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僕は自分の世界で無双する  作者: ウエンズディー・S・水田
行って帰りし物語りセカンドシーズン

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僕はミニリスと旅をする

再び旅が始まるお話です。

 街から西側は、真っ平らな原野が広がっていた。固い地面には、まばらに背の低い草が生え、はるか彼方まで広がっている。その中を一本の馬車道が朝日の下、真っ直ぐ西に向かって伸びていた。

 ここは数年前、モンスター達が現れた場所だった。

 今は安全が確保され、モンスターはほとんど現れない。しかし、人の行き来をは途絶えたままだった。

 もっと先で大きな脅威が行くてを阻んでいるんだろう。


 気節は春だが朝はまだ寒い。昨夜から吹いていた強い東風は日の出と共に止み、静けさが辺りを包み込んでいる。ただミニリスの響かせる、鉄の足音だけが、シャキーン、シャキーンと平原を鳴り渡って行く。

 僕と並んで歩くミニリスの表情は頭からスッポリと被る鉄製のグレートヘルムなので読み取れない。


「なあミニリス。僕と二人で寂しくない?」

 僕はミニリスの気持ちを思って言葉をかけてみた。

「ハル様。なぜその様な事をお尋ねに?」

 ミニリスは歩みを続けながら聞き返した。

「今まで、ウルルスがいつもそばにいただろう」

 ウルルスはミニリスの姉で魔動兵団長だった。二人はとても仲が良く、ウルルスはいつも弟の面倒を見ていた。

「正直、ウルルス姉様ねえさまが居ないのは寂しいです。ウルルス姉様は僕の目標でしたし。でも……」

「でも?」

「でも……。ハル様。今回僕が従者になったのは、僕が自分から志願したからなんです」

「そうだったんだ」

「はい。僕はいつまでも姉様を頼っていては駄目なんです。僕も姉様に負けないくらい強くならないと。強く成って二人で肩を並べて戦えるように」

「うぁっ。ミニリスちゃん。ほんとお利口さんね」

 美崎が話しかけてくる。家族パーティの特性だ。その気になれば、家族の見守りカメラのように姿を見ることも出来る。

「ほんとだね。ミニリスは健気けなげな頑張り屋さんだよ」

 僕が答えたときミニリスの足が止まる。

「あれっ? 今、ミサ様の声が聞こえたような」

 ミニリスのような通常パーティーメンバーには二人の会話が届かないが、何となく感じたんだろう。

「それに、ハル様もミサ様の声に答えたような」

「そうだよ。今、僕はミサと話しをしたよ」

「さすがです。ハル様とミサ様の神の力ですね。それでミサ様はなんとおっしゃったんですか?」

「ミニリスはお利口さんだって」

「そ、そんな。僕なんてぜんぜん」

 ミニリスが照れているのは声の調子でよく分かる。


 それから僕達は何日も野営を繰り返しながら旅をした。物資は美崎がアイテムボックスにいつでも追加してくれるから全然困らない。

「今晩はシチューよ」

「わーい」

「今晩はカレーよ」

「わーい」

「今晩はハンバーグよ」

「わーい」

「今晩はミートストロガノフよ」

「わーい」

「今日は若鶏の香辛ミートソース煮込みボローニャ風よ」

「わーい」

「今日は北京ダックとフカヒレスープとトリュフとホアグラよ」

「バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ」

「ハル様。どうしたんですか? 涙を流して食べてますよね」

「うまい。旨い。夢のようだ。ファンタジーバンザーイ」


 朝は毎日早くからミニリスが技を磨いていた。

 腰が入った力強い正拳突きからの下段回し蹴り。効果的だ!

 背中に仕込んだ二刀の大剣を両手で素早く引き抜いてからの足技を絡めた流れるような連続技。

 着実に力を付けている。ウルルスと肩を並べる日も遠くは無いだろう。


 やがて、平らな道は徐々に勾配が付き始める。平野の先は台地が広がり、更にその先は渓谷地帯のはずだ。

 台地に向かう道は大きく迂回を繰り返すつづら折りに変わってきた。

 徒歩で行く僕達はそんな道を無視して、真っ直ぐ台地の上を目指し、背の低い草が生える緩やかな斜面を登って行く。


 歩みを進めるうちにミニリスは、陽気に歌い出した。

 

 空はハレヤカ 風はカロヤカ 心はハレヤカ

 キュキュキュキュッキュ

 キュキュキュキュッ!

 イェーィ


 嗚呼ああ、この世界にはまともな歌が全然無い。後輩のおととこと音音おとねは沢山曲を作ってたけど、一つもゲームに組み込んでいなかったんだ。

 それにしても誰だよ。下手くそなラップみたいなのをゲームに組み込んだのは。

 そんな事を考えながら登って行く斜面は、徐々に勾配がきつく成っている。

 後ろを振り向くと、なだらかな斜面がはるか下まで広がっていた。

 僕達はだいぶ高い所まで登っていた。もうすぐ目の前が開けて台地の上に僕達は立つだろう。台地の高度は約百二、三十メートル。もうすぐだ。

 台地に着いたらそろそろ駐屯地ベースキャンプを設営しないと。ここまでずっと作っていなかったから。

 駐屯地とは僕達ゲームプレイヤーと違って、ファストトラベルが出来ないNPCのための救済仕様だ。


 キュキュキュキッッ!?

 ミニリスがそう歌いかけた時だった、ミニリスの鉄の足が斜面をえぐり、ズリッと音を立てた。


 キュキュキュッて、ッて、アッ!! うぁっッ!! うぁぁぁ!!!

 ミニリスの体が斜面に横倒しになる。

 うっ! うわぁァァァァーーー!!!

 悲鳴を上げて斜面を転がり落ちるミニリス。まるで、斜面を転がる大きな金属樽のようだ。


 僕が呆気に取られて見ていると、視界に『ミニリスはパーティから離脱しました』の文字が表示された。

 しまった。三十メートル以上離れたんだ。

 通常のパーティーメンバーは三十メートル以上離れてしまうと、パーティから勝手に離脱してしまう。

 離脱したキャラはゆっくりと駐屯地に向かって歩き始める。そこから更に三十メートル離れると姿がマップから消えて駐屯地に現れる。

 ミニリスは歩き出す間もなく更に転がり、忽然と消えてしまった。

 駐屯地に戻ってしまったんだ。

 これから駐屯地を設営しようと思っていた矢先だった。まだ作っていないのに。

 いまの時点で駐屯地は、とりあえず僕達の街だ。


 ミニリスは、街の真ん中に立っていた。

「あれっ? 僕なんで街に帰ってるんだろう???」


 ………………。


「ミニリス。帰っちゃたの。僕と一緒に旅をするんじゃ無かったの?」

 僕は誰もいない平原を見下ろしながらつぶやいていた。

 因みに家族パーティから抜けると春海達家族の家に帰ります。最初はこのパーティ離脱機能を美崎達は作ったのですが、その後、もっと優れた家族パーティを開発したのでした。

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