冒険者ギルド 2
実感を確かに、僕は感動を味わう。
異世界に来てまず目指す場所、遠回りにはなったけどやっと訪れることが出来た。
待たされた分、感動も一入。
中々上手くは行かない異世界生活だったけど、ようやくスタートラインに立てたような、全てが報われたかのような、今はそんな気分だ。
「さて、感極まってるのはその辺にしてもらって。悠里くん、冒険者登録しよっか」
「いいの!?」
感涙……。
ついに僕も冒険者に。
「なんで泣くのさぁ……」
暁音さんに押されるがまま、僕はギルドの受付の方に。
「こんにちは」
「はい、こんにちは! 冒険者ギルドへようこそ」
「すげえ、本物の受付嬢だぁ……」
一挙手一投足に感動してしまう僕に苦笑いしつつ、暁音さんは手続きを進めてくれる。
「冒険者登録をしたいんですけど」
「かしこまりました。登録されるのはどちら様ですか?」
「あっはい、僕」
「と、私です」
ん?
「私って……暁音さんも冒険者するの!?」
「えー? だめぇ?」
「いや、ダメとかじゃないけど。多分危ないよ? 危険がたくさんというか、困難ばかりというか」
冒険者を甘く見ているのか、軽口でそんなことを言うもんだから、僕の口からあれこれ言葉が。
だって、冒険者って魔物やドラゴンと戦うって事だ。
そんな危険を伴う職に暁音さんを巻き込むなんて。
「ともかくやめた方が……」
「えぇー。だって私が手伝わないと、時間足りないのに」
ん?
「どういうこと?」
「だから、悠里くん一人の稼ぎじゃ、250億稼ぎ切る前に寿命が来て死んじゃうってことだよ」
「え!?」
状況がイマイチ呑み込めていないが、要するに……。
「じゃあ250億を1年で稼ぐ計画って、元から暁音さんの手伝いありきで建てられたものだったってこと!?」
「そう! 理解が早くて助かるわ」
僕らが建てた計画は、二年半ある寿命の内、一年と三ヶ月で魔導具の免許を取って、一年で250億を稼ぐ、そして三ヶ月分のを寿命を残して現世に戻るというものだった。
その計画の内、一年で250億稼ぐという部分に関しては暁音さんの計算頼りだったので詳しく聞いていなかったが、僕一人で250億稼ぐのではなく、初めから、暁音さんと僕で合わせて250億稼ぐという計画だったらしい。
「二人でやれば、報酬二倍! ね、もしかしたら早く帰れるかもだし、私を連れていくのはお得だよ」
「お得とかじゃなくて……さ」
いくら稼げる職業とはいえ一人、一年で250億ってのは無理があるのか。
僕と暁音さん、二人分の稼ぎでようやくスタートラインに立てる。
「否定出来る理由がなくなっちゃったなぁ……」
「ふふっ、じゃあ決まりってことで」
暁音さんは、書類に僕とそして自分の名前を、慣れた異世界語で書き進めて行った。
「はい、ありがとうございます。では、お二人は当ギルド登録の冒険者になりました」
「え、もう?」
「はい。もうです」
書類作成は割とスムーズに進み、あっという間に僕らは冒険者ということに。
なった、という実感は無いが、受付嬢のお姉さんがそう言うので間違いは無いのだろう。
「ではここから、冒険者となられたお二人に、私の方から簡単なご説明を。当ギルド、龍狩りの旗印は、主にボスモンスター討伐を中心とした冒険者ギルド。依頼者から寄せられる依頼の内、ボスに分類されたものを多く扱っています」
ボスモンスター中心のギルド……響きがいいな。
「その性質上、難易度は比較的高く、推奨所属クラスはB以上となっています」
「所属クラスってのは」
「はい、下位から順に、E、D、C、B、A、Sの六段階による階級分けになります。冒険者各個人にそれぞれクラスが与えられ、実績や活躍に応じて上下していきます。また、依頼にも個別に設定されますので、指標のように扱っていただくことも可能です」
俗に言う、ランクだ。
SSSランクのパーティを追放されて〜みたいなやつの、あれだ。
「冒険者様には、自ら依頼を選んでいただき、討伐対象の元へ向かっていただくことになります。無事討伐達成いたしましたら、討伐報告書を作成のもと、当ギルドまでお戻りください。その後、報告書を元に現場に調査員を派遣し、こちらの方で討伐が確認できましたら依頼達成となります」
