船出
港町。城の北にある、大きく賑やかな町。今日は月に一度の交易船が来ており、町には様々な物があふれ、従来の店はもちろん、無数に立ち並ぶ商用テントも大変な人だかりで、大いに盛り上がっていた。
兵隊のような男に声をかけられる。近衛兵だ。街の警備と犯罪の取り締まりをしている。
「君、剣を所持しているが、歳はいくつだ?ライセンスは持っているのか?」
ロイはライセンスを見せ、近衛兵は笑顔で去った。
この世界には、古くから人類をおびやかす『魔物』の存在がある。このため人は15歳を超えていれば、簡単な手続きで武器を持ち歩く事が出来る。ロイとサシャは17歳。手続きもとっくに済んでおり、腰に剣をさしていても、ライセンスでパス出来る。
「すごい人!父さんの目撃者、見つかるかなぁ。」ロイはサシャに話しかけたつもりが、振り返ると姿が無い。慌てて周囲を見回す。
「ロイ、ロイー!」後ろの方からサシャの声。目を凝らすと、人混みに飲まれて右往左往しているサシャを見つけた。サシャは非常に小柄で、一度人混みではぐれると、たちまち飲まれて、流されてしまうのだ。
「サシャ!こっち!」
急いで追いつき、サシャの手を握りひきよせる。
「あ・・・ありがと・・・」
サシャは一瞬ロイの顔を見つめ、すぐにハッとなった。
「もうっ!これだから人混みはキライなのよ!」
ふくれるサシャをなだめ、やって来たのは近衛兵の詰め所。街をくまなく警備する彼らなら手掛かりが得られると思いついたのだ。
受け付けの近衛兵が声をかけてくれた。
「こんにちは!どうしました?」
「あのぅ、人を探してるんだけど・・・」
続けようとするロイをサシャはキッとにらむ。
「あ!す、すみません!人を探しているのですが、ご協力お願い出来ませんか?」
「お探しの方の特徴は?」
ロイはジュードのひたいに十字傷がある事、鮮やかな青の鎧をつけた騎士である事、数年前に行方不明になっている事を告げた。
「記録としては残念ながら残ってはいないが、君がお探しなのはジュード様ではないか?もしや君は息子さんかね?」
「はい!」
「私は数年前、ジュード様に良く似た男を見たよ。高名な方だから顔もよく知っていた。全身ローブをまとっていて、ひたいもバンダナで覆っていたが、顔立ちは非常に良く似ていた。城の密偵方にも伝えたよ。」
「その人の足取りは覚えてますか!教えてください!」
食いつくロイに、近衛兵はのけぞりながら答える。
「グ、グ、グスク国行きの船に乗ったよ。」
「ありがとうございます!」
二人は嬉しそうに顔を見合わせる。
今にも駆け出しそうな二人を近衛兵が制止した。
「待ちなさい!止めはしないが、大事なことを伝えておく。密偵方も何度もジュード様を追って行ったが、誰一人帰って来ないのだ。グスク国も近年、悪い噂を多く聞く。充分気をつけていくのだぞ!」
「わかりました。気を引きしめて行きます。」
ロイは近衛兵におじぎをし、船着き場へと急いだ。
王から支給された資金でチケットを買い、グスク行きの船で出航した時にはもう日は暮れていた。
客室でベッドに入ると、二人はすぐに眠りについた。




