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激闘を終えて


 翌日、僕と暁音さんはヨルズの街のギルドに着いた。

 ギルドには昨日と同じく観光客が大勢いて、英雄トールの像をあちらこちらから眺めている。

 昨日までは僕もその中の一人だったが、二日目となると流石に見慣れてしまった。

 英雄の横を僕は素通りするが、流石に"こっちの英雄"の前は素通りできない。

 見つけてすぐに僕は声をかけた。


「あ、えっと……昨日はありがとうございました。めちゃくちゃ、尊敬してます」


 なんかぎこちない挨拶にはなったが、大剣の彼はそれを受け止めて

 

「お、おう。こっちこそサンキュな」


 と、返してくれた。

 先陣を切ってくれた彼がいなければ、皆があれだけの健闘を繰り広げることはできなかっただろう。

 あの戦いのMVP。

 おそらくこの街のギルドで名を上げるのは、僕以上に彼だろう。



 酒場エリアに着いてすぐ、僕と暁音さんは違和感があった。

 周囲が僕らを噂して、目線がこっちに向いている。

 どうやら噂の人になることには成功したみたいだ。

 あとは……。



「どっちか、だよな」



 暁音さんと相談して、とりあえず二、三億の報酬金の相手を受注する。

 依頼書の移しを受け取って酒場エリアに戻り、ボードにそれを貼り付ける。

 条件は普段と変わらず山分け。

 昨日と違うのは、テレポーターという役割をアピールする一文を書いたことだ。

 

 貼ってすぐ、ボードの前には人集りが。

 おそらく僕が貼ったことで出来たものだろう。


「人気みたいだよ」

「だね。あとは吉と出るか凶と出るか……」


 固唾を呑んで見守ると、人集りから何人か来る。


「ユーリさんって、昨日アジ・ダハーカに挑んだ、あの」

「えっと、はい。あのです」

「そう、ですか……」


 来た人たちはそれだけを聞いて、立ち去って行った。

 一体何がしたいのだろうか、野次馬ってやつなのかな。


 それからしばらく、来るのは昨日の事を聞きに来る人ばかり。

 ちゃんと噂は広まっているみたいで、昨日のことはギルド内で話題になっているよう。

 でも、一緒にパーティを組もうとはならない。


「まさか……悪い方向に作用したんじゃ」

「その可能性はありそうだね。そうなったら別の街にでも行こう。また作戦を考えて、出直すだけだよ」


 暁音さんの言葉に励まされ、何とか気を保つ。

 その間来るのは、やはり野次馬ばかり。

 うーん、これは……。


「失敗、か……」


 諦めて帰ろうか、と話していると。


「待ってくれ」


 後ろから声が。

 僕らよりはるか高い身長の頼りがいのあるガタイ。

 それは昨日大変世話になった。


「ファズさん」

「二人とも、昨日はお疲れだったな」

「それはこっちのセリフですよ。お疲れ様でした。そして盾役、ありがとうございました」

「それはいいんだ。前置きはこの辺にしておいて、ユーリは、名を上げるためにアジ・ダハーカに戦いに挑んだんだろ。おそらく、その反応がイマイチで、落胆してるはずだ」

「なっ……!?」


 なんと、お見通しでしたか。


「やっぱり危険な戦いにみんなを巻き込んだのが、悪印象だったのかな」

「そういう層も一定数はいるだろう。でも、昨日の活躍を目にしたパーティメンバーでユーリのことを悪く言うやつは、ほとんどいないはずだ。文字通り燃え尽きるまで戦ったヤツを、一体誰が責められるんだ」

「えっと、じゃあ……悪い噂は」

「ほぼないって言っていいだろう」


 そっか……。

 とりあえずは良かった。


「でもじゃあ、なんでパーティメンバーが集まらないんですか」


 悪い噂は無く、むしろ良い方向に流れてくれてるみたい。

 それなのに、パーティを組みたがらない理由。


「それはだな。まだみんな、分からないんだ。二人の実力がどれ程のものなのか」

「え?」

「昨日は二人とも八面六臂の大活躍だった。そのハイエーテルの性能ってのも十分体感できた。でも、それ以外の実力、二人の基礎的なスペックってのがまだ分からない」


 基礎的なスペック……?

