第91話 帝都ヘイアン 皇族たちの微笑み
羅城門をくぐった瞬間、空気が変わった。
冷たく澄んだ風が頬を撫で、どこか張り詰めた気配が漂う。
石畳は王国のものよりもさらに磨かれ、両脇には整然と並ぶ松並木が続いていた。
その先に、白壁と朱柱が連なる巨大な建物――帝城がそびえている。
マッチャ「太郎様……ここから先は、ほんまに“帝都”どす」
太郎「なんか……でっかいもんやなぁ。入るの気後れするわ」
オカンは羅城門を見上げて腕を組む。
オカン「昔は鬼とか出たんちゃう? 帝国の昔話ってそういうの多そうやし……しらんけど」
太郎「やめて! ほんまに出てくるフラグやんか!」
門前には、すでに帝国の女官と侍従たちが整列していた。
侍従長「皇女殿下、そしてご一行の皆さま。ようこそ帝城へ」
深々と頭を下げる侍従長に、太郎は思わず背筋を伸ばす。
侍従長「長旅でお疲れでしょう。謁見は明日以降に。まずは客間へご案内いたします」
太郎は胸をなでおろした。
今日いきなり皇帝と会うのは、さすがに胃がもたない。
案内された客間は、王国とはまったく違う雰囲気だった。
畳のような敷物、障子、香の匂い。静かで落ち着くが、どこか緊張感もある。
太郎「……旅館やん」
オカン「ここ住めるで。朝ごはん絶対うまいやつや」
玲奈「オカンさん、くつろぎすぎです」
コハクは微笑みながらも、どこか不安げだった。
夜。
太郎が荷物を整理していると、障子の隙間から白い紙の鳥がふわりと滑り込んできた。
羽ばたくたびに、紙が擦れる乾いた音がする。
太郎「うわっ!? なんやこれ!」
鳥は太郎の前でくるりと回り、折り目を変えるようにして“口”を開いた。
式神の声「……太郎殿。どうか、皇女コハク様をお守りください」
太郎「誰やねん!? 名乗れや!」
式神の声「名乗れません。陰陽寮の中にも、殿下を害する者がいます」
言い終えると、紙はふっと燃え、灰になって消えた。
太郎「……いや、怖すぎるやろ……ホラーやん」
オカン「太郎、なんか燃やした? 火事はアカンで!」
太郎「燃やしてへん! 勝手に燃えたんや!」
翌朝。
太郎たちは帝城の奥へと案内された。
巨大な柱が林立し、天井は見上げても届かないほど高い。
静寂の中、香の匂いが漂い、まるで空気そのものが格式を持っているようだった。
太郎は深く頭を下げた。
太郎「このたびは、お招きいただきありがとうございます」
玉座に座る皇帝は穏やかな笑みを浮かべた。
皇帝「遠路よく来てくれた。そなたらの働き、王国より聞き及んでおる」
皇太子 モンド が一歩前に出る。
モンド「ようこそ、帝都ヘイアンへ。私が皇太子のモンドです。遠方にもかかわらず来ていただきありがとうございます」
続いて第二皇子 オニキス が微笑む。
オニキス「お会いできて光栄です、太郎殿。私は第二皇子のオニキスと申します。今後ともよろしく」
太郎は丁寧に頭を下げたが、オニキスの目だけが妙に鋭いことに気づいた。
オカンが小声でささやく
オカン「あの人、目が笑ってへんで……しらんけど」
太郎「しらんけど言うな!」
夜の晩餐会。
大広間には豪華な料理が並び、楽師が奏でる音が響いていた。
そこへ、翡翠色の衣をまとった女性が静かに歩み寄る。
所作は柔らかく、香の匂いがふわりと漂う。
第二皇女ヒスイ――二十三歳。
若くして未亡人となり、実家へ戻った皇女。
その影を帯びた微笑みは、どこか大人の余裕を感じさせた。
ヒスイ「あなたが太郎殿……。噂より、ずっと……落ち着いた方ですのね」
太郎が返事に困っていると、ヒスイは袖をそっと指先で整えた。
ヒスイ「帝都は広いですわ。よろしければ……案内いたしましょう。
夜の庭園は、とても静かで……心が落ち着きますの」
太郎の顔が真っ赤になる。
そこへ三人が同時に割って入った。
玲奈「ダメです」
ひより「太郎さんは忙しいので」
コハク「お姉さま……お引き取り願えます?」
ヒスイは微笑みながらも、目だけが鋭く光った。
ヒスイ「まあ……手強い護衛たちですこと。でも、私は諦めませんわ」
太郎「諦めてぇぇぇ……!」
遠くからオカンが一言。
オカン「太郎、あれはアカンやつや。大人の余裕ってやつや……しらんけど」
太郎「しらんけど言うなぁ!」
晩餐会の終盤。
太郎が一息ついていると、第二皇子オニキスが静かに近づいてきた。
オニキス「太郎殿。先ほどは姉が失礼を」
太郎「い、いえ……」
オニキスは柔らかく笑うが、その目はまったく笑っていない。
オニキス「私はあなたに興味があります。王国での活躍、そして……“異邦の力”。ぜひ、ゆっくりお話ししたい」
太郎の背筋に冷たいものが走る。
帝都ヘイアン――
太郎たちの前で、静かに、しかし確実に“陰”が動き始めていた。
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太郎「……なんで俺、あんな大人の人に狙われてんねん」
玲奈「太郎さんが隙だらけだからです」
ひより「というか、あの人……距離近すぎません?」
コハク「……太郎様、ああいう方に弱いんどすか?」
太郎「弱くない! ただ、迫力がすごかっただけや!」
オカン「太郎、あれは人生経験の差や。大人の余裕ってやつや……しらんけど」
太郎「しらんけど言うな!」
蒼真「でも太郎さん、顔真っ赤でしたよ?」
晴斗「うん、あれは完全に落ちてた顔やった」
太郎「落ちてへん! 俺はただ驚いただけや!」
マッチャ「……太郎様、ああいう方は本気になったら引きませんえ」
太郎「やめて! これ以上怖がらせんといて!」
玲奈「とにかく、私たちが守りますから」
読んでくれてほんまおおきに。オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と言ってます
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。




