↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/85

25. 防衛お嬢と●と頼れる仲間たち。③

 ライフルの弾薬は一発二十五円、撃つためにはマガジンに銃弾を装填するという作業が必要になる。しかし、町中が魔物に溢れている今、マガジンに弾を込める余裕は無い。

 三十発打つ為に、安物のマガジンを使い捨てにすると金銭的な不安も出てくる。


 お金が無くなってしまったら……私は何も出来なくなってしまうもの……。だけど、指を咥えてみているだなんて嫌よ。


「クーナ様、そろそろ避難されますか?」


 周囲を囲んでいるコボルトやゴブリンの集団をピニアに任せて、私はリボルバーで空を飛んでいる魔物を撃つ。

 六発中、一発当たればいい方。明らかに連発できるライフルに比べて火力が足りていない。

 地上の魔物と戦っている冒険者達が隙をみせた瞬間に、空を飛べる魔物に襲われている。


「まだ、戦えるし銃弾も買えるわ。ピニアは……ずっと戦って、辛くなっていない?」


 私の我儘に付き合わせて、私の身を守っているのはピニアだ。


「私は平気です。しかし、お嬢様はお疲れでは無いですか?」


 ピニアはすごい。私の立っている所から、まるで結界の様に魔物を一切近寄らず事なく仕留めている。

 いっそ私を放って、彼女に魔物を全て倒すように命令すれば、簡単に遂行してもおかしくない。

 私を守る為に離れる事が出来ないし、私が命じたとしても、ピニアの足についていく事が出来ない。

 

 私は何をやっても、マーケットスキルという常軌を逸したスキルを持っているのに、リェースにいた頃と同じで役立たずなんだろうか?


「助けてぇぇぇ!」


 頭上から叫び声。聞こえてきた方向に視線を寄せると巨大な鷹の魔物に捕まれ、宙に浮いている女の子が助けを求めていた。

 もし落ちればひとたまりもない。


「ピニア……!?どうしたら……」

「流石にあの高さを飛ぶ事は出来ません……お嬢様、ライフルで狙い打てませんか?そうして頂けたら、私が空中で受け止めて着地します」

『ライフルのコッキングレバーを引いて、排出口からチャンバーに直接、弾を込めてください』


 マルから以前、ライフルにマガジンを使わず、排莢口から直接弾を入れる方法を教わっていた。

 私にはマーケットスキルがあるから必要ないだろうと思ったけど。マルに教えられていて良かった。


 銃弾が空になったライフルのコッキングレバーを手前に引く。露出した内部機構に弾薬を直接、マーケットスキルで投入する。

 ボルトリリースを押すと、弾を固定するチャンバーに弾薬が装填される。


「ピニア!」

「無線で合図します!」


 ライフルに備え付けたスコープのレティクルで、宙を飛ぶ魔物を追いかける。しかし、まだ撃てない。倒したところで、ピニアが追い付いていないと、下に落ちて助ける事ができない。

 三秒、たったそれだけの時間で魔物の形が小さくなっていく。もし銃弾が外れてしまえば、外せば外すほど、その距離は大きくなっていく。


『クーナ様、準備ができました!』


 トリガーを絞る指が震えそうになる。私が失敗したすれば、あの子は魔物に喰われてしまうだろう。人の命が、私の人差し指一つに関わると思うと。私がしている事がどういう事なのか、再認識させられてしまう。

 ただ、自分の存在価値を証明するのに必死になって、役に立ちたいからって、人の命を背負おうとしている。強力な武器があるから大丈夫だって思い上がっていた自分がいた。

 今の私は人の命が乗って重くなったトリガーを引く事が出来ない。結局、覚悟がなかった。


『クーナなら出来ます。いえ……クーナにしか出来ません』


 私にしか出来ない。このトリガーを引けない時、連れ去られそうになっているあの子供を助ける事は叶わない。

 それこそ本当に役立たずだ。私なら出来ると信じて、ピニアは走ってくれている。


「私は……役立たずなんかじゃ……」


 トリガーを引いた瞬間、発砲音と同時に魔物の体を撃ち抜いた。血飛沫と羽が弾け飛ぶ。爪から離れた子供は、下に落ちる。

 私から見える、手前の屋根に隠れて見えなかったピニアが宙に飛んだ。子供を抱き抱えると、再び屋根に隠れた。


『クーナ様……流石、私の主です。無事、救出出来ました。今、其方に向かいます』

「ありがとう……力が抜けたわ」


 ほっと胸を撫で下ろした瞬間の事だった。頭に軽い痛みと、脳をくすぐられた様な不快感がはしる。


「うっ……くぅ……」

『クーナ、どうしましたか?』


 頭にメロディが流れる。


 ててーて♪ててて♪ててーて♪ててて♪てててててーてて♪


「ててーて♪ててて♪ててーて♪ててて♪てててててーてて♪メロディが頭に流れてる」

『その曲は販促に使われる装置の物です。なぜ、クーナがあの機械の曲を?スキルは神から与えられるはず。機械の神……?』

[いつもマーケットスキルをご利用頂き誠にありがとうございます。スキル経験値と貢献度が規定値を超えました事、お祝いさせていただきます。スキルに新しい機能が追加されました。詳細はマーケットスキルに記載されているので、ご確認ください]