 

「なるほど……。昨日は私達はほとんど指示役だったから攻撃には参加してなかった。それに大人数だったから、ほとんど動きもしなかった。つまり、そういう昨日見られなかった、部分。それが分からないから、みんな参加を拒んでると」

「司令塔としての動きは満点だ。でも、駒としての動きができるかどうか。そこを皆は不安に思ってる。普通規模のパーティを組んだ時に、しっかり戦闘に関与出来るかどうか。それが不安で、踏み出せないんだろう」


 なるほど。

 駒としての動きが出来るか、ね。


「駒、出来ます!」

「口ではなんとでも言えるだろう」

「うぐっ……」


 まあそれもそうだ。

 でもじゃあ、どうすれば。


「誰も募集に入ってくれないから、個人技をアピールする場もない。かと言って昨日と同じことをすれば、また指示役になってしまうな……」


 駒として動けることをアピールするには、駒として動けることを知らしめなきゃならなくて、でもそのためには駒として動けることをアピールしなきゃいけなくて……。


「無限ループだな……」


 どうすればいいのか、この状況を打開出来る一手は。


「駒として動けるかどうか、アピールする場が二人には無い。だから、募集に人が来ないのだろう?」

「はい……そうです」

「だから、俺が見よう」

「……え?」


 


「俺が見定める。駒として動けるか否かをな」




――――――――――――――――――――――


 木々の生い茂る森の中央。

 少し開けた広場の上空に、奴は羽を広げている。


「俺が引きつける。二人は、魔法の備えを!!!」


 ファズさんの指示で、僕らは後衛から魔法を貯める。

 手袋型の魔導具にエーテルを流し込み、エーテルの初期発動を感知する。

 相手は大型、ケツァルコアトルなる翼竜だ。

 飛んで動いてる相手目掛けて当てられるほど、今の僕の魔法のエイムは良くはない。

 加えて、速射も連射も自信はない。

 せっかく隙を作ってくれて貯められたエーテルだ、ここぞというタイミングを狙って撃ち込まないと。


真紅の連弾ルージュ・フレイ・モア!!!」


 暁音さんの五連射は、外したものの奴の尾翼を掠めていた。

 動きながらの速射と連射ができるからこそ成せる技だ。


電光線(ライトニング)……」


 僕も狙いを定めて放とうとするが、飛び回る奴が相手だとどうにも当たる気がしない。

 雷の魔法だから弾速はとても速い。

 だからFPSのゲームとかで必要な弾速を考慮に入れた偏差撃ちの必要は無い。

 でも、速射がまだ不安定な僕では、魔法を意識して放つまでに少しばかり時間がかかる。

 例を出すなら、ボタンを押してから二、三秒して弾が出るようなそんなイメージ。

 そんな状態だと、動く相手を狙って撃つなんてことは夢のまた夢。

 右に左に腕を動かし相手を追うが、結局当たる確信が持てずに撃てない。


「……ちっ」


 不甲斐ない自分に嫌気が差す。

 これじゃあちっとも役に立ててないじゃないか。


「強襲が来るぞ!」


 飛び上がったケツァルコアトルが、僕ら目掛けて突撃してくる。

 当たれば一撃KOの大技だ、流石に魔法の構えを一時中断する。

 そして誰にターゲットが向いててもいいように、ファズさんの周辺に全力で駆ける。

 

「狙いは、ユーリか!」


 僕目掛け突撃してくるのを察知した彼は、僕の真ん前に立って上空に向けて大盾を構える。


 ドンッ!!!


 地面が抉れる程の威力だった。

 奴の全体重と落下の加速度が乗った何より重たい攻撃。

 絶望感すらあったその強襲を、彼はなんと盾一つで防ぎきった。

 全身全霊の攻撃を受け止められたケツァルコアトル。

 その瞬間、明確な隙が生まれる。


「今だ!!!」


焔色の真紅(フルフレイ・ルージュ)!!!」


 暁音さんの放つ豪火球。

 一人くらい平気で飲み込めるサイズのその火球が、奴の側面に勢いのまま衝突する。

 その衝撃で体勢が崩れ、地面に薙ぎ倒される奴。

 藻掻くように足をばたつかせて、完全に無防備な状態に。


 隙だらけのケツァルコアトル。

 自慢の羽を地面に叩きつけ、崩れた体勢ながらに抵抗する。

 だがここまで追い詰めてしまえば、あとは狩りだ。

 動けずにいる奴をめがけ僕は放つ。


 

「……っ!大放電(サンダーバースト)!!!」



 一撃入れてしまえば、あとは少しずつ弱っていく相手に魔法を浴びせ続けるだけだ。

 勝ちの決まった戦いの中、僕は一人思う。

 自分はまだまだなんだな、と。



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