旅立ち
二人が村人全員分の墓を用意し終えた頃、空には月と星が輝いていた。
そこへ、大勢の騎士達が様々な武器を手に現れた。
「くっ、遅かったか。」
騎士団の長らしき人物が舌を鳴らした。
その人物は、泥だらけの二人に深々と頭を下げた。
「私は王下騎士団長リカ、煙で異変に気付き馳せ参じたが、守ってやれなくてすまなかった。」
二人は騎士団長が女性であった事の驚きを飲み込み、黙っておじぎをした。
リカは辺りを見回し二人に言う。
「たった二人でこの墓を?良ければ我々にも、とむらいを手伝わせてくれまいか?」
「あ、ありがとう、ございます。」
リカは微笑んで部下に指示を出す。一糸乱れぬ統率で、とむらいの儀式を終える事が出来た。
「ロイとサシャ、だったな。王より生存者は城にお連れするよう言われている。ご同行願えるか?」
二人は黙ってうなづく。
「ありがとう。ではさっそく城に向かう。馬車を用意してあるから、今は少しでも休んでほしい。」
リカはそう言うときびすを返し、一団を率いて城を目指し出発した。
程なくして一団は城にたどり着いた。
二人は手厚く迎えられ、食事、風呂、衣服までも与えられた。これまでの生活と比べると、天と地ほどの差を感じる豪華さに、こわばってしまっていた。
寝室まで案内してくれた召使いが言う。
「王様が明日、君達とお話ししたいとの言伝がございました。今夜はお休みになって、明日に備えてくださいまし。」
召使いは部屋を出た。
二人はそれぞれベッドに横になった。
サシャがつぶやく。
「王様、あいつの事何か知らないかな?」
ロイが続く。
「知ってる気がする。」
そのまま二人は眠りに落ち、翌朝召使いの声で目覚めた。謁見の間に通された二人を、王は優しい眼差しで迎えた。
「ロイ、サシャ、守ってやれなくてすまなかった。」
王は二人に頭を下げる。慌てて止める二人。
「サシャ、心が苦しくなければ、此度の惨事の事、今一度聞かせてはくれぬか?」
サシャは自分が見たすべてを、余す事なく話した。
ふと、王はロイの剣に目をやる。そして、何かを決したかの様子で、二人に話し始めた。
「お主らには聞かせようか、遥か太古、人間はとある鉱物を生み出した。シグと呼ばれるその鉱物は、人間や生物に埋め込むと、神のごとき力を与えた。更にその鉱物の放つ力は、恐ろしい破壊をもたらしたんじゃ。そしてシグの存在は、やがて大きな災厄を巻き起こした。しかし一部の聡明な人間達の働きで、災厄は静まり、シグは封印を施された。」
息を飲む二人に王は続けた。
「ロイ、そなたの父ジュードも、母エタも、実はその封印の守り人なんじゃよ。そしてそなたの手にした剣、それはシグで出来た、シグの災厄と戦うための剣なんじゃ。剣は二本一対。もう一本はジュードが携えておる。ロイよ、そなたは災厄の守り人じゃ!父を追い、シグの災厄を止めるのじゃ!」
ロイの心に迷いはなかった。大いなる使命の重さを受け入れ、進む決意を固めていた。
「王様!全力を尽くします!」
サシャが割って入る。
「王様!私も手伝う!私も一緒に使命を背負います!」
王は微笑む。
「サシャよ、至高の神聖魔導士に見込まれたその力で、ロイを導いてくれ。」
二人は悲しみを振り切り、熱き志しで、旅立ちの決意を固めた。




