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第十八話「能天気な幼馴染」・2




 そして今現在に至る……。

 砂嵐が酷く、視界があまりよろしくないここ――コーパスの町。だが、そんな場所にまでクロノスの手が回っている。そのせいで、今回砕狼の幼馴染である子を助けに行かなければならないのだ。

 サルパストナム王国の住民は、砂嵐の影響で髪の毛が痛んだりということを考慮してターバン的な物を頭に巻いて生活している。服なども砂除けマントで防御。しかし、今コーパスの町にはそんな格好をしている人物など一人もおらず、いるのは白衣姿の男達だけ。ほとんどがメガネをかけており、いかにも博識っぽい雰囲気を醸し出している。


「あいつら、好き勝手やりやがって!!」


 砕狼が前に進み出ようとするのを、乱火が慌てて抑える。


「んだよ!」


「今出ていけばあいつらに捕まるのがオチだ。もう少し様子を見よう……」


 珍しく乱火がちゃんとした正論を述べているのを見て私は感心した。だが、納得のいかない砕狼は続ける。


「んなことしてたらあいつが襲われちまうかもしんねぇだろうが!!」


 “あいつ”というのは恐らく砕狼の幼馴染のことを言っているのだろう。確かに乱火の言う事も一理あるが、今言った砕狼の言葉も十分正しいと思う。だが、今回はそういう訳にもいかない。私は一個人ではなく、メンバー全員のことも考えなければならない。それが優れたリーダーに求められる資質というものだと私は思う。

 つまり、ここで私が言うべきことは、最も彼らにとって良い選択肢を与えるということだ。


「……二人とも一旦落ち着いて? 確かに砕狼の幼馴染の子は心配だけど、私達もみすみすクロノスのやつらに捕まるつもりはないの! だから、誰一人として欠けることなく目的地にまで辿りつきたい……。そこで頼みがあるの――」


 そう言って私は話を始めた。脳内で立てた作戦を口頭で言い皆に説明する。その間、他のメンバーは武器の点検などを行う。時々外の様子を確認するが、人が来る様子はない。もしかすると、ここが一番の穴場かもしれない。そうすれば、ここにはしばらくの間誰も近づいて来ないということだ。ゆっくりと慎重に作戦を立てるにはまさに適した場所だった。

 そして説明を終えると、私達は各々の隠れ場所に身を潜めた。必死に息を殺し、呼吸を聞こえないように試みる。

 一瞬自分が忍者になって人々を悪党から救っている姿が目に浮かぶが、すぐにそれは消えてしまう。


「――説明は以上だけど、作戦の内容は理解したかしら?」


「ったく、メンドそーだが、従弟の為だ! ひと肌脱いでやろーじゃねぇか!!」


 自慢の鋼鉄球を片手で担ぎ上げながら鋼鉄が言う。次いで彪岩さんも口を開いて言った。


「おうよ! 大事な仲間、友人を助けるとはまさに(おとこ)だ!! さぁ、さっそくその幼馴染とやらの所へ向かおうではないか!!」


 彪岩さんが拳を握り上に突き上げて気合を入れると同時に、皆も掛け声をあげた。


――△▼△――


 ここはカーパスの町の中心部辺り。民家が立ち並ぶこの場所の一つの家に、一人の少女がひっそりと身を潜めていた。


「うぅ~・・・・・・。どうしよ~、何でこんなことに・・・・・・」


 少女は頭にターバンを巻いていて、体中に砂よけのマントを羽織っている。どうやら、これらの格好からここの住人であることは間違いないようだ。

 少女は赤茶の瞳に栗毛色の髪の毛をしていて、横髪の一部を三つ編みにしている。

 そして、少女は体操座り状態でガクガクと体を震わせ何かに怯えていた。その原因はすぐ近くにあった。近くには、白衣を身にまとった男がキョロキョロと家の中を見回している姿があった。