 頭に流れていたメロディと声が止まる。


「なんだったの……今のは……」

「クーナ様!無事ですか?」

「うん、大丈夫よ。スキルレベルが上がったの。救出した子は?」

「腕を魔獣にやられていて、治療魔法使いに預けてきました。腕は戻らないですが、一命は取り留めています」

「そう……命だけでも助かって良かったわ」

『クーナ、マーケットスキルの情報に新しい項目が増えています。この世界の物を購入する能力です』


 この世界の物で買える物は通貨だけだった。地球の物であれば何でも買える。


「何でも買えるの?」


 もし……買えるのなら、欲しい物がある。私が戦うよりも、大勢を助けられるアイテム。


『詳細がありません。ですが、この世界で買える物が増える事。それと、不動産賃貸と魔力の購入です』

「フドウサン……?」


 マーケットスキルを開く。パネルの見た目が若干変わっている。マーケットスキルの使い方、という項目も増えている。何か新しい情報はないかと中身を確認してみるが、それを見た私は呆れて溜息が出る。


「今更、使いかたの説明を教えられてもね」


 説明にはマルの購入を勧める旨も書かれていた。一般流通のマルと間違えない様に気をつけてとの注意書きも添えられていた。

 マルを購入する時に、偶然指が触れたの必然だったのかも知れない。


『レベルと言うより、インターフェースの変わりようからして、アップデート……』

「お嬢様は何を触っているのです?」

『ピニアにはあのパネルが見えていないのですか?ピンクで派手な色をしているのに……』


 マーケットスキルはピンク色ではない。写真のように複数の色合いを出す事ができる。私は新しく追加された物を発見した。


「あったわ!治癒魔法【エクストラヒール】のスクロール」


 四肢の欠損や瀕死の人間を全快に治療する奇跡の魔法。先天的にスキルを持った人は、幼い頃から神に仕えた聖女しか居ないと言われている。

 でも、スクロールなら私が覚えれば直ぐに使える。とは言え希少価値の高いスクロール。価格は一千万カクル、大白金貨一枚。私が持っているのは十三万円……とてもではないけど、買えるわけがない。


『いくらですか?』

「一千万カクル……大白金貨一枚」

『時間を掛ければ、いつかは買うことが出来ますよ。白金……プラチナですか。大白金貨は日本円で幾らですか?』


 この国で一番価値のある硬貨だ。手の届かない額だから確認していなかったけれど。高いに決まっている。


「七百万……やっぱり高価だわ。あれ……嘘……十万円?」


 コストルで使われている通貨も、リェースで使われている通貨も、大白金貨は七百万円と十万円の二つが売られていた。

 一つは通貨として使える七百万円のもの。もう一つはウォレットにチャージできるもので十万円だった。


「ウォレットから通貨として出せないのなら十万円で買えるわ!」

『やっぱり……増殖の対策はされていますか。地球では、白金と金は価値に差がありません。レートによってはプラチナの方が安くなることもあります』


 私はウォレットに一千万カクルをチャージした後に、エクスヒールのスクロールを購入した。

 魔力を通すだけで、魔法を覚えて使えるようになる、使い捨てのアイテムだ。

 古代の高度魔法文明時代に作られたはずなのに、何故か綺麗だ。

 しかし、そんな事は目の前にある貴重なスクロールの存在感に比べたら小さい話で、興奮の方がはるかに大きい。


「こんな簡単に使えるようになるなんて……」


 私が幼い頃から教会に何度も通っても、ヒールですら手に入れる事すら出来なかったのに。神様はマーケットスキルという、もっといいスキルを授けてくださったのね。

 

 スクロールを留める紐を解いて、広げると理解出来ない文章や、図形が広がっている。明らか指の形に沿った目印と思われる箇所に右手の親指を添える。

 そこへ魔力を流すと、スクロールの文字がぼんやりと青白く光る。


「く…………ふぅ……」


 私の魔力を変質させて戻ってくる魔力に、親指がピリピリと痺れる。まるで元から持っていたかのように、スキルとして使えるのを感じた。

 ヒールも、ハイヒールも使える。傷つけるだけじゃない。人を癒すことすらも出来る。


「ピニア、その子の所に案内して!」

「冒険者のチームに預けたので、探さなくてはなりませんね」

『無線の内容を精査したところ、冒険者ギルドで保護されているそうです』

『冒険者ギルド長ゲルテだ。治癒魔法が使える奴を集めた。ハイヒールが使える奴がいるから、死なない限りは助かるから安心しろ。金は払える奴からは取るから心配するな』


 マルと私の耳に着けてるインカムから、男性の声が聞こえる。この通信を聞きつけた怪我人がこれから運ばれてくるだろう。

 冒険者として再起できない人でも、完全に治すことが出来る。やり方が悪どいかも知れないけれど、方法は選んで居られないわ。

 治るのなら金貨を喜んで差し出してくれる人もいるはず。


「これから冒険者ギルドへ向かうわ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。