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魔導具選び 2

「まあオーソドックスは杖だな。分かりやすく杖の先端とかに魔導具を付けてそこから射出する。シンプルな分、誤操作とかが起こりにくくて、初心者魔導具使いならこれを選ぶ」

「杖か……」


 まあ、RPGとかで見る魔法使いもみんな杖を手に戦ってるしな。

 身長ないくらいの杖、手に持って振り回してみるだけでテンション上がってしまうな。


「杖なら魔法を射出することだけに特化してるから、どんなベースをはめ込んでも、ある程度は作用してくれるさ」

「杖以外ってあるんですか」

「ある。ここら辺からは変わり種。初心者には向かないが、構成を考えれば他にない強力なものになる。例えば魔法剣」


 そう言って持ってきた武器の中から取り出したのは、一本の剣。


「こいつには、火炎のベースがはめ込まれてる。あとはわかるな」

「炎を纏わせる……ですね!?」

「そうだ。人間と同じ再生系のエーテル器官を持つ敵には、炎を纏った斬撃は跡になりやすく有効だ。纏わせる以外にも、炎で刀身を延長するなんて芸当や、剣を地面に突き刺し地中にいる敵を熱するといった作戦も建てられる」


 なるほど、すごいな……!

 魔法剣、色々できそうでロマンがある。

 

「盾を魔導具にする守備構成でもいい。こいつは、クリスタルタートルのベースを盾にはめ込んでる。そいつの効果は硬化結晶の生成だ。盾にはめ込むことで、表層に結晶の膜を貼ることができ、盾自体の硬度がより増す」


 地味だけど、そういう構成はありだな……。


 えー? 正直すっごい悩むんだけど……。

 武具とベースの組み合わせで無限通りあるじゃん。

 これは、何時間でも悩めるやつだなぁ。

 

