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僕は自分の世界で無双する  作者: ウエンズディー・S・水田
音楽無き世界で歌う女神

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僕は後輩を救出する

坂田 龍王救出の前段階です。

 僕と美崎は待機室のベッドに腰掛けていた。

 美崎は僕から受け取った手帳を見つめている。

「この手帳、やっぱり変だと思う。りゅうお君の名前と助けての文字しか書かれていないもの。他は真っ白。校則とか校歌とか何も書いてないし。これじゃ何だろう、まるで……」

 美崎は何か言おうとして考え込んだ。

「そうだわ。まるで、りゅうお君が助けを呼んでるみたい」

 美崎がそう言ったとき。


「坂田!! 死ぬな!!」

 黒出流先輩の叫び声が医務室に響いた。


 僕達はすかさずオプションモード。

 黒出流先輩はNPC。先輩の時間が止まる。

 僕と美崎は事前に準備しておいた、あの異世界に飛ばされた日の服を模した衣装にチェンジ。

 二人で姿を確かめ合う。

 よし、これならば先輩に違和感を与えないだろう。

 僕達は呼吸を整えて、何食わぬ顔で先輩が寝ているベッドのカーテンを引き開けた。


 ベッドで半身を起こしている先輩が、ギョッとした目で僕たちを見つめた。

 お化けでも見たような表情だ。なんだか怖い……。


 美咲は自然を装って先輩に近づいて行く。

「先輩どうしたんですか? お化けでも見たような顔して」

 そんな美崎の振る舞いに先輩の表情が少しだけ緩んだ。

「君たちしは確か……? 確か……?」

 先輩は僕達の事をはっきりと認識出来ない様子。

 そんな先輩に美崎は明るい態度で接する。

「やだな先輩、大丈夫? 私ですよ美崎です。そっちは春海。分かりますよね?」

 軽く笑顔を浮かべて、先輩を平穏な日常の中にいざなう。

「美崎……。春海……。ああ、そうだ。君たちか。ゲームクラブの後輩じゃないか」

 先輩は僕達を認識してくれた。

 僕はホッとする。


「ここは……? 確か……」

 先輩は周囲を見回す。

「医務室よ」

 美崎は穏やかに引き継ぐ。なかなか良い演技。美崎に任せて良かった。

「俺は何故ここに……。うっ!!」 

 そう言って、突然先輩が頭を抱え込む。


「俺たち、宇宙人に体を乗っ取られて……。ああ、坂田。坂田が三首大蛇に食われちまった!!」

「えっ!?」「えっ!!」

 僕と美崎は驚いて顔を見合わせる。

 場の空気に緊張が走った。


「え、えっと。先輩なに言ってるんですかぁ」

 美崎が取り繕う。

「夢ですよ先輩。夢を見たんですよ」

「あれが夢……」

 先輩は片手を頭に乗せたまま、ゆっくりと首を振る。

「ほら、緊急地震速報の後凄く揺れて、揺れが収まったら先輩が倒れていたんです」

「地震……」

 先輩は考え込むように呟いた。

「でも、安心して。先輩はショックで貧血を起こしただけって、学校医の先生が言ってたから」


「僕、学校医呼んでくるよ」

 そう言うと、一旦廊下に出てオプション画面を開き、あらかじめストックしておいた学校医の姿に早変わり。

 これで良しと。


 医務室に戻った僕は先輩に声をかける。

「おう、黒出流君。気が付いた様だね。具合は如何かな」

 声に出してみて、僕は気が付いた。学校医の先生の物まねに自信がない。

 そもそも、学校医と会話したことが無かった。

 先輩は学校医とどれ程の面識が有るのだろう? 不信感を持たれなければ良いけど。

「ああ先生。この前は急な発熱でお世話になりました。今度は俺、倒れたそうですね」

 この前って、やばい、やばいぞこれは。面識結構有りそうな。僕は焦り始めた。

「あれっ、先生、ちょっと痩せました?」

 マジでやばい。早々に退出しなくては。