システムはよくある感じの、依頼受注型。
シンプルな分、分かりやすくて助かるな。
「討伐の際、パーティを組んでいただくことは自由ですが、報酬に関しましてはこちらの方では一括のお渡しになりますので、分配等はご自身でお願いします」
報酬問題ってのは、ファンタジーだと有耶無耶にされがちな部分だが、僕らにとっては一番重要なところと言っても過言では無い。
分配は自分で、か。
活躍したからもっと寄越せみたいなことがありそうで今から若干怖いが、こういうのもまあ醍醐味のひとつではあるんだろう。
「最後にはなりますが、ギルドは負傷、および死亡責任を負いません」
今まで少し楽しげに聞こえた説明も、この項だけは、緊張が走る。
「依頼による負傷、損害などは全てご自身の責任となります。また、近隣家屋の破損などの責任も負いかねます。あらかじめご了承の上、依頼を受注ください。なお、受注から180日以上経過され、一切の報告がなかった場合、当ギルドより調査員を派遣する場合がございます。死亡確認のための行為です。くれぐれも報告漏れが無いよう、お願いします」
彼女は淡々と述べるけど、内容自体はかなり重ため。
万が一、パーティメンバーが亡くなったりとかが、可能性としてはありえてしまうのが、冒険者という職の恐ろしいところ。
自分が亡くなる時のことは考えなくてもいいとして、もし味方がって時のことは、頭の片隅にでも置いておくべきだろう。
「さて、ここまででご質問などはございますか」
「大丈夫です、ね悠里くん」
「あ、はい。大丈夫だと」
説明を聞き終えて、いよいよ僕らは冒険者に。
「最後に、お二人のクラスについて。先程記入いただいた書類には、アカネ様は、魔導具使用許可 第一級、ユーリ様は第二級の方をお持ちとありますが、今証明書はお持ちですか」
「はいここに」
そのために持ってきたと言わんばかりに、リュックサックから書類を出す暁音さん。
用意周到とはまさにこの事。
でも、魔検の証明書がなぜ必要なのだろう。
「ありがとうございます。そうしましたら、暁音さんのクラスはB。ユーリ様はCからのスタートとさせていただきますが、よろしかったでしょうか」
「魔検の結果で、クラスが決まるんですか」
「本来、スタートは皆様一律でEからとなっていますが、国が実施する試験に合格いただいた方に限り、飛び級という制度を設けております。試験の階級に応じて、スタートのクラスも上がるという制度です。なお、後日更に上の級などに合格された際には、該当クラスまで上がりますので、是非証明書をお持ちください」
じゃあ、僕が一級に受かれば、暁音さんと同じBになるってことか。
「でも待って。Bからって……間に合うのかな」
僕が危惧したのは、Bからのスタートで、250億に間に合うのか。
いつだか見せてもらった依頼リストにあった報酬金は、BとSとじゃ十倍以上違ってたはず。
Bから実績を積んでSになるまでってやってたら、あっという間に期限が来ちゃうんじゃって。
「間に合わないね。だから、私たちにはそのクラスは関係ないよ」
「と言うと……?」
「クラスを無視して依頼を受けるってこと。初っ端から、S以上を狙って受ける。そうじゃなきゃ250億は夢のまた夢」
クラスを無視するか。
「失礼ですが、ギルドでは、自身のクラス以上の依頼を受注することは推奨しておりません。極めて危険な行為になりますので、お言葉ですが、Bからの受注がよいかと」
受付嬢のお姉さんからも、遠回しに注意される。
おそらく、無謀な挑戦を試みて帰ってこなかった冒険者を何人も見てきたのだろう。
その言葉には、当然の説得力があった。
でも、そうは言っていられない。
「ご忠告ありがとうございます。でも、ごめんなさい。私たちは、最短ルートで行かなきゃならないので」
「僕からも、ごめんなさい!」
多分お姉さんには、無謀な行為に身を投じるバカにしか見えないのだろう。
でも、例えバカだとしても、ここでみすみす死ぬのを待つだけの存在には、なれやしないから。
「……もう一度にはなりますが、当ギルドでは一切の責任を負えません。ご了承くださいね」
「「はい!」」




