表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終わる日  作者: みき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/10

第7話

 その日付を、見てしまったのは、まったくの、不注意だった。


 日曜の、朝だった。


 彼の部屋で、わたしは、先に、目を覚ました。カーテンの隙間から、春の終わりの、まだ柔らかい光が、差していた。彼は、わたしの隣で、まだ、眠っていた。寝息が、規則正しくて、まつげが、長くて、口が、ほんの少し、開いていた。わたしは、その寝顔が、好きで、しばらく、ぼんやり、眺めていた。しあわせだった。たぶん、人生で、いちばん、何も、こわくなかった、朝だ。


 だから、油断した。


 彼の寝顔を、見ているうちに、視線が、自然と、上に、ずれた。


 彼の頭の、すぐ上。


 そこに、日付が、浮かんでいた。


 あと、三日。


 わたしは、息を、止めた。


 心臓が、どん、と、一回だけ、大きく、鳴って、それから、おかしいくらい、静かに、なった。耳の奥で、自分の血の流れる音だけが、聞こえた。あと、三日。今日を、入れて、三日。その日付の意味を、わたしは、誰よりも、よく、知っている。祖母の上に、見たのと、同じ種類の。近い、近すぎる、終わりの、日付。


 彼は、何も知らずに、眠っていた。


 あと三日で、終わるなんて、何も知らずに、わたしの隣で、規則正しく、寝息を、立てていた。


 わたしは、声を上げそうになるのを、両手で、口を押さえて、こらえた。涙が、出た。理由を、彼が起きたときに、どう説明すればいいのか、わからなかった。何も、説明できない。説明したところで、信じてもらえるわけが、ない。それに――もし、信じてもらえたとして。それで、何が、変わる?


 知っていることと、変えられることは、違う。


 あの夏から、それは、ずっと、変わらない。


 でも。


 わたしは、布団の中で、震えながら、決めた。


 今度こそ。


 今度こそは、見ているだけには、ならない。


 祖母のときの、何もしなかった自分を、十六年間、許せずに、きたのだから。逃げて、自分で終わらせてしまった、美月のことを、後悔し続けて、きたのだから。今度こそ。わたしは、あがく。あがいて、あがいて、この、三日を、変えてみせる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