 クラフタさんは他にも色々説明してくれた。

 麻痺毒の短剣とか、氷で矢を作る弓とか、王都の研究機関が開発した人工エーテルベースによるバリアーシールドなんてものも。

 他にも知り合いが持ってたので言うなら、エリッサさんが持ってた、杖と槍の混合武器みたいな物もあるし、ルフローヴさんの刀に雷を纏ってるのも憧れるよな。


 うーん、どの組み合わせも個性と魅力があって、選びきれないな。


「暁音さん、どうしよっかぁ……?」


 ニマニマしながら問いかける僕は、とても他所にはお見せできないほど浮かれていた。

 鍵をかけてくれたのはこの為だったのか、と一人で勝手に納得してしまうほどの表情は、何だか幸せそうだね、と暁音さんにいわれるくらいだ。


「いろんな組み合わせに心躍るのは分かるけど、悠里くん、大切なことを忘れないでね」

「大切なこと……なんかあったっけ」

「実用性。どれだけかっこよくても悠里くんが使いこなせるものじゃなきゃ意味ないってこと。訓練もなしに槍だの弓だのは無理でしょ」

「まあ、それもそっか……」


 まあ確かにその通りだな。

 使えなきゃ宝の持ち腐れだもんなぁ。

 ってことは選択肢は杖か、使えて短剣とかになるのか。

 僕が今すぐに使えて、なおかつ効果的な組み合わせ。

 うーん、中々難しいなぁ……。


「そして重大なことがもう一つだけ。悠里くんはさ、魔導具使ったのって二級の試験の時くらいだよね」

「まあそうだね」


 二級の実技試験の対策で買った霜の魔導具を何度か使ったのと、あとはエリッサさんから灯火の魔導具を借りたこともあったっけ。


「難なく突破してるし、多分悠里くんは魔導具の扱いに関しては飲み込みが早いんだと思う。このまま杖とか買っても多分半年あればマスターできるんじゃないかな」

「そりゃどうも……って、半年?」


 杖を買ってマスターできるのが、半年だって。


「マスターってどのくらいを指すの?」

「狙ったところに魔法が打ち出せるってくらいじゃない」

「それまでに、半年なの?」

「うん、多分ね」


 杖を使って狙ったところに魔法を出す、それだけの操作に半年かかる……。


「なんでさ。杖になるとそんなに変わるものなの?」


 これまで魔導具を使って魔法を打ったことは何度か。

 その度、狙った通りに打ててたし、杖になったくらいでそこまで変わるとは思えないが……。


「それについては俺から説明しようか」

「クラフタさん……」

「多分お前さんが今まで使ってきたのは、肌身からあまり離さないタイプの魔導具なんだと思う。首からぶら下げたり、アクセサリーみたいに腰から提げたり」

「ああ、はい。そうです」

「そこら辺の魔導具は、確かに魔法が出やすい。理由は、お前さんの身体に密着してるからだ」

「どういうことです?」

「試験勉強でエーテル回路ってのを学んだだろ。体内のエーテルがひとつなぎになって巡回してるってアレだ。あの回路の出発点は、お前の体内にあるエーテル器官だ。あそこからエーテルが流れ、傷の回復だの魔法だのに変換されていく。魔導具の原理っていうのは、エーテルが流されて初めてそのエーテルを炎だの水だのに変換するって寸法だ。つまり、生きたエーテル器官からエーテルが流されないと効力を発揮できないんだよ」


 ここまでの説明は何となく理解できてる。

 魔導具に僕のエーテル器官からエーテルを流し込むことで、その魔導具の持つ特色が出せる。

 大丈夫、授業で教わった通りだ。


「生きたエーテル器官ってのは、お前さんの持ってるここだ。ここからエーテルが流れ出すって訳だが、ここから離れれば離れるほど、エーテル回路ってのは形成しにくくなる。エーテル回路ってのは簡単に延長できるもんじゃない。エーテル器官から送り出す加速度の持つエネルギーの分だけしか、エーテルは巡回していかない。普通、エーテル回路ってのは身体の中を巡るだけだから、それ以上の加速度ってのは持たないんだよ。自然に作られる回路は最大でも身体の中。それより外の範囲には、意識的に回路を延長させる訓練を積むしかないんだ」


 自然に作られるエーテル回路は、あくまで体内を巡るだけで、それ以上は訓練しないと伸びていかない。

 つまり、身体の外にある魔導具を経由する新しい回路は、それ用の訓練を積まないと形成できないってこと。

 だから、肌に近い位置の魔導具は魔法が出やすいってことか。

 

「説明が分かりにくけりゃこれだけ覚えておけばいい。お前さんのエーテル器官から魔導具の距離が離れれば離れるだけ、魔法を出すのが難しくなるってことだ」

「なるほど……じゃあ杖になると、ベースが付いてる先端から持ち手の分だけの回路を自分で形成しなきゃいけないから、その訓練のために半年かかると」

「エーテルの慎重な操作が必要になってくるからな。そのくらいは見積もっておくべきだ」


 そうなると、一つ疑問が浮かぶ。

 

「じゃあなんでわざわざ杖や剣を魔導具にするんですか。全部肌身離さず持っておけば、発動しやすくて済むんじゃ」


 エーテル器官からの距離が近い方が魔法が出やすいのなら、わざわざ離して持つ必要も無いと思うが。


「そうだな。初心者のうちは特にそう思うだろう。だが、発動のしやすさってのは、一見メリットに見えるが、デメリットにもなるんだよ」

「デメリット……?」

「暴発という事故だ。意識してない時にエーテル器官からエーテルが流れ、意図しない魔法の発動が起こる。二級、三級の魔導具ならばさほど警戒する必要も無いが、一級クラスになると暴発は災害を産む。まあ、余程のことがなければ起こらないが、警戒はしておかなければならない事象だ」


 なるほど。

 そういうことも考えてのことなのか。


「あとは、魔導具の複数所持をした場合だな。何でもかんでも発動すると、困るだろ。意識的に使い分けられるよう、ある程度距離を保つことで切り替えができるようにしてるんだ。まあ、世の中には十数個を肌身離さず同時持ちしながら使い分ける化け物みたいなやつもいるみたいだが」


 さて、それを踏まえてだ。


「僕は、何を選べばいいんだ」


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