「ハハハ、そうかね。まあ、気にするでない」

 僕は先輩の額に手を当てる。

「うん。熱は無いようだね。安静にしておるのだよ」

「先生。体温計で計らないのですか? 電子式の結構良いのが有りましたよね。数秒で計れるのが」

 電子式体温計。そんなものこの世界に無いぞ。

「あ、あれかのぅ。そうじゃ。地震で何処かに行ってしまったのじゃ」

「地震で何処かにって? それと先生。先生はそんなしゃべり方でしたっけ?」

 ギクッ!! やばい、相当にやばいぞ。

「う、ウォホン。探しに行ってくるかのぅ。体温計、体温計、何処に行ったんじゃー」

 僕は急いで廊下に出ると、学生時代の姿に戻って再び先輩の元へ。

「先輩ちょっと違和感を感じてるかも」

 美崎が先輩に聞こえないように、小さな声で僕に耳打ちする。


「先輩。さあ、安静に寝てましょう。学校医の先生も言ってたでしょう」

 僕は先輩を寝かし付けようとした。

「安静。安静か。まあそうだよな。俺、倒れたんだものな」

 先輩がそう言うと体を横たえた。一安心だ。

「それにしても。さっきから思ってたんだけど」

 先輩が何か言いたそうだ。

「君たち、何だろう。急に大人びていないか? なんか、大人の男女だんじょって雰囲気と言うか」

 ギクッ!! やっぱり、学生時代の僕達を完全再現出来ていないんだ。

「ハハハ。先輩。僕達をからかわないで下さいよ」

 僕は笑って繕うしかない。

「学生の僕達が大人の雰囲漂わせるだなんて。有り得ないですよ。ハハハ」

「そうだよな。所で俺はどれくらい寝てたんだ? あそこに時計が掛かってた筈なんだけど。なあ、俺の携帯知らないか」

「先輩の携帯はちゃんと保管してありますよ。今は休まないと」

 先輩の携帯は、この世界に持ち込まれていないだろう。

 僕は取り繕うのに必死だ。

「そうか。なら良いけど、時間を知りたいんだよ。なんで時計が無くなってるんだ?」

「えーと、そう、地震。地震ですよ。地震で落っこちたんですよきっと」

 上手く言い逃れられたぞ。


「いや、そんなはずは無いぞ。しっかり壁に固定してあった。学校の時計って、そう言う物だろう。地震で落ちると思えない。それにほら、壁に固定した跡が無いじゃないか」

 ギクッ。

「え、えーと。えーと」

 やばい。やばいぞ。どう言い逃れよう。

「確かあそこに、そう、こう言う感じの丸い時計が」

 先輩がそう言いながら、壁を指差して円を描くようにした時、壁がフンワリと光って時計が現れた。


 マジックアイテム『魔法の掛け時計』

 動力が無くても常に正しい時刻を指し示す


 ご丁寧にも視界に説明文まで浮かび上がる。


「へっ!?」「あっ!」「あちゃー」

 三人の声が重なる。

 先輩のアイテム作成能力がここで発動。

 先輩はベッドから飛び起きてアワアワしてる。


 その時、医務室の扉が開いてグラスとレビスが入ってきた。

「ハル様。ミサ様。後輩殿を救出する準備が整いました。すぐ礼拝堂へ……。あっ……」

 驚愕の表情でグラビスとレビスを見つめる先輩。

「しっ、失礼しました」

 慌てて医務室から出て行くグラビスとレビス。


「ミミミミ。猫みみ。犬みみ。ハハハハハハ。俺、好きすぎて、こんなのが好きすぎて……これは幻覚。幻覚だ。俺はおかしくなっちまった。ウォォォォー」

 先輩は激しく額をベッドの手すりに打ち付け始めた。

「きゃっ。大変。神力鎮静化」

 美崎が鎮静化能力を発動させると,先輩はふぅと言って寝込んだ。


 僕達は眠りについた先輩を見下ろして顔を見合わせた。

「困ったね」「困ったわ」

 先輩の能力発動と獣人の登場。先輩に相当なショックを与えてしまっただろう。

 グラビス達も、先輩を学校の出来事と思わせる今回の作戦については十分理解していたから慌てて出てった。ずっと眠り続けていた先輩が突然目を覚ましていたんだ。まさかのタイミングだった。不可抗力と言うしかない。

