暗雲
グスク国の一連の騒動の後、当初の予定通り現国王は引退し、王位は息子に引き継がれた。しかし政治に携われる人材はワズ以外にいなかったため、ロイの母国、カントマムの王より大臣が使わされ、新国王が成人するまでの間、グスク国の政治を取り仕切ることとなった。海軍については、ワズと結託していた将校が解雇となり捕らえられ、先の海戦で受けた打撃の復旧資金などの問題も出て来たため当面活動休止となった。
「生まれ変わってくれ・・・」
船を出したキサラは甲板からグスク国を眺め呟いた。
「最果てか・・・場所は分かるんだけどねぇ。」
キサラは船長室にロイ達を招き、これからを話し合っていた。ロイはティーダから最初に聞いた最果ての事を話した。
「どうしたの?」
急に口ごもるキサラにロイが尋ねる。
「あそこはねぇ、普通に上陸出来ないのさ。」
「どういう事?」
「よほどの何かがあるんだろうねぇ、強力なバリアか結界みたいのが張られていてね、船がちょっとでもかすったりすりゃ、一瞬でオシャカなんだよ。」
「じゃあどうやって入れば・・・」
肩を落とすロイ。
「船で行けるところは全部行ってやるさ、情報を集めるしかないね。」
そこにノックの音。リゴの声だ。
「姉御!ロイさんの親父さんの足取りの情報が!」
「入んな!話しておくれ!」
リゴは入室して深い深呼吸をした。
「情報では、カントマムの遥か北、永久凍土のすぐ手前の山岳地帯付近、青い鎧に額に十字傷の騎士が山に入ったとの事、いで立ちから間違いないかと。」
「父さん・・・」
「なるほど・・・ロイの親父さんなら、最果てに入る方法も掴んでるかもしれない、追うかい?」
「もちろん追うよ!父さんに追いつきたい!」
「山に入ったなら行き先は永久凍土・・・断崖絶壁に囲まれて、陸から山越え以外の道がない。船で出来るだけ近づいて、あとは自分の足で行くしかないね。あの山越えは並みじゃないよ!険しい旅になるからハラをくくりな!」
ロイとサシャは深くうなづいた。
「しかし永久凍土・・・人が立ち入るにはあまりに危険な場所・・・一体何が。」
キサラは目を細めた。
その頃・・・
そこは常に暗雲が立ち込め、陽の光も通らない闇の大地。空気はよどみ、水はにごり、ありとあらゆる命の存在を拒むかのような世界『最果て』。
その中心にたたずむ、城とも塔ともつかない、奇妙な巨大建造物。
その中を、おぼつかない足取りで歩く者。
「く、少々見くびってたね、フフ、流石はティーダの認めた剣士、ティーダ、ツキシュ、お前達も後々、必ずこの手に。」
ユウ。全ての根源とおぼしき存在。ようやくたどり着いた目の前に、建造物に組み込まれたかのような、ちょうど植物の球根のような物体がある。
「ラムネ・・・」
ユウは物体につぶやき、すぐ近くの小部屋に入り、特殊な椅子に掛けた。椅子はぼんやりと光を放ち、ユウを包む。光はユウの再生力を倍増させる。核の傷も修復され、ユウは活力を取り戻して行く。
「私の動きに世界も気づいたか・・・なら・・・動いてもらうか・・・あの者達にも。」
小部屋から出たユウは別の部屋に向かった。そこにはちょうど人一人の大きさの、繭のような形状の物体が七つ。
「解放してやろう。」
ユウは物体のそばにある何かを色々と操作し始めた。
「必ず揃える・・・鍵を!」
ユウが操作を終えると、七つの物体は二つに開き、中から現れたのは、七人の機人。
「久しぶりね、ミブ、そしてゴゴ、カルナ、マコ、ザック、ゲイン、ヒイロ。」
ユウが七人に声を掛けた。ミブと呼ばれた銀髪の剣士風の男が言葉を返す。
「姉上、まさか蘇らせてくださるとは。」
「ミブ、そして我が友たち、力を貸して欲しい、あの男によって世界に散らばった鍵探しを。」
「姉上・・・未だに・・・承知した、皆は?」
ミブが振ると全員うなづいた。
巨大な力が今、動き始める。
世界にも少しずつ、災厄の気配に気付く者達が現れ始めていた。
「トーザ様、最果てから大きな力が・・・」
深い森の奥、ローブの女性に妖精が話しかけた。
「さらなる動き・・・モミィ、ナツ、キーン、カーム、一刻も早く、真の精霊の姿に目覚めておくれ・・・災厄から世界を守るんだよ。」
「シュウ様!」
「最果てから・・・」
巨大な玉座に座する巨大な体躯の老人に、二人の女性が語りかける。
「・・・ウム、巨大な波動、シノ、そしてミクよ、今こそ試練の時、そなたら姉妹は我ら竜の民の最後の希望、祠に向かい、試練を受けよ。そして我らの究極の力を見出すのだ、そして、災厄に立ち向かえ。」
「はい!必ずや!」
人、精霊、そして古よりひっそりと、強大な竜の力を持ち世界を見守って来た竜人。様々な命が、災厄の波動に呑まれていく・・・




