1対2
遅くなりました。
契約違反による不利ではない、その返答に白石は質問で返す。
「2対1っていう状況は?契約違反による不利じゃないのかい?」
「それについては、私があなたの味方になりましょう」
突然真横から声が聞こえた。人間味のない声、だけどどこか人間味を感じる喋り方。
横には、誰もいなかったはずなのに
「びっくりさせないでくれるかな?」
「危害は加えるつもりはないので、安心して驚いてください」
背丈の小さい、少女がいた。
レインコートのような大きな白いフードつきのロングコートを着ている。
フードを深くかぶっているのか、顔は見えない。
「自己紹介がまだでしたね。私はKP、ゲームの管理を任されたものです。そして、あなたたちプレイヤーの監視をしています。」
「...」
その言葉に、反応せず。
白石は、怒りを込めた目で睨んだ。
そして
「っ!?」
彼の怒りを無視して、そっと、少女が白石の懐に飛び込んだ。
フードの中に隠れていた彼女の瞳が、彼の瞳の中に入り込む。
全ての光を飲み込むような、瞳孔が開いた真っ暗な瞳が。
「な!?」
人らしくない、その目の異様さに生物としての嫌悪感が...
..いや、恐怖が、彼と彼女の距離を離そうとする。
足が後ろに進み、3歩下がった。
彼女は踏み込んだ場所で止まって。
「ふふ、面白い…あなた、かわいそうですね。狂いきれていませんねぇ あはは」
そんな、感想を述べた。
「…人に願いを叶えるって言ったらだいたいこうなるよ。特に僕みたいな人はね。…それが狙いだろ悪魔。」
そこで言葉を一区切りし、少し歩く。
「嫌ですね。私は悪魔ではありませんよ?」
木から生えた、木の枝の根元を掴み。
乱暴にへし折った。
バキリッと簡単に折れた木の枝の先は鋭く、ヤスリのようにギザギザだ。
それを、首元に持っていき…
ビシャリと鮮血が、地面に撒き散らされた。
首から、まるで消防車のホースから水を出すように、真っ赤な血液が吹き出していく。
しかし、それは数秒のことだ。
「これでいいか。」
あんなに吹き出した血は、ほとんどが地面に触れず。
長く鋭い紅い槍として、存在していた。
そして、木の枝の時と同じようにへし折る。
出来上がった血の槍を指先で回して、白いロングコートを着る少女に突きつけた。
「あとさ、人の心を勝手に読まないでくれないかな。殺すよ?」
「どうぞ?」
なんの躊躇いもなく、そんな返事が返ってきた。
そして手を広げ、無抵抗を示す。
「...」
「あなたが、これから行うことを私は止めません。その行動によっておこる結果に私は責任を持ちませんから。だから、どうぞ。」
「最悪だよ、本当」
血の槍の矛先を、彼女に向けるのをやめる。
そして…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
銃声が鳴り響く
響いて、響いて、響いて、響いて
高速で飛んできた、頭に狙いが定められた赤い斧が、目の前で何かにぶつかり高く跳ね上がった。
頭が割れるような激痛が叩き込まれる。
「がっ!?あああ!!」
左手で頭を押さえ、必死に耐える。
痛い苦しいつらい泣きたい。
「白井しぃぃ!!」
「そうだね、終わりにしよう」
右耳から、ささやき声が聞こえた。
体をとっさに右にひねる。
銃口を...
銃を持つ右手が下から切り上げられ、はじけ飛んだ。
生暖かい、自分の血を浴びながら
くるくると回転する、ひじから下の右腕を見た。
白石の左手には、斧がある。
斧の斬撃が、腹部一歩手前で何かにはじかれる。
「がふっ!」
激痛で、肺の空気が漏れ出る。痛い。
再生した右手で、斧をつかむ。
白石の、足払いが不自然に止まる。
痛い。
白石の腹にけりを叩き込む。
斧をつかんでいた白石が、吹き飛ぶ。
数メートル先の木に、激突して止まる
掴んだ斧には、ちぎれた白石の左手があった。
赤い夕立が、彼らの血を隠す。
小暮の影が背中側に伸びる。
背中側で、ライフルで白石を狙うあの子に心配をかけないように、痛みを耐えながら。
肩で息をしながら。
夕立ちでできた影のせいで、どんな顔をしているのか見えない、白石と向き合う
「...お前は!!お前はああ!!」
「うるさいな、なんだい?」
痛みで心拍が暴れ、息が上がる。
それでも、言わなければならない。問わなければならない。
「なんで!なぜッ!なんで!!人を殺すんだよ!」
「はぁ、今さら英雄気取りかい?」
落胆したように、溜息を吐き、ずれた眼鏡を直す。
まるで、馬鹿にしたように
「そんなの、決まっているじゃないか僕の娘を」
「噓をついてんじゃねえよ!」
「...は?」
「生き返させる?そのためだったら、人を皆殺しにする理由がないだろうが!」
KPは、言っていた。
これはゲームで神人と化け物と俺たち契約者がプレイヤーだと
無邪気の神は言っていた。
私を楽しませろと、弱い者いじめは面白くないと
じゃあ、日本で起こっている無力な一般人の虐殺は...
「何が言いたいんだよ」
「お前は、イザベラを生き返らせたいんじゃない。八つ当たりしたいがために...!」
「不正解ですよ。」
そんな、無機質でどこか人間味を帯びた声が聞こえて..
赤い槍の矛先が、胸から突き出た
心臓が、突き刺された。
「そこまで彼は、感情に振り回されることができないし、したくてもできません。それゆえに狂いきれないのです。」
白いコートが赤く染まる。
彼は間違えた。
殺す口実、罪悪感を感じないように
無意識に組み上げてしまった、歪んだ考えは
その血で贖われる。
次の話が出る日は未定です