 僕がずくに彼女達みんなに先輩が目覚めたことを知らせるべきだったんだ。

 でも先輩の能力発動はどうすれば良かったんだろう。

 う~む。僕は考え込んだ。

「ハル。起きた事を思い悩んでも仕方ないよ。私達はやれている。次のプランに移りましょう。プランAが駄目ならプランB。それが駄目ならプランC。未来だったらいくらだって作って行けるもの」

 美崎の前向きさは相変わらず。僕の背中を押してくれる。

「そうだね。次の手を考えよう」


 そうだ、グラビス達。グラビス達に手伝ってもらうのはどうだろうか。彼女達ならばきっと先輩を……。

 って、あれっ。そう言えば、グラビス達。さっきは何しに来たんだっけ……?

「ねえハル。そう言えばさっき、グラビス達が後輩を救出するって言ってたよね」

 そうだった。確かにそんな事を言っていた。

「後輩ってりゅうお君の事じゃないかな」

「確かに。坂田君しか思いつかない」


 その時、インフィニティの声が聞こえてきた。

「パパ。ママ。大聖堂で後輩さんの復活をやるよ」

 救出とか復活とかっていったい……?

「ねえ、フイニットちゃん。後輩さんって誰?」

「坂田 龍王って人だよ」

 美崎の質問に答えるインフィニティ。

 やっぱりそうだった。僕と美崎は顔を見合わせる。

「それとパパ。洞窟でひろったアイテム、後輩さんだから、必ず持ってきてね」

 どういう事だろう?

「ねえインフィニティ。拾ったアイテムって?」

 僕が聞くと。

「大蛇のお腹から出てきた魔石と落ちていた後輩さんの手帳だよ。魔石が体で手帳が魂だよ」

 これはいったい???


「そう言う事ね。ハル、行きましょう。大聖堂に。ハルはとっくにりゅうお君を見つけてたのよ」

 僕は訳の分からぬまま美崎と大聖堂に向かう。

「とにかく、坂田君を助けられるって事だよね」

「うん。きっとそうよ」

 僕達は坂田君を助けるため、大聖堂に急いだ。

吉田先生:「皆さん。今日は食べられちゃった坂田君の現状について、スペシャル解説者をお招きしました。それではビット先生こちらへ」

生徒達:パチパチ

ビット:「やあ。俺がビットだ。よろしくな」

音音:「キャッ。可愛いい妖精さんだ」

ビット:「俺が可愛いいだって。子供扱いするな!」

 音音に静電気が走る。

 バチバチバチ

音音:「キャッ!!」

ビット:「それじゃ説明を始めるぞ。お前たちよく聞けよな」

生徒達:「はーい」

ビット:「ハルとミサの作ったこのゲームな。出てくるNPCは二つの要素から出来ているんた。一つがボディのデーター。もう一つがそれを動かすプログラム。つまりキャラクターAIだ」

生徒達:ポカーン

ビット:「お前たち少しはリアクション返せよ。説明しにくいだろう」

生徒達:「はーい」

ビット:「それでだな。坂田ってNPCは食われて変化しちまってるんだよ。ボディのはずのデーターが魔石のデーターになっちまってて、動かすプログラムは手帳データーだ。プログラムがデーターだぞ。こいつは厄介ってもんだろ」

生徒達:ポカーン

ビット:「何だよ、この張り合いのねえ生徒らは。まあともかくだな。このおいら達で坂田って奴を元のプロクラムとデータ構造に戻してやっから心配するな。そんじゃな」

吉田先生:「ビット先生ありがとう御座いました」

生徒達:パチパチ

吉田先生:「皆さん。ビット先生のお話は如何でしたか?」

生徒達:ポカーン


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