第95話 帝城迷宮・第二層と第三層 姫の残滓
階段を降りた瞬間、空気が変わった。
第二層は、まるで氷の洞窟だった。
青白い霧が漂い、足元には霜が張っている。
太郎「……さっむ!」
オカン「太郎、うち凍死するで!ウチは寒さに弱いんや!」
太郎「知らんがな!」
陰陽師が周囲を見回し、顔をしかめる。
陰陽師「……“姫様”の気配が濃くなっています」
太郎「なんで俺のほう見ながら言うん……?」
コハクは胸元を押さえ、苦しげに息をつく。
コハク「……この層……何かが……呼んでいるような……」
マッチャが慌てて支える。
マッチャ「殿下、無理は禁物です!」
太郎はますます不安になる。
太郎(……なんで俺、こんなに巻き込まれてるんや……?)
蒼真が前に出る。
蒼真「罠が多い。俺が先行する」
太郎が一歩踏み出すたびに――
カチッ、ブシュッ、ガコンッ。
矢、氷柱、落とし穴。
全部、太郎の進路に集中していた。
玲奈「これ……太郎くん狙い撃ちじゃない?」
ひより「えっ、なんで!?」
オカン「太郎、あんた前世で罠職人でも怒らせたんか?」
太郎「知らんわ!」
蒼真が次々と罠を解除し、ようやく広間にたどり着く。
そこに――
青い霧が渦を巻き、ひとつの影が形を成した。
青髪鬼。
氷の槍を握り、声はどこか女性のように響く。
青髪鬼「……返シテ……姫……ノ……願イ……」
太郎「え、俺なんか返すもんあった!?」
陰陽師が青ざめる。
陰陽師「……“姫様”の声……?」
コハクが太郎を庇うように前に出る。
コハク「太郎殿、下がってください!」
オカン「太郎!あれ絶対クレームの声や!“返せ”って言うてるで!」
太郎「なんのクレームやねん!」
青髪鬼が氷槍を投げつける。
晴斗が斬り、玲奈が氷を砕き、蒼真が影で拘束する――が。
青髪鬼は霧となって消え、背後に再出現。
氷の爪が太郎の頬をかすめた。
太郎「うおっ!?」
オカン「太郎!避けんかい!死ぬで!」
太郎「避けたわ!」
青髪鬼は高速で霧化と実体化を繰り返し、
攻撃が当たらない。
晴斗「くそっ、速い!」
玲奈「魔法が霧に吸われる……!」
蒼真「影が掴めない……!」
ひよりが震えながら叫ぶ。
ひより「太郎くん!バフ入れるから頑張って!」
太郎「頑張るけど!当たらんねん!」
青髪鬼が氷の嵐を放つ。
全員が吹き飛ばされる。
オカン「太郎ぉぉぉ!吹雪は無理やぁぁぁ!」
太郎「知らんがなぁぁぁ!」
蒼真が叫ぶ。
蒼真「太郎!あいつ、霧化の直前に“影”が揺れる!そこを狙え!」
太郎「任せろ!」
太郎は青髪鬼の影の揺れを見切り――
太郎「ハヤブサ嵐舞ッ!!」
青髪鬼の胸に斬撃が走り、霧が弾けた。
晴斗「今だ!」
玲奈「雷撃!」
蒼真「影縛り!」
青髪鬼が悲鳴を上げ、霧となって消えた。
オカン「ふぅ……命の危険を感じたら、うちのギャグもキレ増すわ」
蒼真「命の危険でギャグが強化されるのか……」
陰陽師が震えながら言う。
陰陽師「……三層は……さらに危険です。“姫様”の気配が……濃すぎる……」
太郎「なんで俺を見るん……?」
コハクは何か言いたげに口を閉じた。
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三層に足を踏み入れた瞬間、空気が一変した。
静寂。
白銀の霧がゆっくりと渦を巻き、どこか甘い香りが漂う。
太郎「……なんやここ、空気が重いな」
オカン「太郎、ここ絶対ヤバいとこや。うちの妖精アンテナがビンビンや」
陰陽師の一人が、震える声で口を開いた。
陰陽師「……この層には、“姫”の伝承が残っています」
太郎「姫? 第二皇女のことか?」
陰陽師は首を横に振る。
陰陽師「いいえ……もっと昔の話です。かつて、この帝城に“ある姫”がいました。美しく、優しく……しかし、愛した男に裏切られ、絶望の果てに――」
霧が揺れ、白銀の髪が風に舞うように見えた。
陰陽師「――鬼となった、と伝わっています」
ひより「……鬼に……?」
玲奈「裏切られて……?」
蒼真「そんな伝承が……」
太郎は背筋が冷たくなる。
太郎「いやいや、なんでそんな話を今……?」
陰陽師は太郎を見つめた。
陰陽師「この層には、その“姫”の未練……残滓が強く残っているのです。……まるで、誰かを探しているかのように」
