表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は自分の世界で無双する  作者: ウエンズディー・S・水田
音楽無き世界で歌う女神

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/39

僕は坂田 龍王だった

モンスターデザイン担当、坂田 龍王。舞台裏の話です。

 僕は坂田 龍王だった。

 目の前には三首の大蛇が僕を見下ろしている。

「さあ、食えよ。僕を食え」

 僕は大蛇に命令した。


 あれは何時の事だろう。

 ゲームクラブの教室だったろうか。

「皆さんすぐに机の下に避難して」

 吉田先生の鋭い声が飛んだとき、世界を揺るがせる大音響と共に僕の体がかき消された。


 ………………。


 僕は激しい憎悪に駆られていた。僕を異世界に閉じ込めた二人の地球人に。

 奴らは異世界の森に入って行く。殺せ。殺せ。この地球人共を。

 僕は異世界で与えられた力を解放した。魔物を生む力。そうだ魔物だ。魔物を解き放て。

 僕は生み出した魔物達を森に放った。放たれたのはオークの群れ。

 さあ、オークよ。二人の地球人を叩き潰せ。

 奴らの死を以てこの異世界の終焉としよう。


 オークの群れは地球人の体を叩き潰した。

 森の土は血のぬかるみで染め上げられて行く。

 殺せ。殺せ。叩き潰せ。

 もげた腕が木の枝に垂れ下がり、飛び散った臓物が血のぬかるみに散乱する。

 しかし……。

 何故殺せない? 何故異世界は終わらない? 

 奴らは再び現れる。口元に笑みを浮かべて。


 ……何故我々はこの異世界から解放されない……


 殺せ。殺せ。何故だ。何故だ。何故? 何故? 

 何故……?

 僕は何故こんなにも腹を立てている?

 これは僕じゃない。僕は誰だ?

 何かを分かりかけたとき、強烈な憎しみが僕の脳を焼き尽くす。

 僕は更に力の強いオークを放ち続けた。


 戦いは終わらない。

 我々は何故奴らを討ち滅ぼせない。

 我々は憎む。我々は憎む。我々は憎む。

 憎い。憎い。地球人に死を。


 って、なんだこれ。こんなの僕じゃ無い。

 我々って誰なんだ。

 僕の中に誰か居る。

 頭が働かない。

 意識がはっきりしない。


 二人は森を抜けて話をしている。憎むべき相手。

 いや、違う。憎んでなんかいない。見覚えが有る。誰だっけ?

 そうだ。先輩だ。

 僕の意識が再び遠退いていった。


 我々は魔物の力でこの異世界を破壊する。異世界を破壊し、我々を解放する。

 それが我々の勝利となる。我々の勝利と。

 僕は魔物を大量に生み出し、野に解き放とうとする。

 駄目だ。寸前で踏みとどまる。

 目の前に町が有る。大勢の人がいる。


 町には奴らが居る。地球人の集団に。憎き奴らが居る。

 憎き奴ら? 違う。あれは先輩だ。町の中に先輩が……。

 いったい僕はどこに居るんだろう。夢の中から町の中を見下ろしているようだ。

 再び『我々』の感情が強くなる。

 放て。放て。放て。

 先輩。誰だっけ。僕の意識が強まる。春海先輩と美崎先輩。そうだ。春海先輩と美崎先輩だ。


 放て。放て。放て。放つ。放つ。『我々』の意思が僕の頭を支配しようとする。

 だが僕は足掻く。こうなれば、まともな魔物なんか生み出すものか!

