データーから復活させた魔法の水晶玉、悪徳領主曰わくのぞ魔推奨ますいしょうを持ち込んで、医務室をこっそりとのぞき込んでいた。


 医務室には古典的なナース姿のグラビスとレビスが先輩のベッド脇に立っている。ナースキャップからは、あざとく耳が飛び出していた。

 二人は協力して、黒出流先輩の食事介助をしていたのだった。


 待機室の僕達四人と医務室のグラビスとレビス、合わせて六人は、美崎の力で声を使わず意思疎通が出来ている。

 声が届く範囲ならば声を出さずとも言葉が交わせる神技、精神感応だ。

 そして、黒出流先輩の精神は一方通行で僕達に伝わるようにしてある。

 僕達六人の声は先輩に伝わらないが、先輩の声は僕達に伝わる神技だ。

 美崎の調整力は素晴らしい。


「はい、ひかる君あーんして」

「アーン」

 グラビスの手からスプーンに乗せられたペースト状の病院食が黒出流先輩の口に運ばれる。

 それを先輩は穏やかな表情で受け入れた。


 ……ほんとにこれは良い夢だな……。

 先輩の心の声が聞こえてくる。

 口をもぐもぐさせながらデレた様子の先輩だった。

「はい。これは良い夢ですよ。早く良くなって下さいね」

 先輩の心の声に呼応した会話を心がけるグラビス。

 そんな二人の後ろで、レビスがクリップボードに挟んだ記録用紙にペンを走らせている。


「先輩の咀嚼そしゃく状況だけど、そろそろ固形物でも行けるんじゃないかな」

 僕は皆に思念を送る。


「ボクの見立てだと、固形物はもうしばらく控えた方が良いと思うよ」

 レビスは記録用紙をめくりめくりしながら、僕達に思念を返してくる。


 あれは3ヶ月程前の事だった。

 僕と美崎の目の前には、ナース姿のグラビスとレビスが立っていた。

「ハル様。何だよ、おれ達のアーマー。防御力ゼロだぜ」

 ナース服をアーマーと思ったらグラビスは不満いっぱいだった。

「なら、こっちの方が戦えそうかも」

 僕はオプション画面に切り替えて、二人の服をメイド服に変えてみる。

「ちょっと、ハル。それは違うでしょ。先輩のシチュエーションに合わないよ」

 美崎が呆れて言う。

 確かにと、僕は二人をナース姿に戻した。


 先輩が目覚めたり日、僕は考えた。

 先輩が抱いた僕達への違和感。時計の出現。グラビスとレビスの登場。

 現実世界の再現は難しい。

 どうすれば先輩をショックから立ち直らせる事が出来るだろうかと。

 そこで先輩に今を夢と思わせる案が浮かんだ。

 現実を再現出来ないならば、良い夢の中に居させてあげよう。

 やがて時が来れば、現実を受け入れられるまでに回復するのではないだろうか。


 この試みはグラビスとレビスの、献身的な努力によって希望が見えてきた。

 二人は戦士の振る舞いを改め、看護士役に徹したのだった。そしてそれは見事なものだった。


 グラビスは言う。

「さかた殿が救出されてから、おれたちすっかり暇だからな。人助けなんて挑戦しがいのあるミッションだぜ」

 彼女が言うように、坂田君を救ったことで、モンスターの出現率が正常に戻った。

 そもそもこの地域は弱いモンスターしか出ないのだ。

 もちろん、おかしなモンスターも。


 先輩はと言うと、初めのうちはグラビスとレビスを見て怯えていたが、美崎がそんな先輩にそっと鎮静魔法をかけ、ボーッとしている先輩の耳元でグラビスとレビスが、

「これは夢ですよ」

と優しく語りかけ続けた。

 これを毎回繰り返してしばらくすると、先輩は今を夢だと信じるようになったのだった。


「ひかる殿、寝たぜ」

「寝たよ」

 グラビスとレビスがそれぞれ思念を送りつつ待機室にやってきた。


「うん。だいぶ良くなって来たよ」

 美崎はレビスから受け取った記録に目を走らせる。

 少しだけ明るい表情をしていた。

「くろびかり先輩が一日に失うヒットポイントは約三十。今三百グラムの食事で回復したヒットポイントは三十五。

 失うヒットポイントが減ってきてて、回復力は上がってきてる。

 もう半年もしたら、みんなと同じように食事をしなくても大丈夫な体に戻れそう」