 男の片手には何かの発明品らしき物があり、そこからピピピッ! と音を出しながら何かを探っている。

 すると、男が嘆息しながら呟いた。


「なかなか見つからないな。有属性者を探すという使命をこなしてはいるが、ほとんどの人間を集めたのにこれ以上まだ集めるのか? 全く、アリス様やコルベッド様が考えることは私には解りかねるな・・・・・・」


 そう言って誰もいないと確信した男は、踵を返して外へ出ていこうとした。

 刹那――男はある音を聞き逃さなかった。ゴン! と何かがぶつかるような鈍い音・・・・・・。原因は、少女が思わず壁に頭を打ち付けてしまった音だった。側頭部を小さな手で押さえながらイタタ・・・、と言ってふっと顔を上に上げると、その男と目が合ってしまった。すかさず男は先ほどの装置を使って先端の光が出る部分を少女に向ける。光は少女に直撃すると同時に何かを感知したのか、音を立てた。


「・・・・・・反応あり。なるほど、お前がコーパスの町の最後の有属性者か・・・・・・。しかし、まだ子供だな。ん? 待て・・・・・・この反応は!! お前、ただの有属性者ではないな? この反応・・・・・・お前、伝説の戦士か!!」


「で、伝説の戦士?」


 少女は胸元に手を運び、未だに怯えて体を震わしている。


「伝説の戦士ならば話は別だ。子供ならばまだ逃すという手立てがあったが、仕方がない!覚悟してもらおう!!」


 男は手を伸ばして体を(すく)ませる少女を捕らえようとした。

 と、その時、突然「うらぁああああああああああああ!!!」という叫び声と共に家の壁が崩壊し、白衣を着た男に巨大な鉄球が直撃した。男はそのまま家の奥へと吹っ飛び、それを見ていた少女は口を開けたまま呆然としていた。しかし、自分の近くに人気を感じてふと振り向くと、そこには九人の人物が立っていた。


