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僕は自分の世界で無双する  作者: ウエンズディー・S・水田
行って帰りし物語りセカンドシーズン

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僕は先輩を救出した

ゲームクラブメンバーを一人回収です。

 オプション画面を閉じるとクルウルウの姿が一変した。

 先輩に吸い付いている……。


 先輩を羽交い締めにして、先輩の頭から目まで触手の生えた口で咥え込んでいた。

 目まで隠されてはいるが、鼻や口元の雰囲気から先輩に間違い無さそうだ。


 クルウルウと先輩の声が僕の頭に響いてくる。

「もう一度融合だ。お前の脳みそを吸い尽くしてやる」

 クルウルウが先輩に語りかけている。

「頭が吸われる。誰か、誰か助けて~」

 先輩が体をじたばたさせて、必死に助けを求める。


「このままじゃまた融合しちゃう。急ぎましょう」

 美崎の言葉に僕はうなずく。

「神力、反発」

 美崎が術を発動する。

 先輩とクルウルウの間に力場が発生。

 クルウルウの口からスポンと音がする。

 クルウルウと先輩が反対方向に弾き飛ばされた。分離成功だ。

「神力、引き寄せ」

 美崎が一気に先輩を引き寄せる。

「神速、掌底しょうてい

 僕はクルウルウの懐に飛び込み、掌底を叩き付けてふっ飛ばす。


 床を転がったクルウルウは、ヨロヨロと立ち上がるが、バンザイの姿勢で硬直する。

「身体が、体が保てない。ウォォォー」

 と言って、光の粒になって生滅した。

 何ともあっけない退場だ。


 美崎に引き寄せられた先輩は膝から崩れるように倒れ込む。

「先輩っ、先輩っ!」

 僕と美崎は倒れた先輩の肩に腕をかけて抱き起こしたが、完全に意識を失っていた。


 そんな様子に、インフィニティとチャットAIPとビットの三人がなにやら専門的な話をしている。

「メタAIが先輩(このひと)のキャラクターAIをスリープモードにしましたね。メタAIに手を入れましょうか」

「君たちのプログラム変更は履歴に載らないんだもの。僕としては嬉しくないんだけどな」

「メタAIをいじらなくても大丈夫だよ。条件付きスリープモードだから。時が来れば自然に解除されるよ」

 なに言ってるのか分からないけど、みんなやたらと詳しそうだ。もうこの三人に任せておけば全て解決してくれるんじゃ無かろうか。


「名前……。名前は黒出流 光」

「そうだよ。パパとママの先輩さんだよ」

「先輩さんとも言うのかこの人?」

「パパもう一人救出してくれてるよ」

「先輩は心配ないですね。問題はこちらのかたですね」

「なんだこのプログラム。改訂かいていってレベルじゃないぞ。バラバラじゃないか」

「名前……?」

「坂田 龍王だよ。後輩さん」

「こっちは後輩さんって言うのか??」

「人物データーは変形。関数はバラバラ。よくもここまで自分自身を壊せた物です。相当な覚悟だったんですね」


 えっ!? 今、坂田君の話しをした??