 僕は途絶える意識の中で、欠点だらけのふざけた魔物を解き放った。


 ……………。


 春海先輩がやってくる。甲冑姿の大きなお供を連れて。

 『我々』の力は強い。僕は憎悪に駆られて魔物を生み出す。

 駄目だ。保て。自分を。僕が奴らにあがなえるのは、おかしなモンスターを生み出す事くらい。

 春海先輩なら倒してくれるはず。

 僕は自分を見失う寸前、クジラのトルネードモンスターを作った。


 ……………。


 此処は異世界の洞窟か。地に足が着いている。

 ついに我々は実体化した。否。我々の一個体がだ。

 一個体が実体化した。この洞窟の中で。


 一人の女が逃げて行く。地球人の女が。

 奴も我々の一個体だ。女の中で覚醒を待っている。

 我の様に。


 ……………。


 憎き者の気配が近付いてくる。

 我をこの異世界に閉じ込めた一人。

 消滅させて我が解放の礎としよう。

 さあ、魔物共よ洞窟に満ちろ。憎き地球人を跡形もなく喰らい尽くせ。


 駄目だ。そんな事。

 僕と奴の意識が分離された感じがする。

 僕は洞窟に立っていた。

 奴は実体化したって言ったよな。

 その時、僕の顔の下半分がタコかイカの足に成っている事に気が付いた。

 これが奴の正体か。

 『実体化』したからなのか奴の事が良く分かる。

 奴は人間の無意識領域に巣くおうとする意識の集合体。その一部だ。

 さあ、魔物よ。洞窟に満ちろと盛んに唱えている。

 今、奴の存在は分離され、僕の頭の中のもう一人に成った。


 あいにくだけど、その魔物を生む力は僕の物だ。


 魔物……。そうだ。洞窟にユニークモンスターを一匹作ったんだ。

 ちょっと変なモンスターだった。

 美崎先輩にまた笑われるかな。春海先輩にボツをくらうかな。

 名前は三つ首巨大大蛇。

 そうか!! 頭がはっきりした。

 僕は坂田。坂田 龍王。僕は坂田 龍王だった。

 

 魔物。洞窟に満ちろ。満ちろ。憎き地球人を食い尽くせ。

 奴は盛んに唱えている。

 それをよそに、僕は『ピカピカ鏡モンスター』を生み出して自分の姿を映し出す。

 そこにはぞっとする姿になった僕が立っていた。

 イカとタコを合わせたような頭。目は死んだイカやタコのそれ。顔の下に蠢く沢山の触手。


 こんなのは終わりにしてやるよ。

 三つ首巨大大蛇こっちに来い。

 僕の呼びかけに呼応して、目の前に三つ首巨大大蛇が現れた。

 何も食べず、腹が減ってるだろう。

 「さあ、食えよ。僕を食え」


 我は何をしようとしているのだ。

 「さあ、食え。食えよ。僕を食え」

 やめろ、やめろ。この地球人め。

 大きな口が僕に迫ってくる。

 ヤメロ。ヤメロー。


 いざ食われるとなるとやっぱり怖い。僕は寸前になって凄まじい恐怖に襲われた。本当に喰われる!!

 ヤメロー。ヤメロー。

 奴の絶叫が頭の半分でこだまする。

 いい気味だ。けども。僕は怖い。怖い。

 心底怖い。今になって激しく後悔した。

 こんな事しなきゃ良かった。


 大蛇が僕を噛み砕く。

 痛い。痛い。痛い。

 ヤメロ。ウギャー。

 本当に痛い。

 僕は死ぬ。誰か。痛いよ。僕を助けて。

 僕はこの世界で一人ぼっち。ここにいる事を誰も知らない。

 痛いよ。痛い。痛い。

 ヤメロ、ヤメロ、ヤメロ。身体が、体が保てない。ウォォォー。

 奴の消滅を感じる。

 僕は奴から解放された。


 でも、僕は誰にも知られずひとりで死んで行く。

 そんなの嫌だ。誰か。誰か僕の事を。

 痛い。痛い。

 僕は坂田 龍王。誰か。誰か。


    助けて


 坂田!! 死ぬな!!

 黒出流 光が医務室のベッドで飛び起きた。

坂田:「あの、先生。僕、死んじゃいました」

吉田先生:「はい。登場した途端に退場でしたね」

坂田:「僕の出番はもう無いんですか?」

音音:「姿を変えて再登場が有るかも。大蛇の排泄物として」

坂田:「……」

春海:「それは設定上無いはずだよ」

美崎:「排泄行為のない世界なの。だからお腹の中で完全消滅よ」

坂田:「出番これだけ……。シクシク」

天の声:「パパとママの後輩さん。大丈夫だよ。あたしがいるから」

坂田:「いま何か聞こえたような気が……」

黒出流:「先生。最後に俺が出ました。何事ですか?」

吉田先生:「クルウルウ同士、意識が繋がってるから黒出流君に伝播したのです」

黒出流:「そんな俺が龍王を救う展開の予感」

吉田先生:「その予感は外れです。坂田君は手遅れです」

坂田:「シクシク」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