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僕は自分の世界で無双する  作者: ウエンズディー・S・水田
音楽無き世界で歌う女神

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僕は後輩を救出した

坂田 龍王救出の本番です。

 ファストトラベルで一気に大聖堂へ。僕達が大聖堂に入るとその中心、神事が執り行われる大きな空間の真ん中に、朱色に染められた円形の舞台ステージが設えてあった。


 舞台を囲んで大勢の人だかり。

「パパ、ママ。こっち、こっち」

 僕たちはいきなり現れたインフィニティに手を引かれて舞台の前へ。

「来ました。来ました」

「二人とも待ってたぜ」

 そこにはチャットとビットが立っていた。


「みんなで後輩さんを元通りにする準備をしたんだよ」

 インフィニティが嬉しそうに声を弾ませた。

「はい、そうなんですよ。最後の仕上げは春海君と美崎ちゃんにやってもらいますね」

 チャットも嬉しそうだ。

「発動するムーブはおいらたちの合作だ。すげーぜ」

 ビットが興奮気味に言う。

 僕たちにムーブが入るのか。

 すげーぜって、なんだか嫌な予感。荒っぽそうなビットが言うとなおさら心配だ。


「春海君。それではまず、円形舞台の上に三つ首巨大大蛇の体から出てきた全ての魔石を置いて下さい」

 僕はオプション画面を開いてアイテムから三つ首巨大大蛇の魔石を全選択して舞台の上に移動する。

「これが坂田君の身体全てです。三つ首巨大大蛇に噛み砕かれて、バラバラに変形してしまいました」

 この大量の魔石がバラバラになった坂田君の体!?

「次に、魔石の上に坂田君の手帳を置いて下さい」

 僕は舞台上の魔石の山の上に手帳を配置した。

「これが坂田君の魂です。自分の存在を知らせたい気持ちと助けを求める心の叫びが、形となって、三つ首巨大大蛇の口からこぼれ落ちたものです」


 僕は詳しいことは分からなかったが、何となく理解出来てきた。

 つまり僕が洞窟から持ち帰った手帳と三つ首巨大大蛇の体から出てきた大量の魔石は坂田君だったんだ。

 僕は変形した坂田君をそれとは知らずに保管していた事になる。

 そして今、僕達は坂田君を復活させるんだ。


 ムーブが心配だけど……。


「パパ、ママ。オプションモードを解除すると復活開始だよ」

 インフィニティが張り切って言うが、ほんとに大丈夫だろうかって、思った間もなく美崎がオプションモード解除!!


 きゃっ♪ ウァッ!!


 僕達は空中高く飛ぶ。って言うか見えないワイヤーの様な物で釣り上げられる。


 キャハハハ♪♪♪


 美崎の楽しそうな笑い声が直ぐ下から聞こえてくる。

 美崎はこう言うのにめちゃくちゃ強い。

 僕と正反対に!!


 僕達は大きな円を描きながら上になったり下になったり、空中を飛び回る。

 二人で空中ダンスを披露してるかのようだ。


 美崎は嬉しそうに僕の手を取ってポーズを決めたりしているが、僕は既に気分が悪くなり始めていた。

 すると、宙を舞う僕達からキラキラと妖精の粉の様な物が舞台に振りまかられ、魔石の山がほのかな光に包まれ出した。

 もうすぐ坂田君が復活する。後少しの辛抱だ。


 そう思った僕だったがそうじゃなかった。

 唐突に二人の体が引き離される。

 飛び回るスピードも更に上がり、視界に渦巻く景色が加速する。

「おおおぉぉぉ」

 人々の驚嘆の声が大きくなる。

 何だか回転方向が傾いて行く。

 今まで、高さの上下は有ったけど、床と平行に回転してたのに。

 どんどん急角度になって行く。斜めの壁、斜めの床、斜めの天井。視界に次々と迫ってくる。

 そして回転は垂直に。真っ逆さまの大回転だ!!

 天井やら壁やら群衆やら床やら、次々と眼前を流れて行く。

 突然美崎の頭が顔をかすめる。鼻にフワリと美崎の髪が触れた。

 衝突するぞ、これ!!

 再び美崎が急接近。

 僕が縦回転。美崎が横回転。グランドクロスの大激突だ!!

 激突の瞬間、美崎は身体を翻して華麗に僕をかわした。流石は美崎。なんて感心している場合じゃない。

 ダメだろこれ!!


 突然僕と美崎のワイヤーが絡んだ様な動き。

 ガクガク不規則に揺れながら二人の回転がせばまって行く。

 どうなるんだと思っていると、二人のワイヤーが力いっぱい引き離される。

 ギュギュっと止まったかと思ったら逆回転が始まった。

 すると、僕を吊り上げるワイヤーが外れたよう。

 ガクガクな動きが体の片側に移り、かろうじて一本のワイヤーで身体を吊り上げられている感じ。

 そこからいきなり落下開始。異常を感じた人々から悲鳴が上がる。

 僕はきりもみ状態で落下。視界がごちゃごちゃに回転する。これはもう大惨事だ。


 そこへ美崎が脇をすり抜けたかと思ったら、僕の体はワイヤ一に巻き込まれたかのように天井に向かって放りあげられた。

 天井が目の前に現れていったん停止。僕を釣り上げてた見えないワイヤーがプツンと切れる。

 自由落下開始!! 魔石を積み上げた床に向かって!!