 その時、チンッとエレベーターの扉が開く音がしたかと思うと、グラビス達兵団長の集団がドヤドヤと入ってきた。

 床に倒れている悪徳トリオを踏みつけながら。


「ミサ様ご無事なようで。心配しておりましたぞ。おお、ハル様もお戻りで。ご無事で何より」

 そう言うと、ルーメン神聖軍総司令官、疾風のインペラはうやうやしく頭を下げた。

 続いて他の兵団長達も頭を下げる。

 グラビス達もだいぶ落ち着いた様子だ。

「あら、グラビスたち、繁殖期の症状が無くなってる。もしかして、くろびかり先輩の影響が無くなったからかな?」

 美崎は不思議がっていた。

 もしそうならば逸脱者の力、侮りがたし。それ程までに深く広範囲に影響を与えていたとは……。


 インペラはきびすを返すと、つかつかと、床に倒れている悪徳トリオに向かって歩いてゆく。

 立ち止まると懐から魔弾銃を取り出し、銃口を向けた。

「この者達はまだ息が有りますな。とどめを刺しませんと」

 魔弾銃とは、古風な形をした拳銃の様な物だが、魔力の銃弾を数十発打ち出す事が出来る。連射も可能だ。魔弾一発の威力はまさに拳銃そのもの。

 今エンペラがトリガーを引けば、悪徳トリオを確実に仕留められる。


 僕は、美崎に目配せ。美崎も頷く。

「その必要はないよ」

 僕はエンペラに言った。

「それはなんと!? 本当に宜しいのですかな?」

 エンペラは意外な様子で訪ねた。

「うん。三人は生かして領主の町に帰させてあげて」

 美崎が引き継ぐ。

「領主達にはまだ役割が残っているんだよ」

 僕の言葉にエンペラは銃を懐に収めた。

「お二方がそう仰るならば、何か深い考えが有っての事」

 エンペラは再び恭しく頭を下げた。


 その後、悪徳トリオは悪態を付きながら帰って行った。

 もう少しボコッても良かったかも。悪態を聞くに付け、僕は心底そう思った。


 それから数日が経過。


 先輩の意識はなかなか戻らない。それ程までに精神的なダメージが大きいのだろう。

 僕達は皆で話し合った。先輩が目を覚ましても、また精神的なショックを受けたらまずい。

 そこで僕と美崎は協力して、僕達の学校を建てた。

 そう、現実世界で通っていたあの僕達の学校を、ほぼ完璧に再現して建てたんだ。

 僕達は先輩をそんな学校の医務室のベッドに寝かせた。

 実際の医務室と違うのは、部屋の奥に掛かっているカーテンの向こう側に、待機用の部屋が隠れていることだ。


 僕と美崎は先輩が目を覚ますまで、ここを主な居場所とした。姿も出来るだけ学生時代に戻したつもりだ。

 先輩が目を覚ました時、何食わぬ顔で先輩に声をかけ、先輩が学校でひんけつを起こして倒れたから医務室で寝かせたと信じさせ、先輩を安心させるために。


 いま僕は待機室のベッドで美崎と一緒に横になっている。

「フィニットちゃん。成長したよね。私たちがいなくても平気なんだから」

 美崎が感慨深げに言う。

「チャットがいるから大丈夫だなんてね。見た目は八歳のままなのに」

 これまでは僕と美崎のあいだがインフィニティの寝床だった。それが今は当たり前で無くなっている。

「私たちもよ。見た目と違うのは」

 美崎がそう言ってすり寄ってくる。

「私たち、見た目は学生なのに大人になったわ」

 そう言うと美崎は僕の腕をツンツン。僕は意図を察して美崎に腕枕をする。

「今はこうして夫婦みずいらず。ねえハル。初めて二人で寝たときの事、覚えてる?」

 あの時は焦った。

「覚えてるよ。二人でベッドの端と端で背中を向けて寝たよね」

 そして、インフィニティが二人の間に生まれたんだった。

「今はこうしている事が当たり前」

 美崎は更に身体をグイグイして来る。

「ほんとだね。これがとても自然な事に感じるよ。気持ちが落ち着く」

 僕は美崎を腕に目を閉じた。


 ……あれ、!? 何か忘れているような……。

 まあいいか。明日考えよう……。つって、あっ!! ミニリスだ!!

 洞窟ちゅうとんちで待機させたままだった!!


 僕達はすぐにミニリスの状況を確認。

 洞窟の中では掘削音が鳴り響いていた。


 ハル様が戻られない。この洞窟の中で迷子になられてるんだ。きっとそうに違いない。

「ハル様。ハル様~。聞こえますかハル様~~。このミニリスがお助け致します。ハル様~~~」

 腕をドリルの様に回転させ、ひたすら洞窟を掘り進むミニリス。

 落盤を物ともせず洞窟と言うか、駐屯地を拡張させ続けた。

 そして迷路だった洞窟が、広くて真っ直ぐなトンネルとして開通した。


 僕は全部の駐屯地を解除。とっくにパーティから離脱状態のミニリスは一瞬で街に帰還。

「ハル様どこですかぁ~。ハル様ぁ~。……!? あれ、僕また街に帰ってきてる!!」

 僕と美崎はミニリスをお出迎え。

「ミニリス。西方開拓は一旦終了だよ」

「!? そうなんですか……?」

 僕の言葉にポカンとするミニリス。

 僕はミニリスと並んで美崎向き直った。

「ただいまミサ」

「もうハルったら。今更ね。お帰りなさい」

 僕達は改めて挨拶を交わした。

音音:「先生、先生。光先輩は食事をとらずに寝たきりで大丈夫なんですか?」

吉田先生:「大丈夫ですよ」

黒出流:「点滴を受けているんですよね?」

吉田先生:「違います」

春海:「口からホースを胃まで突っ込んで、エナジードリンクを直接胃に流し込んでるんですよね?」

黒出流:「ぐはあ。ぜーぜー」

吉田先生:「違います」

美崎:「へそから胃まで穴を開けてホースを突っ込んで、エナジードリンクを直接胃に流し込んでるんですよね?」

黒出流:「ウッ、うがーぁぁぁ」

吉田先生:「違います。春海君も美崎さんも知ってますよね。あなた達の世界では食事は必要無かったですよね」

春海&美崎:「言われてみればそうでした(笑)」

吉田先生:「皆さんも、設定をしっかり復習してくださいね」

生徒達:「はーい」

黒宮:「あら先生、光がショックを受けてるわ」

黒出流:チィーン

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