第93話 帝城地下迷宮の依頼
翌朝。
太郎とオカン、コハク、マッチャは、帝城の謁見の間へと案内された。
巨大な柱が林立し、天井は見上げても届かないほど高い。
空気は冷たく、どこか張り詰めている。
玉座には皇帝が座り、その右隣には皇太子モンド。
左には陰陽寮の長――陰陽頭が控えていた。
さらに後方には第二皇子オニキスが立ち、相変わらず笑っているような、笑っていないような目をしている。
オカンは太郎の横で、場違いなほど堂々と立っていた。
オカン「うわぁ……ここ、掃除めっちゃ大変やろなぁ。天井のホコリ、絶対落ちてくるで」
太郎「オカン、静かにして!」
皇帝は微笑を浮かべながらも、目は鋭い。
皇帝「太郎殿。そなたに頼みたいことがある」
太郎は姿勢を正した。
太郎「……頼みたいこと、ですか?」
皇帝は玉座からゆっくりと立ち上がった。
皇帝「帝都の地下に広がる“帝城地下迷宮”。そこに異変が起きておる」
陰陽頭が前に進み、深く頭を下げる。
陰陽頭「蝕の影響で、迷宮内の妖魔が急激に強うなっております。このままでは、帝都の結界に影響が出るやもしれませぬ」
太郎は息を呑んだ。
太郎「結界に……?」
陰陽頭「はい。しかし……陰陽寮内部の対立により、調査隊の派遣が滞っておりまして」
オカンがすかさず口を挟む。
オカン「対立? あんたら、そんな大事なとこでケンカしてどないすんねん。うちの商店街でも、総会のときはもっと静かやで」
太郎「オカン、黙っといて!」
皇太子モンドが静かに口を開いた。
声は落ち着いているが、どこか冷たさがある。
モンド「太郎殿。迷宮の異変は、帝都全体の問題だ。だが、陰陽寮は派閥争いで身動きが取れぬ。ゆえに、外部の者であるそなたに白羽の矢が立った」
皇帝が続ける。
皇帝「そなたは帝都のどの派閥にも属しておらぬ。ゆえに“誰にも利用されぬ目”で迷宮を見られる」
オカンは胸を張る。
オカン「太郎は運だけは強いで。しらんけど」
太郎「最後の一言いらん!」
皇帝は微笑んだ。
皇帝「迷宮の調査を、そなたに依頼したい」
太郎は深く息をついた。
また厄介なことに巻き込まれている気がする。
謁見が終わると、皇帝は太郎の商会の帝都支店についても話した。
皇帝「支店の場所は、わしが差配した。帝都でも屈指の一等地である」
地図を見た太郎は目を丸くした。
帝都の中心街――
石畳の大通りに面し、昼夜問わず人が行き交う繁華街。
周囲には高級茶屋、宝飾店、呉服店が並び、どの店も格式が高い。
建物は二階建てで、白壁に黒瓦の屋根。
店の前には大きな看板を掲げられるスペースもある。
太郎「……ほんまに一等地やん。
こんな場所、普通は大商家しか借りられへんぞ」
しかし、オカンが地図を覗き込んで眉をひそめる。
オカン「太郎、隣……ユラちゃんの実家やで」
太郎「え?」
反対側を見る。
オカン「で、もう片方の隣……第二皇子の関係深い店や」
太郎は頭を抱えた。
太郎「なんでそんな政治の真ん中みたいな場所に……!」
オカン「太郎、あんた絶対巻き込まれるやつや。うち、もう胃が痛いわ」
太郎「俺もや!」
皇太子モンドは静かに言った。
モンド「太郎殿。帝都で商いをするということは、政治の渦中に立つということでもある」
太郎はさらに頭を抱えた。
退出しようとしたとき――
上品な足音が近づいてきた。
第二皇女 ヒスイが太郎の前に立つ。コハクの姉であり、第二皇子オニキスの実の姉。その瞳は、皇族らしい強さと計算高さを宿していた。
ヒスイ「太郎殿……迷宮の調査、期待しておりますわ」
太郎は戸惑う。
太郎「え、ええと……がんばります」
ヒスイは一歩近づき、太郎の袖にそっと触れた。
ヒスイ「あなたの“幸運”……帝都にとって、とても価値がありますの。それに……あなたの街が生み出す品々、わたくし、とても気に入っておりますのよ」
太郎はさらに困惑する。
太郎「は、はぁ……ありがとうございます」
ヒスイは微笑む。
ヒスイ「迷宮から戻られたら……ぜひ、あなたの店にも伺わせてくださいませ。お話したいことが、たくさんありますの」
コハクの表情がピクリと動いた。
オカンは太郎の背中を押して距離を取らせる。
オカン「太郎、あんたはすぐ変な女に絡まれるんやから!ほら、行くで!」
太郎「言い方!」
遠くでオニキスがニヤニヤしているのが見えた。
陰陽寮から案内役がつき、太郎たちは迷宮へ向かうことになった。帝都の地下へ続く巨大な石階段。冷たい風が吹き上がり、古代文字が淡く光っている。
案内役が言う。
案内役「……迷宮の奥で、“姫様”に関わる気配がありまして」
コハクは小さく息を呑んだ。
オカンは太郎の腕を掴む。
オカン「太郎……ここ、絶対ロクなことないで。帰りにお守り買って帰ろな」
太郎「今から行くのに縁起でもないこと言うな!」
太郎、コハク、マッチャ、オカンは迷宮へ足を踏み入れた。
太郎「よし……行こう」
帝都ヘイアン――
静けさの底で、確かに“何か”が動き始めていた。
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オカン「太郎、あんたまた変な女に絡まれとったなぁ。人気者やなぁ、しらんけど」
太郎「“しらんけど”の破壊力すごいからやめて!」
コハク「……太郎様、あの方に袖を触られてましたな」
太郎「いや、あれは向こうが勝手に……!」
マッチャ「太郎様、皇族に触れられるのは大変な意味がありますえ」
太郎「やめて! なんか誤解されるやつや!」
オカン「誤解ちゃうで。あれは“狙われてる男”の触られ方や」
太郎「オカンが一番誤解してるわ!」
コハク「……太郎様は、誰にでも優しすぎます」
太郎「いや、普通にしてるだけや!」
マッチャ「まぁ、太郎様は“巻き込まれ体質”どすし」
オカン「せやせや。迷宮より太郎の人生のほうが迷宮や」
読んでくれてほんまおおきに。オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と言ってます
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。




