会合 3
「なるほど。精神的なところまでカバーしてると」
「ゼラさんこそ。一人の先生の域を超えて、悠里くんを助けてくれてるみたいで」
「……話、終わった?」
「あ、ごめん悠里くん。忘れてた」
かれこれ体感三十分くらい話していたので、僕の中断で話を終わらせた。
「すまないな。つい時間を忘れて話し込んでしまった」
「ゼラさんと会話してると、つい好奇心がくすぐられるっていうか、話してて楽しいっていうか」
「そうですか。実は私も久々にこんな感覚になれたと、内心喜んでるところでして」
へへへへ……って、どこかの漫才師みたいに笑う彼女たちを見て、僕は何を言えばいいのだろう。
暁音さんに気の合う友達が出来て喜ぶべきなのか、普段いつも一緒にいる僕が暁音さんの好奇心を満たしてあげられないことを悔やむべきなのか。
「おっと、すまない。もうそろそろ時間だ。暁音さん、今日は楽しい話をありがとうございました」
ゼラさんは、暁音さんと握手を交わす。
しっかりと握るその手を見るに、二人とも心から楽しめたのだろう。
「そうだ、ユーリ」
別れ際になって、急にこっちに話が振られる。
「もうすぐ私の一年の研修が終わる。配属先はまだ不明だが、この街である確率はかなり低いと思う」
「え?」
前置きのない突然の話に、いまいち内容が呑み込めない。
「えっと、研修ってのは」
「王都直属護衛隊は、試験に合格してから約一年研修を行うんだ。王国領土内の実情を知るため、国の運営する業務を一年実際に行う。私が師として教壇に立っていたのがそれだ」
「じゃあその研修ってのが終わるってことは、いよいよ直属護衛隊として活動していくってことですよね」
「そういう事になるな」
「めでたい事じゃないですか! おめでとうございます、ゼラさん!」
「ああ、まあ、そうだな。……素直に受けとっておこうか、ありがとう」
いよいよゼラさんが直属護衛隊に、か。
確かエリッサさんの再来なんて呼ばれてたくらいだし、直属護衛隊もゼラさんが入れば百人力だろう。
数年もすれば、独立部隊とか任されるのかな。
なんにせよめでたいな。
「で、配属先が不明で、ってのは」
「その事なんだが、これから私がどこの部隊に配属されるかも不明なんだ。だから、おそらくになるがこの街ではないところに移動になる可能性がきわめて高い」
「……ああ、じゃあ」
「そういうことだ」
配属される部隊がこの街のじゃなかったら、ゼラさんとはお別れってこと。
「そう悲しい顔をするな、今生の別れではない」
今生の別れではないと言うが、この街以外に配属されればほとんど会う機会は無いし、何より僕も彼女もこれから忙しくなる。
さらに計画通りいけば、僕はこの世界から居なくなる。
せっかく暁音さんとも仲良くなったってのに。
別れってのは、中々辛いな。
新しい出会いがあれば、同時に別れもある。
お互い変わっていく時に、湿っぽいのは似合わないな。
「そう、ですよね」
せめて、明るくだ。
「直属護衛隊、頑張ってください」
「ユーリも試験、合格するんだぞ」
今日が最後になる訳では無いが、僕らは固く握手を交わす。
新しい世界に飛び込んでいく僕らは、不安と期待に塗れてる。
先の見えないこれからを、憂いて嘆くこともある。
でも確かなのは、これまで。
積み重ねてきたこれまでは、決してなくなるものではない。
どんな思い出だとしても、消えずに必ずの糧になる。
進むんだ。
これまでを胸に、これからを。
そして、それからしばらく。
「いよいよ試験、十日前だよ」




