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僕は自分の世界で無双する  作者: ウエンズディー・S・水田
行って帰りし物語りセカンドシーズン

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18/31

僕はミニリスとBLみたいなことになる

BLと言う程でもないお話です。

 目の前の吊り橋は長年人の行き来が無いはずだ。メンテナンスが不足している気がしてならない。

 橋に近づくと、カランカランと石の転がる音が渓谷にこだました。

 風に揺れる吊り橋はギシギシと不安な音を鳴らしている。

「ハル様。ここを渡るしか有りませんよね」

「ああ、そうだね……」

 僕は生唾をゴクリと飲んだ。


 意を決して僕達は吊り橋を渡り始めた。僕の後ろからミニリスがついて来る。

 当初はミニリスが先を行くと言って聞かなかったが、僕が先頭の方が良い気がして説得したのだった。


 僕達が先に進むほど橋のきしむ音は大きくなり、崖を転がる石の音も増えて来る。橋を揺らす風も段々と強くなって来た。

 ベキッ! 僕の後ろで板の割れる音がして振り向くと、橋の板を踏み抜いたミニリスが、片ひざ立ちになっていた。割れた板が谷底に落ちて行く。

「大丈夫か? ミニリス」

 僕はミニリスの手を取り彼を立たせる。

「すみません。ハル様。ゆだんしてました。」

「あやまること無いよ。仕方がないさ」

 ミニリスの重量は三百キロくらいある。オプション画面で確認すると、橋の耐用重量は百キロ未満だった。早いとこ渡りきってしまわないと。


 橋の真ん中あたりに来た時だった。風がひときわ強くなり橋が大きく揺れ出した。

 僕とミニリスは慎重に歩みを進めようと体を寄せ合う。

 橋の高さは八十メートル以上。真下をのぞくと谷底は白い川砂利が敷き詰められて、その真ん中を細い川が流れている。水量は少なめで流れも穏やかだ。川は浅いだろう。この高さから落ちたら川底に体を叩き付けられてまず助からない。

「早い所わたり切ろう」

「そうしましょう」

 そうして一歩踏み出そうとしたとき、突然バキンッ!! と大きな音がして、吊り橋を吊っている前後のロープ四カ所が同時に切れた。宙に浮いてしまう吊り橋。僕達は吊り橋と共に落下した。イベント発動が唐突でなんともわざとらしい。

「うぁぁぁぁー」

 僕は落下しながらミニリスの胴体にしがみ付いて自分とミニリスに身体強化をかける。

 他者にかける身体強化の効果は三分の一。これで行けるか?

 いやだめだ。例えば落下するエレベーター。どんなに箱を強化しても中の人は助からない。

 サブーン。そう思った時には着水していた。

 ブクブク。助かった。水深は思ったより深い。五メートル。十メートル。深い……。十五メートル。深すぎだろう。鉄の塊にしがみ付いた僕はどんどん沈んで行く。

 三十メートル!? どこまで深いんだこの川は。僕は川底に目を向けるが、光の届かない漆黒の闇が海溝のように横たわっているばかりだった。


 あれっ!? これってもしかすると……。もしかして僕達って川底を作っていなかったんじゃ……。川は作ったけれども川底は作っていない。そうだった。

 このままじゃ僕達は虚無の世界に飲み込まれてしまう。

 僕は急いでオプション画面を聞いた。

 さて、どうしたものか……。

 

