冒険者ギルド
応用範囲の演習が始まって一週間が経った。
中々に難解な問題たちを前に、僕は為す術なくサンドバッグ状態。
そのせいあって、完全に疲れきった僕が迎える週末は、先週とは打って変わって、寝たきりでもいいんじゃないかと思うほど。
応用問題、まさかここまでの難敵だとは……。
「あらら、悠里くんお疲れかな?」
部屋に入ってきて早々、布団にくるまる僕を見て、暁音さんは少し残念げに言葉を漏らす。
「まあ、無理もないか。頭がパンクしてるよね、休みだもんゆっくりなさいな」
そうして部屋を出ていこうとする彼女の背中には、リュックサックが背負い込まれていた。
僕は、そんな明らかどこかに行く用意をしていた暁音さんを慌てて呼び止める。
「どこか行くんだったの?」
「まあ、悠里くんが暇ならって思ったんだけど。疲れてるもんね。いいよ、また今度にしよ」
僕を気遣ってくれるのは正直ありがたいんだけど、わざわざ暁音さんから出かけようと提案してくれるのは久々な事。
そんな提案を無下にするのはもったいないというかなんというか……。
せめてどこに行こうとしてたか尋ねてみる。
「ちなみにどこに行く予定だったの」
大層な準備をしてるから山登りとかなのかな、とか思ってたが、暁音さんが返した言葉は想像とは全く違って。
「えっとね……冒険者ギルド」
「ギルド!?」
ギ、ギルド。
今暁音さん、ギルドって言ったよね!?
そんな心踊る提案、みすみす見逃す訳には行かないだろう。
「うわっびっくりした」
バッと立ち上がり、暁音さんを驚かせながら僕は言う。
「行こう! ギルド!」
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人間、誰しも少年だった頃がある。
幻想世界に恋い焦がれ、あんなことやこんなこと、数多く妄想を膨らませたことだろう。
そんな妄想の中でも特に多いシュチュエーションといえば、冒険者になっての魔物退治。
ギルドに張り出される依頼書を眺め、今日の強敵を吟味する。
狙いを定めたら、併設された酒場で冒険者仲間を集ってパーティを組んで、剣だの杖だの盾だの鎧だの武器や防具を念入りに揃える。
受付に依頼書を出したらいよいよ本番。
大口叩いて扉をくぐる僕ら冒険者は、市民たちからの憧れの的。
何よりかっこよく、街の平和を守るヒーローと言っても過言じゃない。
そんな職業につけたならと、少年だった誰しもが一度は思ったことだろう……。
そして、そんな夢は、今、現実になる。
「なぁに? 緊張してるの」
「だって! だってさぁ……!」
「ほんと、悠里くんって少年だよね」
「じゃあ行くよ」と、二人でくぐった扉の先。
待っていたのは夢のような現実だったんだ。
「すっげーなぁ……」
木製の机や椅子、シャンデリアに酒樽、そして奥にドンッとそびえる掲示板。
別にどこにでもあるようなものではあるんだ。
だけど、それらが一箇所に、こんな配置で置かれてるとなると、それだけで心躍るというか、テンションが、テンションが……!!!
「いや、別に景色は図書館とそんな変わらないと思うんだけど」
「ギルドだよギルド! ここにいる人たちみんな冒険者なんだよ!」
「まあ気持ちは分からなくは無いよ、私もゲームするし」
「じゃあなんでこうならない!?」
「自分より上がってる人がいると、途端に冷めちゃうタイプなの……。ごめん」
若干引いてる暁音さんには悪いが、この高鳴りを抑えられそうはない。
だって、もう、なんというか、さぁ!?
自然と荒くなる鼻息を抑えることもせず僕は、一歩踏み出す。
「ほんとに、ギルドなんだなぁ……」
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