アジ・ダハーカ 終
後日談、というか今回のオチ。
文字の通り燃え尽きた僕は、あのまま龍の攻撃で死ぬ……ところだったが、暁音さんの代償変換が間に合ってどうにか生き残った。
僕の意識は飛んだので全部聞いた話にはなるが、あの後暁音さんの手によって百人あまりの大パーティは無事にヨルズの街へテレポート出来た。
全員、生きて帰れたのだ。
アジ・ダハーカを前にして、全員が全力を出し切って、生還。
当初の目的は無事達成された。
百三十四人中、負傷者は一名。
全身やけどの大バカ者、紛れもない僕のことだ。
他に負傷者は奇跡的に居ない。
光弾や、レーザーを何度も食らってこの戦績なのは、素直に喜べる所だろう。
しっかり受け止めてくれた前衛部隊には感謝してもしきれない。
まあ、全くのノーダメだったかと言われればそんなことは無い。
テレポート代、往復マイナス六千万
代償消費代、マイナス五千万
前衛部隊の盾の摩耗による交換代、マイナス九千万
報酬金、プラスゼロ
差し引き、マイナス二億G。
全て、僕と暁音さんからの出費になる。
まあ、初めから赤字のつもりで動いてたとはいえ、二億マイナスは辛いな。
僕の意識が戻ったのは、テレポートから半日後。
ヨルズの街の宿屋で目が覚めた僕の前にいたのは、いつもと変わらずの笑顔を浮かべる少女、暁音さん。
「あ、やっと起きた」
「おはよう……今何時?」
「だいたい夜だよ。もう一眠りしてちょうどいいくらいのね」
「そっか」
身体を起こすと、皮膚がまだ痛む。
「まだ安静にしてないと。いくらエーテル器官が高速で自然治癒してくれると言っても、悠里くんのは酷かったんだから」
「そんなにだったの……?」
「ええ。燃えカスもいいとこ。全く、なんであんな行動を」
「だって、燃えてる方が強いかなって」
「単純だね。気持ちは分からなくは無いけど、実行しようとする人なんていないよ。あんまり心配させないでよね」
ふああ、と彼女はあくびをした。
こんな夜まで起きててくれたのは、僕を心配してってことだよな。
申し訳ないな。
「明日からはこの街でも依頼に挑めるかな」
「さあ? 悠里くんの身体の治り具合と、あとはみんなの反応次第。アジ・ダハーカを前に、勇敢にも戦ったって思われてくれれば行けそうだけど、逃げ帰ってきたとか思われちゃえば状況は変わらず。もうこうなったら運否天賦ね」
「トータルマイナスで、やっと運否天賦なのか……」
今思えば、賭けにしては不確定要素が多かったな。
完璧とは程遠い作戦だった。
「やっぱり、僕は参謀には向かないな」
「なんで? 少なくとも私には、この状況をどうにかする作戦なんて思いつかなかったもの。十分、参謀名乗っていいんじゃない?」
「でも、穴だらけだったしさ」
「ダメでもともと。私たちはどん底からスタートしてるんだよ。賭けに挑めるってだけで、十分前進してるじゃない」
「そう言われれば、そうかもだけど……」
「それに、賭けに負けても、また挑み直せばいいんだよ」
「挑み直す……?」
「どれだけ失敗してどん底に落ちたって、またやり直せる。捨てたって、拾い直せば良い。そう教えてくれたのは悠里くんだよ」
「……え、言ったっけ。そんなこと」
「言ってない。でも、教えてくれた」
どういうこと……だ?
「悠里くん、いっぱい失敗しようね。躓いて転んで、それでも立って前を向こう。私はね、君と生きたいよ。だから、何度だって賭けに挑もう、ね」
夜の中、ロウソクの光だけが明かりの部屋で、彼女は、僕に背を向けてそんなことを言う。
何度だって賭けに挑もう、か。
いい言葉だな。
「そうだね」
今日がダメでも、明日の自分は変えられる。
そんな言葉を思い出して、僕はもう一度眠りについた。