――△▼△――


「じゃあ、あなたたちはガロー君の友達なの?」


 首を傾げてそう訊いてくるこの少女こそが、砕狼の幼馴染らしい。


「ええ、まぁ・・・・・・。ところで、あなたは?」


「あっ、えーとわたしは『石吹(いしぶき) 砂唯(さゆ)』です・・・・・・。い、一応ガロー君の幼馴染です」


 頬をかきながら目を逸らして答える少女――砂唯。


「こんなとこでお前、何やってたんだ?」


「え、わたし? 家にいただけだけど・・・・・・」


「何で逃げねぇんだよ!! クロノスの奴らが襲撃しに来んだろうが!!」


「そんなこと言われたって、わたしそんなこと知らなかったし・・・・・・」


 少し強気な口調で砕狼に言われ、砂唯は沈んだ顔になってしまった。その姿を見かねた私は、砕狼に暖かい眼差しを向けてこう言った。


「ねぇ砕狼、砂唯も本当に知らなかったみたいだし、あまり怒らないであげて? ・・・・・・ね?」


「けっ! お前は甘すぎるぜ!!」


 腕を組んで砕狼は舌打ちしそっぽを向いた。


「やれやれ、どうやら拗ねてしまったようでございますね」


 両手をあげて呆れたと言った顔をする癒宇さんにつられて、私も思わず嘆息した。


「あのぅ、唐突なんですけど、ガロー君とはどういった経緯で知り合ったんです?」


 何かが気になったのか、少し目を潤ませながら砂唯は私に質問した。その質問に対して私は少し間を開けて答えた。


「そうね・・・・・・。実は私達、伝説の戦士なの」


「伝説の戦士・・・・・・って、確かあのおとぎ話の?」


「そう・・・・・・。でも、それとは少し違ってるみたいなのよね」


 今までの戦いとファントム達から聞かされる言葉から推測すると、自分が知っているおとぎ話の伝説の戦士とは明らかに違っている点が幾つもあった。


「そうなんですか。って、じゃあガロー君も伝説の戦士の一人なのぉ!?」


「だからそうだっつってんだろーが!! いい加減すぐに理解しやがれ!!」


「そ、そんなに怒らなくてもいいじゃん! わたしだって白衣を着た変な人に襲われて、頭の中が混乱してるんだから・・・・・・」


 今にも泣き出しそうな表情を浮かべ、涙声で砂唯はそう言った。


「んなんだからお前はいつまで経っても能天気だの天然だの言われんだよ!! 悔しくねぇのか?」


「別に悔しいとは思わないけど・・・・・・」


 砕狼に迫られた砂唯は、必死に彼から離れようと背中を反らす。


「はぁ~、てかちょっと待て!! お前、嘘だろ!?」


 いつの間にか私の荷物の中から勝手に取り出していたのか、手元に広げた黄金の地図を確認して、砕狼は驚愕の表情を浮かべて再び砂唯を凝視した。


「な、何? 何かわたしの顔に付いてる?」


 じ~っと自分の顔を見つめられることにあまり慣れていないのか、手がブルブルと震えている砂唯。


「お前も伝説の戦士だったのか・・・・・・」


 その言葉にみんなが驚愕した。本人も驚きの表情でその場で固まってしまっている。


「わ、わたしが? そ、そんなわけないよ~!! だってわたし全然強くないし・・・・・・」


 謙遜しているのか、はたまた本当のことなのかは定かではないが、顔の前で顔と一緒に激しく手を振る砂唯。

 私は砂唯のことを理解してあげようと思う心を持っているが、砂唯との付き合いが長いはずの砕狼は全く信用している様子はなく、不審さを表情に表しながら砂唯を凝視している。

 すると、今度は砕狼の方から口を開いた。


「んじゃあこうしようぜ! お前は地図によれば間違いなく伝説の戦士だ!! この事実は変えられねぇ!! だから、お前も必然的に敵と戦うことになるわけだ!!」


「えぇ~っ、そんなのヤダよぉ~! わたし戦いたくないのにぃ・・・・・・」


「ワガママ言ってんじゃねぇよ!! 俺だってなるべくなら無益な戦いはしたくねぇ!! だが、戦わなきゃならねぇ時もあんだ!! だから、もしもその時が来たらその際にお前が本当に弱いのか強いのかをこの目で確認してやるよ!! もしもお前の言うとおり弱かったら、俺は何でもお前の言うことを聞いてやる!! だが、もしもお前が本当は強かったらお前が俺の言うことを何でも聞けよ?」


「い、いいよ? わかった、手っ取り早くてわかりやすい条件だね!! わたしは弱いったら弱いんだから!!」


「俺はゼッテーそんなの信じねぇかんな!!」


 そう言って二人は互いにそっぽを向いてそこで話に決着がついた。終止符が打たれた話はさておき、私は二人の間に割って入って砂唯に訊いた。


「砂唯・・・・・・一つあなたに訊いてもいいかしら?」


「な、何ですか?」


 少し気まずそうにしながら砂唯が返事をする。どことなく何かを気にしている様子だ。


「あなた以外には、もうこのコーパスの町に人は残っていないの?」


「・・・・・・はい。残念ながらわたし以外の人達は全員さっきの人達に連れて行かれました」


「王様もなんでしょう?」


 自分は話していないのに国王が連れて行かれたことも私が知っていたことに驚いたのか、砂唯は目を丸くしていた。


「彪岩さんに聴いたの」


「うむ、その通りだ!!」


 腕組をして答える彪岩さん。それを見て砂唯は言った。


「そう・・・・・・だったんですか」


「とりあえずここを出発しましょう! これでこの国にいると思われる伝説の戦士は全員見つけたわ。次の戦士を探しに向かいましょう!!」


 私はその場に立ち上がってみんなにそう指示した。

というわけで幼馴染の砂唯がここで出ました。砕狼の幼馴染です。しかし、能天気というか天然というか。まぁ、考えが楽観的だということです。まぁ、一部分は自分の力が弱いと謙遜しているようですが。まだ戦っていないのでなんとも。

そして、幼馴染同士で交わす約束。何でも言うことを聞く。

この響きを聴くとどうも(ry

てなわけで、三部では新キャラがまた出ます。

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