 すると突然ネットが現れ僕を力強く包み込む。ってこのネット弾力強すぎ!! 受け止めた僕を力強く宙にはじき出す。


 目の前にグーンと天井が迫って激突、かと思ったら急停止。再び自由落下した僕は床の魔石に突っ込む寸前、まるで頭のてっぺんから一本のワイヤーで吊り上げられたかのように急上昇。

 頭のてっぺんを軸に高速スピンが始まった。


 僕は両腕を胸元で交差させ小さく畳み込む。

 高速スピンが更に爆速。

 爆速スピンをしながら大きく振り回される僕。

 視野に映る景色も超高速で流れて行く。

「おぉ」「スゲー」「ヤベー」「アリエネー」

 人々の驚きの声と歓声が響き渡る。

 何だかまるで、ショーのクライマックスだ。


 いい加減にしてくれ。

 そうだ、ムーブ製作委員会を立ち上げよう。立ち上げて、ムーブ安全ガイドラインを作ろう。

 禁止ムーブは今日のこれだ。


 気が付くと、僕は美崎と手と手を取り合って、回転しながら妖精の粉を振りまきつつ、ゆっくりと下に降りて行く。

 ほのかな光に包まれていた魔石の山は、光を強め、形を変えて行く。人の形へと。

 舞台に降り立つ僕と美崎。

 二人のあいだには光る人影。

 僕達は左右から手を伸ばし光に触れると、光は坂田君へと姿を変える。

 坂田君を真ん中に僕達三人は手を繋ぎ合い、その手を高々と頭上に掲げた。

一斉に拍手と歓声が巻き起こる。

「うぉー」「ブラボー」「ブラボー」パチパチパチパチ!!


 坂田君はパニック状態。

「うぁー。痛い、痛い。死ぬ。死ぬ。誰か、誰か僕を助けて!!」


 ………………。


「……。あれっ???」

 盛大な拍手と喝采を浴びながらキョトンとする坂田君。

 三人で手を繋いでカーテンコールのようにポーズを決めている。

「美崎先輩!? 春海先輩!? なんなのいったい!?」

 

 そこへ神父さんがやってきた。

「何という神の奇跡。

 全ての希望を失い、神のみにすがる私ですが、そんな私の胸にすら熱い思いが込み上げて参りました」

 僕は胃から喉元にかけて熱い物が込み上げて来ている。さっきは危うく別のキテキラを、舞台の上に撒き散らす所だった。


 神父さんは恍惚とした表情で語り続ける。

「死への恐怖からの自らの解放。

 解放の先に有る、お仲間の復活。

 それ程までの強い想い。

 それはまさに愛の死と生の再生。

 なんと、なんと尊き事。

 嗚呼いけません。

 この私、生を拒み、生きる喜びを拒んだ我が身が、これほどに熱く心を揺さぶられている」

 僕は胃から喉元への込み上げで胸を揺さぶられていた。


 僕の胸の不快感はもう限界だ。だけど、この世界にトイレは無い。

 このままでは、僕は無様な失態をこんな場で晒してしまう。

 すると目の前に簡易トイレが現れた。インフィニティが助けてくれたんだ。

 僕はトイレに駆け込んだ。


「おお、これは」

 外から神父さんの声が聞こえてくる。

「懺悔の部屋!!」

 違うんだけど。トイレなんだけど。

「これほどの奇跡をもたらしても尚、自らを諫めておいでとは。自然の摂理に背いた事を懺悔しておいでなのですね」

 神父さんの勘違いをよそに、僕はトイレでオエオエする。

「おお、これは懺悔の声。懺悔の声なのですね」

 懺悔の声って何だよ……。オエオエ


「さあ。皆さんもハル様と声を揃えて一緒に唱えましょう」

 神父さんに促され、人々が歌い出す。


♪♪♪

 オェーオェー 讃えYoou 神の奇跡を讃え Yoou

 死者の復活これ奇跡 滅んだ生き物これ化石

 石から生者これ奇跡 懺悔の声に我感激

 オェーオェー 讃えYoou 神奇跡を讃え Yoou

                 ♪♪♪


 大聖堂に響くおかしな歌声。

 最悪だ。オエオエ


「美崎先輩。これはいったい、何なんですかぁぁぁ~」

 坂田君が発する困惑の叫びが聞こえていた。

音音:「先生、先生。わたし感動しちゃいました。すごいショーでした」

春海:オエオエ

吉田先生:「あら、春海君具合が悪そうね。風邪かしら」

春海:「だ、誰だよあんな動き考えたの」 オエオエ

美崎:「ビット君かしら?」

吉田先生:「そうです。ビット君です。ビット君は本来AIじゃなくてただのアプリなんですけど、今回はまるでAIのように頑張りましたね」

春海:「AIじゃないって……」 オエオエ

吉田先生:「物理計算が滅茶苦茶でしたから、それだけ破天荒な動きを作れました」

音音:「ほんとすごかった。先生。わたし、これからビット君の演出を追っかけます」

吉田先生:「皆さんもビット君に期待しましょうね」

生徒達:「はーい」

春海:チィィーン⤵

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