VS 試験 2
「始めてください」
ペンを握り、今問題と向き合う。
これまでとさほど変化のない形式に安心しながら、全体に目を通し時間配分を意識しながら上から解く。
少ない計算、典型的な問題は早々に解き終わり、いよいよ初見の問題たちへ。
一筋縄ではいかない設定の問題ばかりだが、一度冷静に考えれば勝機はあるはずだ。
太刀打ちできないほどじゃない。
これまでの経験がどうにか僕を動かしている。
簡単には解けずともたった一手ひらめけば、そんな問題ばかり。
一度詰まったら、別の問題へ。
また詰まれば、元の問題へ。
最後の一秒まで、思考はやめるつもりはない。
考え悩み、そこから思いついた手を試す。
その繰り返し。
問題と僕との実力差は、丁度拮抗しているくらいだろう。
出題側との全力のぶつかり合い、出された問題を全身全霊で受け止めてる。
とても解なんてあるようには思えないが、糸口があると信じ、ひたすらに脳と頭を動かす。
必殺技、なんてものはありはしない。
己だけが武器といえる戦場で、勝つための頼りはこれまでの研鑽だけだ。
行く手を阻む状況設定と形式を前に、僕がするのは無数回のトライ。
鍛えぬいた一撃が問題に届くまで、何度だって何回だって。
これまでに思い浮かぶ手は全て試したが、それでも解には届かない。
時間はまだある、今ここで必要なのは諦めてしまわないだけの根性。
ここが正念場、堪えた末の勝利を掴む。
こう手詰まりした時には、暁音さんが言っていたことを思い出す。
『これまで蓄えた知識を総動員して、何が使えそうか吟味する。もしくは、全て捨て去ることも必要かもしれない』
知識の総動員は言わずもがな。
でも、それでも問題が解けないのなら、全てを捨て去る覚悟がいる。
染み付いた常識すら覆す発想の転換。
これまで学んできた中で得たセオリーを捨て去り、この身一つで戦う覚悟。
もう信じられるものは、己の発想力だけになった。
落ち着け冷静になれ、そう頭の中で語りかける。
問題である以上、そこに必ず答えはある。
決して解けないものじゃないと、僕でも解けると仮定しろ。
緊張はもう居ない。
興奮がアドレナリンが止まない。
この1VS1を制するのは、自分だと信じて止まない。
挑んだ数が傷になり、解けないかもと不安を煽るが、そんな痛みに感情を預けている暇は無い。
今は目の前の問題に集中し続けろ。
止めの合図がかかるまで、僕のペンが止まることは無かった。
幾度の挑戦のうち、何発かは掠り、トドメまで刺せたものも何問か。
解答用紙は回収され、激闘の跡は問題用紙に残るのみに。
あとは結果を待つだけだ。




