悪徳領主現る
ファンタジーに登場する悪い領主は、たしかこんなのいますよね。
原野をガタゴトと一台の馬車が走っている。乗るのは悪徳領主とその一味。
悪徳領主は一番後ろの席で偉そうにふんぞり返っている。
肉付きの良くない、ひょろりとした体つき。細長い顔につり上がった目。口には趣味の悪いナマズ髭。あごにはヒョロリと細長い髭。なんだか品性が感じられない表情をしてる。
頭には、王冠のつもりかな? カボチャのような帽子を乗せている。 首の周りには分厚くてひらひらした襟のような物がぐるりと巻かれている。いつの時代の服装なんだろう。
服もまた細長いカボチャのようなデザインで、真ん中に白いヒラヒラが縦に縫い付けてあって、そこに並んだ大きな金色の丸ボタンで服を止めている。ズボンもカボチャのよう。そこからタイツ姿の脚がひょろりと伸びて、足はつま先がそり上がった細長い靴に収まっていた。
貴族の格好? おしゃれなつもり? 言ってしまえば変な格好。
それでいて偉そうに、腰には細いサーベルを差していた。
そんな悪徳領主は二人の従者を従えていた。
一人目は御者として馬車を走らせているがたいの良い男。従者A。
二人目は御者の横で補助席に座っているやせた男。従者В。
悪徳領主をセンターにした悪徳トリオって言おうかな。
悪徳トリオの進む先。そこにずっと遠くから見えていた白い壁が、近づくにつれてだんだんとその大きさを増していた。
「もうすぐ町ですぜ。だんな」
がたいの良い従者Aが言う。
キィ~。悪徳領主は金切り声を上げて足をバタバタさせた。
「旦那では無~い。領主様とお呼び!」
キンキンとした声が馬車の中に響く。
「失礼しやした。領主様」
従者Aは頭をかきながら言う。なんだかこの人、頭悪そう。
「次に私のことを下品によんだら首をはねるわよ。何しろ私、男には厳しいから。ホホッ、ホホッ、ホホホホホ」
「ご、ご勘弁を。領主様」
従者AもBも震え上がっていた。哀れな雑魚キャラと言ったところ。
「フーン。それにしても大きな城壁ねぇ。あのお方が見せてくれた通りだわ。そう、あのお方の持ち物。何でも覗ける魔法の水晶玉。覗き魔推奨でしたかしら。ほんとに何でも覗けてすごかったわ。デヘッ、デヘッ」
目がへの字になってる。この悪徳領主、顔も性格も最低。魔法のアイテムも。
「それにしても、領主である私の許可もなく町をこんなに大きくするなんて。
まあいいわ。町の住人はかなりの数ね。当然女もいっぱい。初夜権を使いまくってやるわ。デヘッ、デヘッ、デヘヘヘヘヘヘヘ」
まあ、何てそっち寄りの人なのでしょうか。こんなんじゃ領主の住んでいる町の女性たちがかわいそう。
町に到着する悪徳トリオ。馬車から降りて城壁の前に立っている。
「見慣れない材質の城壁ね」
悪徳領主はあごひげを引き延ばすような仕草をしながら珍しそうに城壁を眺めてる。
「入口はあちらです。領主様」
従者Bが遠くに見える門を指差す。
「お黙り! 下らないこと言うんじゃ無いの。首をはねるわよ。私をあそこまで歩かせるつもり!」
キンキン声を響かせた悪徳領主は従者Aに向かい、城壁を指差した。
「やっておしまい!」
「イエッサ」
従者Aは腕に金属製のゴツゴツした籠手をはめた。
あらゆる物を粉砕してしまうマジックアイテム。矛盾の籠手だった。
「オリャー」
ドオオーン
城壁に大穴が開く。
「ホッホッホッ」
悪徳トリオはゆうゆうと町に侵入した。
敵の領主にまだ名前を付けていなかった春海たちはその子分たちの名前もまだ付けていませんでした。
当然と言えば当然ですね。
そして、名前は仮の名前のまま。従者Aと従者Bです。
そのまんまの名前ででています。




