僕は巨大迷路をさまよった
冒険には洞窟が付き物なお話です。
僕達は渓谷地帯の洞窟を進んでいた。渓谷を抜ける道が崖崩れで閉ざされていたので、渓谷の外につながる洞窟を行くことにしたのだった。
ミニリスの鉄の足音が洞窟深くこだましている。
「ハル様。洞窟が狭くなって来ましたね。ここも行き止まりでしょうか?」
「まだそうとは決まっていないさ。風が抜けている」
僕達はもう10時間は洞窟の中をさまよっていた。こんな事ならば巨大迷路なんかにしなきゃよかった。この洞窟はゲームクラブのみんなで作ったんだった。そう言えばふざけて適当に作ってたような気が……。
やがてミニリスの頭がつかえるほど洞窟の天井が低くなってきた。
「鎧を来て進むのはここまでだね」
僕はミニリスに言った。
「しかたありません」
ミニリスは素直に応じる。
僕はオプション画面を開いてミニリスのキャラクターを選び、装備から鎧を外した。そして、ミスリル製のショートソード二振りをミニリスに装備した。
オプション画面を閉じるとミニリスの巨大な鎧姿が消えて、剣を装備した二刀流の少年ミニリスが現れた。
「何度見ても素晴らしい剣ですね。僕はこの剣に恥じぬようハル様をお守りいたします」
ミニリスは剣を抜いて嬉しそうにそう誓った。
吊り橋のせいで鎧を脱ぐ事が多くなったミニリスは、鎧を着ずとも戦えるように訓練を始めたのだった。
実は俊敏で空間認識力が非常に高く、二刀流適性をそなえているミニリスは鎧を着ていなくても十分に戦えるのだった。
最初は経験が少なく自信の無かったミニリスも今ではしっかりと攻撃動作が出来ている。
更に、ミスリル製の剣を手にしてからは戦いに自信が持てているようだ。
数日前のこと、ミニリスが鎧を脱いで二刀流の朝稽古をしていると、美崎が突然現れた。
「ミニリスちゃん頑張ってるわね。これどうぞ」
美崎がミニリスに渡したのは、綺麗な細工が施された2本の短剣だった。一本は細身で長め。もう一本は短めで幅広。攻撃用と防御用だ。小さなミニリスに持たせると剣として丁度良い大きさだった。
今まで、鉄製の短剣を使っていたミニリスは大喜びだ。
「ミサ様。ありがとうございます。凄く軽くて使いやすいです」
ミニリスの剣をふる速度が各段に上昇し、風を切る音に鋭さが増す。
「ハルにはこれね」
そう言って美崎は僕に重たい槍をわたして来た。
「オリハルコンのグレートスピアよ。ハルは打撃中心の戦闘スタイルだけど、突き動作にも適性有るわよね」
僕は拳を突き出す感覚を槍に乗せやすい気がしていた。
「確かにね。それにしてもこれ、オリハルコンなんだ。交易が順調だね」
僕は何の飾り気も無いが、重量感が凄い槍を眺めながら言った。
「そうなのよ。ハル知ってた? 西側からも少しだけど人が来るようになって来たの」
「えっ、全然気が付かなかった」
ここまで僕達は誰ともすれ違っていない。
「だよね。ハルとは別ルートを辿って来る人たちだから。まだ誰とも出会って無いよね」
「そうなんだ。人が来るようになったのは僕達が西に進んだからかな?」
もしそうならば、僕達の旅が成果を上げている証拠で嬉しい。
「その通りよ。それと、台地に巣くっていたモンスターを退治してくれたからね」
「あっ、あれね……」
あの盗作疑惑トルネードか……。
僕達は天井の低くなった洞窟を更に進んで行く。ミニリスは立って進めるが、僕は身をかがめがちだ。
その時、美崎の声が聞こえてきた。
「この先にユニークモンスターが居るから気をつけてね。わたしの方も作戦地点に悪徳領主が到着したからハルを手伝えないの」
悪徳領主か。遂に来たな。
「ミサ油断せず頑張ってね」
「わたしは大丈夫よ。楽しむから。ハルも無理せず頑張ってね」
「ありがとう。がんばるよ」
こちらはユニークモンスターか……。僕達は慎重に洞窟を進んで行った。
実はミニリスは、ゲームの様に鎧を操っている。
鎧の胸部を開くと、中にはミニリスのサイズに合わせた、シートベルト付きゲーミングチェアがセットされている。
鎧の中は立体音響が響く。
ゲーミングチェアに座ったミニリスは3Dゴーグルを装着して、手にはコントローラーやゲームパツトなどのデバイスを状況に応じて使い分け、さながら動く筐体でeスポーツを楽しむかのように活動しているのだった。




