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会合


 それは、図書館で勉強していた時のこと。


「応用範囲もとりあえず一周終わったね」

「これでようやくすべての範囲を網羅したことになるわけだ」

「ここからは、苦手なところを潰すのと、初見の問題になるべく多く触れること。脇が甘いのは否めないから、対策していこう!」

「複雑な回路が未だに理解しきれてないから、まずはそこからかな」


 苦手なところは言わずもがな、対策していく必要あり。

 初見の問題は思考力を鍛えるため。

 テンプレートだけ解けてもしょうがない、本番で出てくるのは全くの初見問題ばかりなのだから。


 エーテル回路の過去問を暁音さんに引っ張ってきてもらって、それを解く。

 まずは問題設定を頭に入れて……。


「抵抗が四つで、位置が……ってああ。これは、新しく図を書かなきゃだな」


 複雑な回路は、自分で図を書かなきゃ分からなくなる。

 枝分かれした配線は、それぞれ抵抗の値もバラバラで、どっちにどれくらいのエーテルが流れているのか、ぱっと見ただけじゃ判断できないほど。

 八の字に繋がれたこの図だと、抵抗の値で流れる向きすら変わってしまう。

 問題によっては、抵抗の位置を入れ替えたりするからすぐに混乱してしまうんだよな。

 一応暗記でも解けるらしいんだけど、暁音さんいわく、自分の操作が分かってない状態で行う暗記が一番危険だ、との事なので僕はまだ一からエーテルの向きを調べながら解いてる。

 やってるうちに自然と覚えるのがベストだと言ってたから、僕もその領域に到れるよう今は研鑽を積む段階。

 色々難しいことを言ったが、要は今はまだ訓練中ということだ。



 


「……何問か解いたけど、繋げ方を少し変えるだけで全く別物になるから恐ろしいな」

「でも、やること自体は全部基本的な操作の積み重ねだよ。だから、落ち着いてやれば出来るはず。あとは、どのタイミングでどれを使うかを瞬時に判断出来ればかな。脳で深く考えずとも、身体が勝手に動くくらいになればベストよね」

「身体がかってにって、極意か何か?」


 相手の攻撃を身体がかってに全部自動で避けますみたいな……。

 

「冗談で言ってるわけじゃないよ。問題を解く時に割ける脳のリソースは、残念ながら限られてるの。問題理解に何パーセント、計算に何パーセント、思考に何パーセントって。できることなら、ほとんどを思考に割きたいよね。だから、計算とかパターン化されてるような簡単な操作とかは、脳でなるべく考えずとも出来るようになって欲しいのよ。それが、身体がかってにってことの意味」

「理解はできたけど、そんなことって出来るもんなの?」

「悠里くんだって、お箸でご飯食べられるでしょ。齢三つの頃なんて、片手に棒二本で何かを掴むなんて高等技術をマスターするために色々、試行錯誤してたはず。それがたくさんの修練を積んで、今じゃ特に意識せずとも身体の一部みたいに扱えてる。計算でも一緒、四則演算とか簡単な計算、操作は自然に」

「じゃあ、具体的にはどうしたら」

「近道は無いよ。だから、たくさん演習あるのみ。いっぱい考えて、無数に傷ついて、自然と身体が動くまで。頑張って!」


 近道は無い、ね。

 無数に傷つけって、笑顔ですっごい厳しいこと言うんだから。

 まあ、でもやるしかないってことだよな。

 

「よし、もうひと頑張りっ」


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