24.防衛お嬢と●と頼れる仲間たち。②
兵舎の会議室に居た人達は、自分の配置に移動を始めた。ソックさんは街の中に侵入しようとする魔物から門を守る為に前線へ。ルレとラルンさんペアは、大型の魔物を見晴らしのいいところから狙撃するために鐘の塔へ。
密集した敵に対して、効率の良い攻撃手段があるとマルが言うので、門の前へと向かう。そこでは作戦開始前に兵士が、冒険者達へ防衛戦の作戦を説明していた。
冒険者達はプリンターで印刷した地図を持って話し合っている。
「以上が作戦概要だ!だが、悪いな。お前らは我々が活躍するところを指を加えて見ている事になるかもな!その時は武勇伝と素材を土産に持って帰ってきてやる!楽しみに待っているといい!お前らは迷子が来たら、コストルが怖いところだという事を教えてやれ」
『結構な数の冒険者が残ってくれた様ですね』
「ええ、ハイラさんが協力してくれたみたいね」
「おまえらぁぁぁぁぁ!ハイラから聞いたな!?アイツがコネを使って、深窓の令嬢、クーナ様から姿書きのサインを頂けるそうだ!だが、これは数枚しかない貴重な物だ!欲しい奴は魔物を殺せ!沢山殺せばチャンスがあるぞ!」
「クーナ様!クーナ様!クーナ様!」
屈強な男女達が怒涛の勢いで私の名前を叫んでいる。
『ちょっと!ハイラさん!深窓の令嬢クーナってなに!?』
『ん?ああ、クーナとは言っても、リェースにいると噂されている令嬢の事で、君の事ではない。姿書きの作者から顔料の依頼を受けた時に姿書きをいくつか貰ったんだ。クーナという人物のサインを書いた限定の姿書きをやる……とは言ったからな、後でそれにクーナがサインを書いてやってくれ。これで嘘にはならん』
そんな……本物が詐欺まがいの姿書きにサインを書くって……なにそれ。何がどうなって……?
私の存在を超えて、名前が一人歩きしていると思っていたら、帰ってきた。
『嘘から出たまこと……ですか。では、私にマニュピレーターと迫撃砲を一式用意してください』
私がマーケットスキルを開こうとした瞬間。けたたましい銃声がコストルを包んだ。それは連続して続き、鐘の塔から響いていた。
ラルンさんの狙撃だ。
『すごく良いぞ!一発でサイクロプスの頭が吹き飛んで、後ろの奴も吹き飛んだぞ!エアレジストとの相性がいいな!』
『私も負けていられませんね!クーナ、お願いします』
マルに二つのアタッチメントを新しく取り付ける。細い指が細かく動く腕だ。購入した迫撃砲も一式、地面に置いた。
『安物の旧式ですが、私が使えばこれは現代兵器です』
マルが新しく生えた二本の腕で迫撃砲の足を微調整する。空にはマルが操縦する複数台のドローンが飛んでいる。あれで魔物との距離を測っているらしい。
『ピニア、弾を入れてください!』
「これを入れれば良いんだな?」
『駄目イド、逆です!早くしてください』
「蹴り飛ばすぞ」
ピニアが砲弾を入れると、シュポンという音を立てて、空に飛んでいった。しばらくすると、爆発音が壁の向こうから聞こえてくる。
『なんだ今の……密集した所が吹き飛んだぞ……マルとピニアが何かしたのか?なんだあれは?』
『休むな駄目イド、どんどん入れなさい!』
「タマッコロが命令するな!」
迫撃砲をポンポンと発射する二人。無線の向こうからはラルンさんの理解できない状況に対する言葉がインカムから流れている。
他に無線を渡した隊長からも、今の爆発に危険はないか、確認の連絡が来る。魔法の類と適当な説明をしておいた。
『今ので十分の三は削れた。あの短時間でそれだけ減らせれば上出来だ。しかし……バラけてきたな』
ラルンさんからは敵の場所が一望できる。彼女には魔物の海が見えている事だろう。
『確認できています。後進国の安物とはいえ。これ以上は予算に響きます。大型の魔物は削れましたか?』
『ルレが弾薬補充を頑張ってくれている。オークやグレートベアは複数いる。南側から北にかけて減らしている』
「それじゃあピニア……いきましょう?」
「はい。指一本触れさせない事をお約束します」
迫撃砲をマーケットスキルで売却して、マルをバイクの荷台に固定する。私はアサルトライフルを構えて、バイクのエンジンを始動させる。
『小型の個体で瞬間的に最大時速100キロで走る魔物も居ます。近寄りすぎると追いつかれるので気をつけてください』
「私が蹴散らすから問題ない」
「行くわよ!」
私はアクセルを回した。エンジンが唸りを上げると車体が進み、冒険者達の視線を集めながら、門の外へと走り抜ける。
兵士達が隊列を作っている所を避けて。魔物の群れへ向かう。ピニアは先導して前を走ってくれている。
私達は魔物の群れを横から攻撃する役目だ。出来ることは、兵士の横側を守ること。
『群れの南側側面に到着。距離、三百メートル。これから中型以上の魔物を遠方から駆除する。北側の戦力を強化しろ』
