第9話 金の毒と暴力と盗賊団討伐
街道に向かう途中、オカンがホログラムで現れた。
豹柄パーマが風に揺れ、妙に神々しい。
「太郎、今回の盗賊団はただのチンピラちゃうで。
裏に“金の匂い”がする」
「金の匂いってなんやねん」
「金はな……人の心を動かす毒や。
甘い匂いに釣られたら、誰でも腐る」
「急に深いこと言うな!?」
オカンは続ける。
「せやけど太郎、毒は使い方や。
正しく使えば命も未来も救える。
間違えたら人を壊す。
金はそういう力や」
「……なんか怖いな」
「怖いからこそ、ウチが教えたる」
*
街道に着くと、盗賊団が道を塞いでいた。
二十名ほど。全員が妙に統率されている。
「おい、あれ……普通の盗賊じゃねぇぞ」
「せや。動きが揃いすぎとる。傭兵くずれの動きや」
盗賊のリーダーが前に出る。
「ヒョウガミの使徒、山田太郎だな。
貴様の屋台のせいで我々の利権が崩れた。
ここで死んでもらう」
「いや俺、神主ちゃうねん!」
「黙れ!」
盗賊たちが一斉に襲いかかってきた。
*
「太郎、右から来るで」
「え、まだ見えてな――」
太郎の身体が勝手にひねられ、刃が紙一重で外れる。
【スキル:<未来予測>が発動しました】
「……なんで避けられたんや俺!?」
「太郎、ウチがちょっと先見とるだけや」
「ちょっとってレベルちゃうやろ!」
内部補正が開放され、身体が軽くなる。
俺はミスリル製ピックを構え、ミスリル製コテを逆手に持つ。
「ハヤブサ乱舞ッ!」
刺突と斬撃が高速で交差し、盗賊たちが吹き飛ぶ。
だが、敵の数が多い。
囲まれた瞬間――
オカンが光のメニューを開いた。
【ユニークスキル習得:<金で解決できへんことない>】
太郎「なんやこのスキル名!?」
オカン「太郎、これは“ユニークスキル”や」
「ユニーク……?」
オカンは指を鳴らしながら説明する。
「ユニークスキルっちゅうのはな、
世界に一つだけの特別なスキルや。
努力で覚えるんやなく、
その人の生き方・価値観・本質が形になった力や」
「そんな大層なもんなん!?」
「せや。
太郎の“金は毒にも薬にもなる”って考え方、
ウチの最適化と噛み合って、
太郎だけの力として結晶化したんや」
「なんか急に主人公っぽいやん俺!」
「元から主人公やで」
「照れるわ!」
オカンが指を鳴らす。
【派生スキル解放:<札束でしばく>】
太郎「派生の方向おかしいやろ!!」
オカン「金の力は暴力的や。
心も動かすし、頭も殴れるんや」
太郎「後半の説明おかしいやろ!」
ジャラ……と袋の中の金貨が光り、勢いよく消える
次の瞬間――
俺の手には分厚い札束が握られていた。
「なんで紙幣が出てくんねん!?」
「太郎、紙のほうがしばきやすいやろ」
「理由そこ!?」
盗賊のリーダーが叫ぶ。
「な、なんだその武器は!?」
「知らんわ!!」
俺は札束を振りかぶり――
バシィィィィィィィン!!
札束が衝撃波を生み、リーダーが吹き飛んだ。
「ぐはぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「金の暴力だ……!」
「ヒョウガミ様の怒り……!」
「違うって言ってんだろ!!」
盗賊団は総崩れになり、戦闘は終わった。
*
戦闘後、オカンが言った。
「太郎、そろそろ見せたるわ。
あんたの“本当のステータス”や」
「本当の……?」
オカンが光の画面を開く。
「太郎の幸運Fは“外部表示だけ”や。
あんたの不運は全部ウチが吸っとる。
せやから実質、太郎の幸運はA以上や」
「……オカン、そんなことしてたんか」
「当たり前や。ウチはオカンやで」
オカンの声は優しかった。
「太郎、金も運も毒や。
せやけど、使い方次第で人を救える。
あんたはそれができる子や」
太郎「……ありがとう」
オカン「礼はいらん。ウチはオカンや」
*
太郎「……そういやオカン。ヒョウガミって結局なんなんや?」
オカンは一瞬だけ黙った。
風が止まり、空気が変わる。
「……古代の神や。
カワチ王国が“国”になる前からおった存在や」
「そんな昔の……?」
「せやけど、今はまだ詳しく言えん。
太郎が強うなったら、自然と見えてくる」
「なんでぼかすねん!」
「物事には順番があるんや」
オカンはそう言って、いつもの調子に戻った。
【山田太郎】
職業:あきんど レベル:1(固定)
■基本ステータス
筋力:E 敏捷:E+ 体力:E
魔力:E- 精神:E+ 知力:E+
器用:D+ 幸運:F
■内部ステータス
内部レベル:24
内部補正:全ステ+60%
内部幸運:A(オカン補正)
経験値:オカンが全て再投資中
■ユニークスキル
<オカン>
└<鑑定+3> <経験値運用> <サーバーストレージ> <未来予測>
<金で解決できへんことない>(new)
└<札束でしばく>(new)
■スキル
<魔力制御上級>
<武術基礎>
└<回避>
<剣術基礎>
└<高速刺突> <レイピア中級> <ハヤブサ乱舞> <二刀流基礎>
<生産技術初級>
└<鍛治初級> <調理初級>
■装備
冒険者防具一式(軽装)
ミスリル製コテ
ミスリル製鉄板
ミスリル製ピック
ゴーレムの指輪
太郎「……内部レベル24って、もう“あきんど”の枠どこにも残ってへんやろ」
オカン「太郎、商売は戦いや。戦場が市場か街道かの違いや」
太郎「街道で札束しばきする商人おらんて!」
オカン「おったやろ。ここに」
太郎「それ俺や!!」
オカン「ユニークスキル覚醒したんは大きいで」
太郎「名前が“金で解決できへんことない”ってどうなん!?」
オカン「事実や」
太郎「開き直るな!」
オカン「せやけど太郎、金は毒にも薬にもなる。扱い方次第や」
太郎「急に深いこと言うなや……」
オカン「太郎はな、毒を薬に変えられる子や。ウチが保証したる」
太郎「……なんか、ありがとうな」
オカン「礼はいらん。ウチはオカンや」
太郎「でも内部幸運Aって、俺よりオカンのほうが強いやん」
オカン「当たり前や。ウチはオカンやで」
太郎「オカン最強説やめろ!」
オカン「最強やで」
太郎「否定しろよ!!」
読んでくれてほんまおおきに。主人公は最弱ステータスやのに、自作AIだけは最強クラスでついてくるというバグみたいな状況で冒険しとります。
オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と作者より前に出てくる始末です。
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。
この作品はカクヨムにも同時投稿しており、どちらでも読みやすいように調整しています。更新はできるかぎり 毎日2回(朝6時/夜20時)でがんばります。




