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SWORD OF DESTINY  作者: ティケ
胎動
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8/19

決闘

それは突然の出来事だった。

凄まじい轟音《ごうおん》、激しい揺れ。

ロイ達は飛び起き、部屋を飛び出す。通路では船の乗客達が血相を変えて走り回っていた。

「助けてくれぇ!」

「いやああああ!」

乗客達の悲鳴!ロイ達は顔を見合わせ、急いで支度して、逃げ惑う乗客達の間を縫《ぬ》って甲板《かんぱん》に出た。

「なんてことを!」

サシャは厳しい顔で事態を見据えた。


巨大な船が客船に衝突しており、武装集団が次々と飛び移って来る!その巨大な舟のマストの先、黒い旗に髑髏《どくろ》の印。海賊だ!

「この船はいただくぜぇ!おとなしくしろやぁ!」

勢いに乗った先頭の海賊をロイが一閃!吹き飛んだ海賊はそのままのびた。見事なみねうち。

「てめえ!ただじゃおかねえ!やっちまえ!」

後続の海賊達が一斉にロイに飛びかかる。しかし誰一人、ロイに歯が立たない。次々とみねうちをくらい倒れていく。

「こっ、このガキ、強え・・・」

海賊達がおじけづいたその時。

「なかなかやるじゃないか!相手してやるよ!」

海賊船からこちらを見下ろす影が叫ぶ。

「お・・・お頭《かしら》!」

頭《かしら》と呼ばれた人物が颯爽《さっそう》と飛び移って来る。

「な・・・」

「ええ!」

ロイとサシャは思わず息を飲んだ。

長い髪、細身だが引き締まった体。海賊達の頭は、息を飲むほどに美しい女性だった。


海賊の頭はゆっくりと辺りを見回す。のされた子分達に目を細め、ロイ達をキッとにらんだ。

「あたしはキサラ。その海賊船のキャプテンだ。うちの子分、ずいぶん可愛がってくれたねぇ。」

頭は腕に巻きつけたある物を取る。鞭《むち》だ。

「ただじゃおかないよ!」

キサラは鋭く鞭を振るう。素早くかわすロイ。

次々と打つも全てかわす。

「やるねぇ・・・」

キサラの表情は心なしか喜びが見え隠れする。

「これならどうだい!」

かわしたロイ。しかしキサラが手首を動かすと、ロイを追うように鞭が向きを変えて襲いかかる。ロイの胸に直撃!

「ぐ!お、重い!」

「効くだろう!あたしの鞭は特別製でね!中に金属の特殊な鎖《くさり》が仕込んであるのさ!」

体と思うと足に、顔と思うと腕に、自由自在に襲い来る鞭の嵐。連打を浴びるロイ。しかしサシャが回復魔法で援護。更に別の魔法をかけようとした時。

「邪魔するんじゃないよ!」

サシャを鞭が襲う。ロイは間に合わない。みぞおちを強く打たれたサシャは倒れる。

「ぐうっ・・・ロ・・・イ」

「サシャ!」

ロイは駆け寄ろうとしたが、鞭の乱打に阻まれる。

「おらおら!このまま打たれっぱなしで終わりかい!」

更に威力をますキサラの鞭。ロイは悩んでいた。

「あの技なら遠距離でも・・・だけど・・・」

容赦ない乱打。やらなければやられる。ロイは意を決し構える。そしてキサラが鞭を打つ瞬間に、刀身に振動を加え突きを放った。剣先から何かがほとばしり、キサラを直撃。

「ぐああっ!」

吹き飛ぶキサラ。

「これは・・・真空波!」

真空波。刀身を震わせ、剣先に真空状態を作り出し放つ奥義。技術だけでなく、刀身の大きさ、太さによっても威力が大きく変わる、制御の難しい技。

「やっぱり難しい・・・」

ロイは目を細める。今のティーダの刀身では、一歩間違えれば命に関わる。たとえ海賊でもロイは女性を傷つけたくなかった。

よろめき立ち上がるキサラの目付きが変わった。

「フフ、いまのは効いたよ、いい技じゃないか、一発だ!次のやつでケリをつける!」

本気の一撃を繰り出すつもりだ。

「出来るか・・・」

ロイの思いにティーダが反応した。

「ロイよ、念じよ!理想とする我の姿を!汝の意思に応えよう!」

ロイの描いた姿をティーダが具現化する。より細く、しなやかに、刀身が形を変える。

「これなら、ギリギリいける!」

「行くよ!あたしのとっておきだ!」

キサラが繰り出した鞭に手首のひねりを強く加えると、鞭は螺旋《らせん》を描き、空気を巻き込み竜巻となり襲い来る。同時にロイも真空波を放つ。

真空波は鞭の竜巻の中心を貫き、鞭より早くキサラを打った。

キサラは大きく弾け飛び、客船のマストに強く叩きつけられ、そのまま伏せて倒れた。


キサラに駆け寄るロイ。意識の戻ったサシャも駆け寄る。キサラをゆっくり起こす。

「キサラさん、すまない、やり過ぎた。」

「情けなんてかけないでおくれ、あたしの負けだ、煮るなり焼くなり、どうにでもしな。」

悔しさを隠しきれないキサラ。

「じゃあお願いを一つ聞いて!俺達と乗客の皆様を、グスク国に連れて行って!」

微笑むロイ。しかしキサラは呆れ顔。

「海賊に人助けをさせる気かい?」

「ダメ・・・ですか?」

「グスク国は海軍が強力でねぇ、海賊船で近付こうもんなら、あんた達も一緒に海の藻屑《もくず》だよ。」

落胆するロイ。

「グスク国に行けりゃいいんだろう、いいケンカをさせてもらったし、一肌脱いでやるよ。」

ゆっくりと立ち上がったキサラが子分に叫ぶ。

「みんな!このケンカはあたしたちの負けだ!勝ったロイに免じて、客船を直して引き上げるよ!在庫の資材を持って来な!」

勝負を見ていた子分達。キサラの心意気をくみ取り迅速に動く。みるみる船は修復され、再び海を走れるようになった。


去って行く海賊船、見下ろすキサラ。手を振るロイに、ほんの少し微笑みを返した。


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