第97話 六層の守護神と酒盛り
光が弾け、太郎とオカンは赤黒い霧の中に立っていた。
地面は岩のようで、どこか脈打つように震えている。空気には酒の香りが混じっていた。
太郎「……ここ、絶対まともな場所ちゃうやろ」
オカン「太郎、また妙なとこ飛ばされて……!」
霧の奥から、巨大な影がゆっくりと近づいてくる。
足音は重く、しかし殺気はない。むしろ楽しげな気配すら漂っていた。
酒呑童子「来よったな、小僧。お前から“ええ酒の気配”がしたんや」
霧が割れ、酒呑童子が姿を現した。
巨体に瓢箪を提げ、目は鋭いが笑っている。
太郎「……酒の気配って、俺そんな匂い出してた?」
オカン「太郎、あんたストレージに酒入れっぱなしやったやろ」
酒呑童子は鼻を鳴らす。
酒呑童子「ほれ、小僧。持っとる酒、全部出せ」
太郎「……しゃーないな」
太郎はサーバーストレージを開き、
太郎の街で作ったワインの樽、日本酒の樽を次々と取り出した。
酒呑童子「おおおおお!! なんやこの香りは!! これは……人の手で作った酒やな。しかも腕がええ!」
太郎「うちの街の酒や。みんなで作ったやつやで」
酒呑童子「なんやと!? こんな旨そうな酒を作る街があるんか!」
オカンが腕を組む。
オカン「酒だけやとアテが足らんやろ。太郎、出し」
太郎はお好み焼きとたこ焼きを大量に取り出す。
鉄板の香ばしい匂いが六層に広がった。
酒呑童子「なんやこの匂いは……! 酒が……進む……!」
酒呑童子は豪快に飲み、食べ、笑った。
酒呑童子「小僧、お前も飲め」
太郎「いや俺、未成年やねん」
酒呑童子「面白くないやつやな!」
オカン「太郎に飲ませたらうちが怒るで」
酒呑童子は不満げに瓢箪を振る。
酒呑童子「ほな……茨木! 来い!」
──第五層。
茨木童子は静かに立ち上がり、コハクたちへ向き直った。
茨木童子「酒呑様がお呼びだ。ついてこい」
コハク「酒呑童子……様?」
玲奈「誰それ……?」
晴斗「嫌な予感しかしないんだが……」
マッチャ「殿下、どうされますか!」
コハク「……太郎殿がそこにいるのですね?」
茨木童子「いる。酒の匂いと共にな」
ひより「太郎くん……!」
蒼真「行くしかないな」
ユウガ「……六層……」
茨木童子は巨大な腕を振り下ろし、床の紋様を光らせた。
茨木童子「六層へ降りる。遅れるな」
光が広がり、
コハク、マッチャ、勇者たち、陰陽師たちが
茨木童子の背後に吸い込まれるようにして六層へ降りていく。
──六層。
赤黒い霧の中、
酒呑童子が樽酒を抱えて豪快に笑っていた。
酒呑童子「おお、来よったか茨木! それに……客がようけ増えたな!」
太郎「なんで全員ついてきてんねん!!」
ひより「太郎くん!!」
玲奈「ほんとにいた……!」
コハク「太郎殿、ご無事で……!」
マッチャ「殿下、太郎殿は生きております!」
ユウガ「……この妖気……」
酒呑童子「よし! 宴や宴!!」
太郎「宴会に巻き込むなや!!」
酒呑童子はワインを樽で飲み、茨木童子はたこ焼きを気に入り、
オカンは勝手に鉄板を出して追加で焼き始めた。
玲奈「……これ、どういう状況?」
晴斗「俺に聞くな……」
蒼真「……六層とは、こういう場所なのか……」
ひより「太郎くん……よかったぁぁぁ……!」
ユウガ「酒呑童子……妖気が……強すぎる……」
酒呑童子「小僧、ええ仲間持っとるやないか!」
太郎「いや宴会に巻き込むなや!!」
酒呑童子は酒を煽りながら語り出す。
酒呑童子「ワシは帝都の守護神や。本来は妖魔を抑える役目を負っとる」
玲奈「守護神……?」
コハク「そんな……!」
晴斗「マジかよ……」
酒呑童子「せやけど最近、妖魔が強うなっとる……」
太郎「蝕のせいやろ……」
酒呑童子「――違うわ。酒が切れてイライラしてただけや」
全員「原因そこかい!!」
茨木童子「酒呑様は酒がないと妖気が暴走するのです」
オカン「ただのアル中やん!」
酒呑童子は太郎の肩を掴む。
酒呑童子「せやから小僧。今後も酒、持ってこい」
太郎「いや俺、そんな頻繁に来られへんで……」
コハクが前に出る。
コハク「では……帝都として、定期的に酒を献上いたします。それで妖魔の暴走が抑えられるのであれば」
酒呑童子「よし、決まりや!!」
太郎「勝手に決めるなぁぁぁ!!」
六層は完全に酒場と化し、宴は夜更けまで続いた。
────────────────────────
太郎「……なあ、なんで六層が酒場になってんねん」
オカン「太郎が酒持ってるからやろ。原因はあんたや」
酒呑童子「小僧、次はもっと強い酒持ってこい」
太郎「注文が雑すぎるわ!」
茨木童子「酒呑様、たこ焼き追加しました」
酒呑童子「よし、褒美に飲ませたる!」
茨木童子「……私は未成年ではありませんので」
太郎「そこは気にするんや……」
玲奈「てか太郎、六層で何してんの?」
晴斗「守護神と飲み会ってどういう状況だよ」
ひより「太郎くん……もうどこにも行かないで……」
コハク「太郎殿、次の献上酒は私が用意します」
太郎「いや勝手に話進めるなぁぁぁ!!」
読んでくれてほんまおおきに。オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と言ってます
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。




