決闘
それは突然の出来事だった。
凄まじい轟音、激しい揺れ。
ロイ達は飛び起き、部屋を飛び出す。通路では船の乗客達が血相を変えて走り回っていた。
「助けてくれぇ!」
「いやああああ!」
乗客達の悲鳴!ロイ達は顔を見合わせ、急いで支度して、逃げ惑う乗客達の間を縫って甲板に出た。
「なんてことを!」
サシャは厳しい顔で事態を見据えた。
巨大な船が客船に衝突しており、武装集団が次々と飛び移って来る!その巨大な舟のマストの先、黒い旗に髑髏の印。海賊だ!
「この船はいただくぜぇ!おとなしくしろやぁ!」
勢いに乗った先頭の海賊をロイが一閃!吹き飛んだ海賊はそのままのびた。見事なみねうち。
「てめえ!ただじゃおかねえ!やっちまえ!」
後続の海賊達が一斉にロイに飛びかかる。しかし誰一人、ロイに歯が立たない。次々とみねうちをくらい倒れていく。
「こっ、このガキ、強え・・・」
海賊達がおじけづいたその時。
「なかなかやるじゃないか!相手してやるよ!」
海賊船からこちらを見下ろす影が叫ぶ。
「お・・・お頭!」
頭と呼ばれた人物が颯爽と飛び移って来る。
「な・・・」
「ええ!」
ロイとサシャは思わず息を飲んだ。
長い髪、細身だが引き締まった体。海賊達の頭は、息を飲むほどに美しい女性だった。
海賊の頭はゆっくりと辺りを見回す。のされた子分達に目を細め、ロイ達をキッとにらんだ。
「あたしはキサラ。その海賊船のキャプテンだ。うちの子分、ずいぶん可愛がってくれたねぇ。」
頭は腕に巻きつけたある物を取る。鞭だ。
「ただじゃおかないよ!」
キサラは鋭く鞭を振るう。素早くかわすロイ。
次々と打つも全てかわす。
「やるねぇ・・・」
キサラの表情は心なしか喜びが見え隠れする。
「これならどうだい!」
かわしたロイ。しかしキサラが手首を動かすと、ロイを追うように鞭が向きを変えて襲いかかる。ロイの胸に直撃!
「ぐ!お、重い!」
「効くだろう!あたしの鞭は特別製でね!中に金属の特殊な鎖が仕込んであるのさ!」
体と思うと足に、顔と思うと腕に、自由自在に襲い来る鞭の嵐。連打を浴びるロイ。しかしサシャが回復魔法で援護。更に別の魔法をかけようとした時。
「邪魔するんじゃないよ!」
サシャを鞭が襲う。ロイは間に合わない。みぞおちを強く打たれたサシャは倒れる。
「ぐうっ・・・ロ・・・イ」
「サシャ!」
ロイは駆け寄ろうとしたが、鞭の乱打に阻まれる。
「おらおら!このまま打たれっぱなしで終わりかい!」
更に威力をますキサラの鞭。ロイは悩んでいた。
「あの技なら遠距離でも・・・だけど・・・」
容赦ない乱打。やらなければやられる。ロイは意を決し構える。そしてキサラが鞭を打つ瞬間に、刀身に振動を加え突きを放った。剣先から何かがほとばしり、キサラを直撃。
「ぐああっ!」
吹き飛ぶキサラ。
「これは・・・真空波!」
真空波。刀身を震わせ、剣先に真空状態を作り出し放つ奥義。技術だけでなく、刀身の大きさ、太さによっても威力が大きく変わる、制御の難しい技。
「やっぱり難しい・・・」
ロイは目を細める。今のティーダの刀身では、一歩間違えれば命に関わる。たとえ海賊でもロイは女性を傷つけたくなかった。
よろめき立ち上がるキサラの目付きが変わった。
「フフ、いまのは効いたよ、いい技じゃないか、一発だ!次のやつでケリをつける!」
本気の一撃を繰り出すつもりだ。
「出来るか・・・」
ロイの思いにティーダが反応した。
「ロイよ、念じよ!理想とする我の姿を!汝の意思に応えよう!」
ロイの描いた姿をティーダが具現化する。より細く、しなやかに、刀身が形を変える。
「これなら、ギリギリいける!」
「行くよ!あたしのとっておきだ!」
キサラが繰り出した鞭に手首のひねりを強く加えると、鞭は螺旋を描き、空気を巻き込み竜巻となり襲い来る。同時にロイも真空波を放つ。
真空波は鞭の竜巻の中心を貫き、鞭より早くキサラを打った。
キサラは大きく弾け飛び、客船のマストに強く叩きつけられ、そのまま伏せて倒れた。
キサラに駆け寄るロイ。意識の戻ったサシャも駆け寄る。キサラをゆっくり起こす。
「キサラさん、すまない、やり過ぎた。」
「情けなんてかけないでおくれ、あたしの負けだ、煮るなり焼くなり、どうにでもしな。」
悔しさを隠しきれないキサラ。
「じゃあお願いを一つ聞いて!俺達と乗客の皆様を、グスク国に連れて行って!」
微笑むロイ。しかしキサラは呆れ顔。
「海賊に人助けをさせる気かい?」
「ダメ・・・ですか?」
「グスク国は海軍が強力でねぇ、海賊船で近付こうもんなら、あんた達も一緒に海の藻屑だよ。」
落胆するロイ。
「グスク国に行けりゃいいんだろう、いいケンカをさせてもらったし、一肌脱いでやるよ。」
ゆっくりと立ち上がったキサラが子分に叫ぶ。
「みんな!このケンカはあたしたちの負けだ!勝ったロイに免じて、客船を直して引き上げるよ!在庫の資材を持って来な!」
勝負を見ていた子分達。キサラの心意気をくみ取り迅速に動く。みるみる船は修復され、再び海を走れるようになった。
去って行く海賊船、見下ろすキサラ。手を振るロイに、ほんの少し微笑みを返した。