太郎「なんで俺を見るん!?」
オカン「太郎、これは完全に“女の修羅場”の匂いや」
太郎「なんでそうなるん!」
その時――
白銀の霧がふわりと割れ、長い銀髪が舞うように現れた。
銀髪鬼。
能面のような美貌。白い肌。舞うように歩き、太郎へ手を伸ばす。
銀髪鬼「……ちょうだい……」
太郎「え? な、何をや!? 俺なんも持ってへんで!」
銀髪鬼の瞳が細くなる。
銀髪鬼「……よこせ、と言ってるでしょう……」
太郎「知らんわ!何を渡せって言うねん!」
銀髪鬼は一歩、また一歩と舞うように近づく。その動きは美しく、しかしどこか狂気を孕んでいた。
銀髪鬼「……願イ……果タサネバ……返シテ……」
太郎「返すもんなんか持ってへんて!俺、落とし物センターちゃうぞ!」
銀髪鬼の表情がピクリと歪む。
銀髪鬼「……返シテ……返シテ……返シテ……!」
太郎「いや知らん言うてるやろ!何を返せって――」
銀髪鬼の顔が、ふわりと優しい女形の顔から――
般若の形相へと変わった。
銀髪鬼「返セェェェェェェ!!」
太郎「なんで急に般若やねん!?」
オカン「太郎!これは完全に痴話げんかや!うちを巻き込むんじゃない!!」
太郎「痴話げんかちゃうわ!!」
銀髪鬼は怒りの舞を踊るように回転し、氷の刃を散らしながら襲いかかる。
晴斗が斬り込み、玲奈が雷撃を放ち、蒼真が影で縛ろうとするが、銀髪鬼は舞うようにかわす。
ひより「太郎くん! 聖光、いきます!」
ひよりの放つ聖なる光が、銀髪鬼の動きを一瞬だけ止めた。
太郎「ナイスや、ひより!」
太郎「ハヤブサ嵐舞ッ!!」
高速の連撃が銀髪鬼の身体を切り裂き、
白い肌に赤い血しぶきが舞った。
銀髪鬼は舞うように後ろへ倒れ、
その長い銀髪がふわりと宙に浮かぶ。
銀髪鬼「……ア……願イ……果タ……」
その声は霧に溶け、
銀髪鬼の身体は崩れ落ちた。
長い銀髪だけが、まるで未練のようにふわりと舞い続けていた。
太郎は第二皇子の依頼を思い出す。
太郎「……これ、持って帰ったらええんやな」
オカン「太郎、それ触ったらアカン気がするで。うちの第六感が言うてる」
太郎「オカンの第六感は当たったことないやろ!」
太郎が銀髪を拾った瞬間――
髪が太郎の腕に絡みつき、光が爆ぜた。
太郎「うわっ!? なんやこれ!」
オカン「太郎!離れぇぇぇ!」
銀髪鬼の残滓の声が響く。
銀髪鬼の声「……返セ……願イ……果タセ……」
太郎「知らん言うてるやろ!何を返せって――」
光が太郎とオカンを包み込む。
オカン「太郎!これは完全に痴話げんかや!うちを巻き込むんじゃないぃぃぃぃ!!」
太郎「痴話げんかちゃうわぁぁぁぁ!!」
光が一気に強まり、太郎とオカンの姿は迷宮から消えた。
コハク「……太郎殿……!」
マッチャ「……オニキス様の……陰謀……?」
陰陽師「違います! 殿下はそんなこと……!」
誰も真相を知らないまま、
太郎とオカンは迷宮の深淵へと消えた。
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太郎「……はぁ、なんとか倒したな……」
晴斗「いや“なんとか”どころか、最後めっちゃ血しぶき飛んでたぞ」
玲奈「太郎くんの攻撃、あれ普通に必殺技だったよね……?」
蒼真「銀髪鬼の動き、舞ってるのか攻撃なのか分からなかった」
ひより「でも太郎くん、ちゃんと見切ってましたよ!すごいです!」
太郎「いやもう必死やっただけや……」
オカン(太郎の肩でドヤ顔)「太郎、あんた今日だけで寿命20年縮んだで」
太郎「勝手に減らすな!」
コハク「……太郎殿、本当に無事でよかった……」
マッチャ「殿下、あまり近づくと太郎殿が混乱します」
太郎「いや混乱ってなんやねん!」
オカン「太郎、女の修羅場は避けときや。うちは巻き込まれたくないで」
太郎「今は修羅場ちゃうわ!」
読んでくれてほんまおおきに。オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と言ってます
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。




