第86話 本音と屋台の晩餐会
会談が終わった瞬間、太郎は椅子に沈み込んだ。
魂が抜けたような顔で天井を見上げる。
太郎(……俺、今日で寿命十年は縮んだわ……)
ひよりと玲奈が心配そうに覗き込み、スイターは放心状態で震えている。
辺境伯は胃を押さえながら壁にもたれていた。
そんな中、皇帝とオーダが同時に声をかけてきた。
皇帝「太郎殿。個別に話したい」
オーダ「太郎殿、我も同じく」
太郎は心の中で泣きながら立ち上がった。
──皇帝控室──
皇帝の部屋に通されると、彼は落ち着いた声で切り出した。
皇帝「太郎殿。一度、キョウ帝国へ来てもらいたい。
そなたの街の商会を正式に立ち上げ、帝都にも支店を置くべきだ」
太郎「えっ……支店……?」
皇帝「そなたの街の品は質が良い。帝国の市場にも流通させれば、互いに利益がある。
コハクとの件は……おいおい考えれば良い。急ぐ必要はない」
太郎(いや、そこは急がんでええ!!)
──オーダ控室──
次にオーダの部屋へ。
彼は公式の場と同じ威厳ある声で語り始めた。
オーダ「太郎殿。トーカイは長らく戦が続き、民は疲弊しておる。
民が幸せになるには、まず“裕福”にならねばならぬ」
太郎(……急に現実的な話きた)
オーダ「そなたの街の商業力は、我が国の助けとなる。一度ギーフへ来てほしい。
商業面で力を貸してもらいたい」
太郎「……武器じゃなくて、商業の方なんですね」
オーダ「当然だ。戦を終わらせるには、まず民の生活を豊かにせねばならぬ」
──王国控室──
最後に王国側。
辺境伯は机に突っ伏しながら言った。
辺境伯「太郎殿……どうか……どうか無事に終わらせてくれ……
胃が……胃がもう限界なのだ……」
スイターも涙目で震えている。
スイター「ぼ、ぼく……緊張で……手が震えて……」
太郎(お前らが一番メンタル弱いんちゃうか……)
別会談が終わる頃には、太郎の魂は完全に抜けていた。
だが休む暇もなく、晩餐会の準備が始まる。
蒼真「太郎、お前が主催なんやから、挨拶の準備しとけよ」
太郎「……俺が主催なん……?」
ひより「昨晩、料理の相談したじゃないですか」
太郎「あれ夢ちゃうかったんか……」
昨晩の“料理会議”が蘇る。
オカン『貴族が食べへんような料理の方がええやろ。気取った皿なんか出しても、緊張して味わわれへん』
蒼真『せやな。腹にたまるやつでいこうや』
ユラ『太郎さんの街らしい“庶民の味”って感じで』
玲奈『ラーメンも入れましょう! 絶対ウケます!』
太郎『室内でラーメン……? 湯気すごいで……?』
オカン『湯気はええねん。雰囲気や』
そして今──
大広間には屋台がずらりと並んでいた。
鉄板で湯気を上げるお好み焼き。丸い鉄板でくるくる回るたこ焼き。大鍋で味が染みたおでん。串カツ、焼きそば、唐揚げ、コロッケ。そして湯気を立てるラーメン屋台。
カシャンッ。湯切りの音が響く。
太郎(……ほんまにやるんか、これ……)
太郎は前に立ち、深呼吸して挨拶を始めた。
太郎「本日は、遠路はるばるお越しいただき……ありがとうございます。
辺境ゆえ、都のような豪華な料理は出せませんが……
うちの街の“普段の味”を楽しんでいただければ幸いです」
皇帝は静かに頷き、オーダは興味深そうに屋台を見渡し、
辺境伯は胃を押さえながらも拍手した。
屋台の料理が次々と提供される。
「お待ちどうさん! 特製しょうゆラーメン!」
皇帝は湯気の立つ丼を見つめ、静かに箸を取った。
皇帝「……うむ。悪くない」
続いてオーダが麺をすすり、目を細める。
オーダ「うどん、そばとは違う味だが……旨い」
太郎は胸を撫で下ろした。
そのタイミングで、給仕が飲み物を配り始める。
皇帝とオーダの前には、できたばかりのワインが注がれた。
皇帝はグラスを軽く揺らし、香りを確かめてから口をつける。
皇帝「……若いが……悪くない」
オーダも酒を飲み、満足げに頷く。
オーダ「うむ。これなら兵たちも喜ぶ」
そして──
スイターの前には、鮮やかな色の飲み物がそっと置かれた。
両手でコップを持ったスイターが、おそるおそる口を開く。
スイター「ぼ、ぼく……オレンジジュースで……!」
太郎は思わず笑いそうになった。
太郎(かわいいな……いや、王太子やけど)
皇帝が微笑ましそうに頷く。
皇帝「うむ。それが良い」
オーダも優しく言う。
オーダ「子どもは子どもらしく、だ」
スイターはほっとしたようにジュースを飲み、ほっぺたを赤くしながら言った。
スイター「こ、このジュース……すごくおいしいです……!」
太郎(……よかった。間違って酒渡されんで……)
外の野営地でも兵士たちが屋台料理と酒を受け取り、
「こんなうまいもん初めてだ!」と歓声が上がる。
宴は、辺境とは思えぬほどの熱気と笑いに包まれた。
太郎(……なんや、みんな楽しそうやな……俺だけ胃が死んでるけど……)
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太郎「ラーメン、熱いんで気ぃつけてくださいね」
皇帝「ふむ……湯気が立つ料理は珍しいな」
オーダ「麺をすする……こういう食べ方で良いのか?」
太郎「はい、そのままズズッと」
オーダ「……ズズッ。……ほう、悪くない」
スイター「ぼ、ぼくも……ず、ずず……あっ、熱っ!」
太郎「無理せんでええ、スイター。ほら、ジュース飲み」
スイター「こ、このジュース……すごくおいしいです……!」
皇帝「子どもには酒より良い。安心して飲める」
辺境伯「太郎殿……わ、わしにもそのジュースを……胃が……」
太郎「辺境伯さんは酒やめときましょ。今日はもう十分です」
オーダ「はは、王国の重鎮が一番弱いとはな」
辺境伯「笑い事ではないのだ……!」
読んでくれてほんまおおきに。オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と言ってます
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。