 周囲に安堵の空気が広がった。

「これも、グラビスとレビスのおかげね」

 そう言って美崎は二人の手を取った。

「ミサ様。おれたちでしっかりと、ひかり殿を回復してやるからな。もう心配するなよ。ハッハッハ」

「そうだよ。ボク達にまかせて」

 グラビスもレビスも嬉しそうだ。


「でも僕はくろびかり先輩をこんなにしたクルウルウを許しません。ご飯を食べないと死んじゃう体にさせられたなんて」

 坂田君は大きな憤りを感じていた。

 意識を深い所まで侵蝕されてしまった黒出流先輩に比べると、クルウルウと意識が分裂気味だった坂田君の後遺症はかなり軽かった。

 しかし、影響を受けなかったとは言い切れない。

 僕達の知っている坂田君に比べると、少し熱くなりやすいようだ。

 ともかくも、坂田君の立ち直りは至って順調で、今では全ての事情を理解している。


 僕達と同じ程度に。


「そのクルウルウとかだけど、このあと主要メンバーにたいせつなお話があるよ」

 インフィニティが言う。

「おれやレビスも大聖堂に行くんだよな。その説明会とやらを聞きに」

 今回大聖堂では、ルーメン神聖軍などの主要なキャラを集めて、この世界について分かった事を発表する集会が開かれる事になっていた。


「それはそうと、ひかる殿のみまもりはどうすんだよ」

「ひかる君、一人にしておくの?」

 グラビスとレビスが不安を口にする。

「あっ、そうか!!」

 僕はうかつにも、寝ている先輩を置き去りにする所だった。

「見守り、どうしよう……」


「それならば!! でよ、お知らせモンスター」

 坂田君の呼びかけとともに、ベッド脇にオウム型のモンスターが登場した。

「名前は、おしゃべりパロットのパロペディアにしよう。

 僕のパロペディアが先輩に何かあれば知らせてくれるよ」

 坂田君のモンスター作成能力はゲームチェンジャー級。召喚師どころでは無い。まさに世界のことわりを超えた力を持つ逸脱者だった。


「坂田君ありがとう。助かるよ。それじゃみんな。大聖堂に行こう」

 坂田君も含めグラビスもレビスもNPCなので、ファストトラベル出来ない。

 僕達はぞろぞろと、みんなで歩いて大聖堂に向かった。

黒宮:「あら、光。意外ね。あなたが獣人を見て怖がるだなんて。てっきり、デヘデヘと無様に涎を垂らすかと思ったわ」

黒出流:「俺はそんなだらしないことはしない!!」

黒宮:「フフッ。妄想上のキャラクターにうつつをぬかしてたあなただけど、現実に直面したら臆病者の本性が現れた。そんな所ね」 

美崎:「先輩って以前よりも更に臆病になったよね」

春海:「僕も思います。先輩って自信家に見えて実は臆病だと前々から思ってましたけど、更に臆病度がアップしましたよね」

黒出流:「お、俺は臆病者じゃ無い!! 違うんだよ。そうだな、何と言うか、あまりにも獣人がリアル過ぎるんだ。近くで見ると毛穴まで見えそうで……。怖い……」

グラビス&レビス:ムッ!!

グラビス:「毛が密集してるから見えないぜ」

レビス:「かき分けたって見えるもんか」

黒出流:「それと、リアルに直立歩行してるし、……。怖い……」

グラビス&レビス:ムッ!

グラビス:「どう歩けって言うんだ!!」

レビス:「ボク達に四つん這いで歩けって言うのか」

黒出流:「しかも、本当に、リアルにしゃべってる……。こわっ」

グラビス&レビス:ムッ!

グラビス:「おれたちをなんだと思ってるんた!!」

レビス:「ボク達獣人だよ。普通にしゃべるよ。ニャーとでもなけって言うのか」

黒出流:「いや、せめてだな。グラビスは言葉の最後に、~だワン♡。レビスは言葉の最後に、~だニャン♡。と言ってほしいかな」

グラビス:ウゥゥゥ~ (怒)

レビス:フゥゥゥ~ (怒)

黒出流:「そうしてくれたら怖がらないから。宜しく頼むよ。ハッハッハッハ」

グラビス:カブッ!!

レビス:ガリッ!!

黒出流:「ギャー。怖い。痛い。怖い。怖い。ギャー」

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