ピニアが無線で全体に向け、これから行う攻撃を説明する。それに対してすぐに反応が返ってきた。
『そんな話信じられるわけないだろう!そんな危険な所に行けるわけがない!』
『ソックだ。今の言葉は信用しても良い。北側と東に戦力を集中させる。戦果が欲しい奴は俺について来い』
『ソック兵士長!何なのあれは!?この魔道具といい……さっきの魔獣を吹き飛ばした轟音は!?王都に無い軍事力を何故コストルごとき田舎にあるの!?』
『ペニャ……相変わらずうるさいな……。こっちに有利になってるんだ。黙って魔獣を殺せ』
『田舎の兵士が騎士の私に命令しないで!』
ソックさんが話を通してくれる。すんなりとこちらの意図を解釈して、代弁してくれるのはとても助かる。
彼と言い争っているのは王子に脱出を促していた女騎士だ。
私はピニアの足元に手榴弾を大量に置いた。
「ピニア、お願い」
「ピンを……抜いて……投げる……ピンを……抜いて……投げる……投げる?」
ピニアが手榴弾をひとつ手に取ると、それを思い切り投げた。しかし爆発することは無かった。私はライフルのスコープで、投げられた場所を覗いてみると。魔物が一匹血を流して横たわっていた。
『こぉんのぉ駄目イド!ピンを抜かないと爆発しませんよ!しかも……魔物の頭に直撃させて、頭部を損傷させやがりました。もうそこらへんの石で良くないですか?』
「ちょっと緊張して手元が狂っただけだ!次はうまくやる!」
『手榴弾は手元を狂わせて良い物ではありません!地面にめり込ませて自爆しないでくださいよ!?狐ではなくゴリラなんじゃないですか!?』
「代わりにお前を投げてやろう……か!」
ピニアは今度こそピンを抜いた手榴弾を、風を切る音を立て、魔物の群れに投げ飛ばす。私はスコープを覗いて、中型の魔物。壁を登れるような、街の中に入り込む可能性があるであろう猿の魔物にレティクルを合わせて、爆発するのを待った。
ドン、と大きな炸裂音。想像よりも小さい爆発だったが、手榴弾に一番近い距離にいた魔物の体は大きく欠損している。一度の爆発で複数の魔物の動きを止めることができた。
私はそのままライフルのトリガーを引いて、門を守る兵士が苦戦しそうな魔物を、ライフルで撃ち抜いて減らしていく。
以前トルカを助けた時に倒した、狼の魔物を倒したおかげで結構腕力が上がっている。ライフルの反動を抑えるのも楽になっていた。
ピニアは続けて手榴弾を投げていく。私がその周辺のまだ戦える魔物を撃つ。それを何度か繰り返していると、足の速い狼の魔物を引き連れたコボルトが私の方へ走ってくる。
私が出した銃声を聞きつけてきたようだ。
即座にマーケットリロードをして、連射に切り替えて数発の弾丸を連射する。
素早い狼の魔獣も数を減らせておきたい。
銃弾が通りやすい体の魔物は、銃弾が命中すると足から崩れていく。
段々と銃声に気を取られる魔物が多くなっていきた。数百の弾丸を止むことなく連射で打ち込み、数を減らす。
大きく鳴り響きつづける銃声を聞きつけた魔物の気を引いてしまい、次から次へとこちらに向かう数が増えてくる。
『銃身が溶け始めています。バレルを交換してください!』
高温の弾丸が通過して、燃焼ガスに晒されるバレル内部は熱が溜まって、金属がが溶け始める。私はバレルを捨て値で売却して、新しいバレルを購入する。
分解しなくても、その場所を把握さえ出来ていれば交換できる。
構えを解くこと無く打ち続ける。長時間の射撃、反動のせいで腕が痺れてきた。
『左右に広がりました。一度距離を取りましょう!まだ戦えますか?』
「想像以上にお金の減りが激しいの!良くない状況だわ」
爆発物と弾薬が懐を冷やしてくる。ラルンさんには弾を沢山渡しているので、一番大きく脅威的な魔物は駆除してもらえている。
ここからでも見えるサイクロプスやオーガの巨体が一体ずつ、群れに沈みむ。ラルンさんが鳴らす銃声が遠くから聞こえてくる。
『クーナ無事か?数が多いが雑魚しかいない。戻って少し休め。俺たちの仕事を奪われても困るぞ』
『お言葉に甘えて、一回戻らせて頂くわね。南側の大きいのは倒したから、健闘をお祈りするわ』
ピニアに声を掛けて、一度コストルに引き返した。街の中には魔物が侵入していた。小型とはいえ、身動きの早い猿や鳥の魔物。
柔軟な戦闘手段を持つ冒険者が魔物と戦闘している。数は少ないので、手助けは必要なさそうだ。
しかし、対空攻撃が苦手な冒険者が苦戦しているところも見える。マルから聞いた別の種類の銃であれば対処出来るが。購入する為のお金が無い。
お金さえあればまだ戦える。私が銃を使えば、それだけ命が助かる人が居る。だから動きを止めたくはない。
どうにかして資金を集めないと……。