 よしっ、こうしよう。

 画面をキャラクター設定に切り替えてミニリスを選択。そしてまず、ミニリスの鎧を脱がす。

 女の子みたいな可愛らしい男の子が現れる。

 姉のウルルスとそっくりだ。

 そしてミニリスにキャラクター設定画面から身体強化を設定する。ミニリス自身が持っている身体強化能力なのであまり強力ではないが、無いよりましだ。


 耐えてくれよミニリス。僕はオプション画面を閉じた。

 ゴボゴボゴボ

 僕はミニリスを小脇に抱えて全力で水面を目指した。こらえるミニリスに更に身体強化をかける。


 サバァーン

 僕は水面から鯉の様に飛び上がり、そのまま河原へ着地した。

 春と言えど川の水はかなり冷たい。日もまだ短く、山側に傾いた日の光は深い渓谷の底に届かず辺りは既に夕方だ。


 僕はミニリスの濡れた服を着替えさせて、頭をタオルで拭いてあげている。

 震えながら縮こまって僕を見上げるミニリスは本当に可愛らしい。

 蝦夷えぞリスをモチーフにしたミニリスはくりっとしたまん丸な目に髪の毛から突き出したもふもふの耳がチャームポイントだ。

「すみません。ハル様。僕がハル様をお守りするはずだったのに。この様なことに」

「気にするな。冒険は助け合うものだよ」

「あんなに突然橋が落ちるなんて」

 ミニリスは不思議そうだった。

「そう言うものだよ。冒険に出て来る吊り橋は必ず落ちるものなんだ。冒険で落ちない吊り橋は無い。落ちない吊り橋は吊り橋じゃ無い。それはただの橋だ」

「そうなんですか?」

「そうなんだよ」


「よしっ、髪も乾いた」

 そう言って僕はミニリスの髪をブラシでとかし始めた。

「ねえハル。こうして見てると、ハルって結構イケメンよね」

 突然美崎が話しかけてきた。

「ミニリスちゃんって本当にかわいいよね。ハルもミニリスちゃん好きでしょ?」

「どうしたの急に? 僕はイケメンなんかじゃないけどミニリスは好きだよ」

 美崎はミニリスが大のお気に入りだ。

「ねえハル。ミニリスちゃんとキスくらいならしても良いわよ」

 とんでも無い事を言ってきた。

「ち、ちょっと。なに言ってるの!? ミニリスは男の子だよ」

「わかってるわよ。イケメンと可愛らしい男の子。女の子はみんなそう言うの大好きよ」

「いやいや。僕はいたしません」

「ざんねんね」

 美崎の声が聞こえて来なくなったが、何となく視線を感じる。


 僕はミニリスの髪をとかした終えたがミニリスは変わらず寒そうに体をふるわせていた。

 体の芯から冷えてしまっているのだろうか?

「ミニリス。まだ震えてるよ。ちょっとごめん」

 そう言って僕はミニリスの手を取って両手で包む。

 空間に美崎が息をのむ気配が漂う。

「ハル様。なにを……」

 ミニリスの手は氷のように冷たかった。やはり体の芯から冷え切ってしまっている。何とかしなくては。

 僕はミニリスの両肩に手を乗せて体を引き寄せる。

「こうするのさ」

 よろこべ美崎っ!!

「僕が体で暖めてあげるよ」

 そう言って僕はミニリスを力いっぱい抱きしめた。

 きゃっ❤ きゃっ❤ きゃぁー❤

 声がもれてるよ。美崎。

 そして僕はミニリスの背中を高速でさすり出し、ミニリスの体がポカポカと暖まって来る。最初は体を硬くしてたミニリスも、そのうち頭を僕の胸元に預けて心地良さそうだ。

「姉様、…………」

 ミニリスはそうつぶやくと、スースーと寝息を立てて寝てしまった。

 すっかり体の温まったミニリス。もう大丈夫だ。


 そうしてる間に美崎がファストトラベルでやって来て、焚き火を焚いたりキャンプの支度をしてくれた。

「ここならば増水の心配も無いよ。駐屯地にできるよ」

 そう言って帰って行った。


 十分に休憩をした僕たちは更に渓谷地帯を進む。そして目の前にまたもや吊り橋!!

 ブルブルブルブル。鎧をまとっててもミニリスが震えているのがよくわかる。

「ハル様。吊り橋は必ず落ちるんですよね」

 ブルブルブルブル

「ミニリス。鎧を脱げば良いよ。それで問題解決だ」

「ハル様。それではハル様を守れません」

「いやいや。脱いだ方がよっぽど僕を守れると思うよ。吊り橋が重みで落ちることがなくなるから」

 そんな会話を繰り返しながら僕達は渓谷地帯を進んで行った。

ミニリスの名前の由来。実は小リス。

Miniリス。

ミニリス。

だから、ミニリス。

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