第82話 武王上洛、帝の間にて
コハク達が太郎の街に到着する数日前──
キョウ帝国の帝都──。
朝靄が晴れ、白亜の宮城が陽光を受けて輝き始める頃、
遠くから地鳴りのような足音が響き始めた。
見張り「……来たぞ。ギーフ国王オーダの軍勢だ」
黒鉄の甲冑をまとった兵が、果てしなく続く列を作って進んでくる。
その数、一万。
民A「これが……トーカイをまとめつつある男……」
民B「戦場の王が、帝都に……」
ざわめきが広がる中、
オーダは馬上で微動だにせず、
ただ帝城の奥にある“謁見の間”を見据えていた。
──その頃、宮城内部。
広大な謁見の間には、
赤い絨毯がまっすぐ玉座へと伸び、
左右には帝国重臣が整列していた。
玉座には、
キョウ帝国皇帝 ギオン=コウコ が静かに座している。
やがて、重い扉がゆっくりと開く。
侍従「ギーフ国王、オーダ殿──入る!」
オーダは一歩、また一歩と進み、
玉座の前で膝をついた。
オーダ「ギーフ国王オーダ、上洛いたしました。我が国の誠意として、貢物をお納めいただきたく存じます」
家臣たちが次々と箱を運び出す。金銀、武具、絹布、そして精巧な 茶器。
皇帝「よく参った。その忠義、確かに受け取った」
皇帝「オーダに従三位を授ける」
オーダ「身に余る光栄」
皇帝は小箱を取り寄せ、皇太子モンドに渡す。
モンド「オーダ様。陛下からの下賜品です」
箱を開けると、そこには見事な茶器が収められていた。
オーダが献上したものよりも、明らかに格が上だ。
オーダ「……帝国の技は、ここまでか」
皇帝「そなたの献上品も見事であった。だが帝国は、常に上を目指す国よ」
──謁見の儀が終わると、皇帝はオーダを別室へと案内した。。
食卓には帝国の料理が並び、二人は向かい合って腰を下ろす。
オーダ「皇帝は太郎という者をご存じか」
皇帝はワイングラスを置き、にやりと笑う。
皇帝「太郎の名は……トーカイでも噂になっておるか」
オーダ「カワチ王国で王太子が変わったのも太郎が絡んでいると聞く。最近、西国でビリケーン教の者がヒョウガミの眷属に追い出されたとも聞く」
皇帝「さきほどの茶器な。太郎の街で入手した素材が多く使われている。コハクが申すには、非常識なこと極まりない男だそうだ」
コハクはにっこり微笑む。
コハク「オーダはん、太郎はんはカワチ王国が呼び寄せた異世界人どす。魔王オーダを倒すはずが、カワチ王国をひっくり返したんですわ」
皇帝「そなたはビリケーン教寺院を多く焼き払ったそうだな。ビリケーン教はそなたを“魔王”に認定しているそうだ」
オーダ「欲にまみれた神官などいらぬ。信者を使って争いを起こす。成敗したまでのこと」
皇帝は愉快そうに肩を揺らした。
皇帝「太郎の街へ行くと聞いているが」
オーダ「うむ。この上洛の後、必ず訪ねる」
皇帝は即座に決断した。
皇帝「面白い。ならば、我も同行しよう」
重臣A「へ、陛下自ら……!」
皇帝「カワチ王国へ通達を送れ。三日後、太郎の街へ向かうと」
皇帝はコハクに視線を向ける。
皇帝「コハクよ。太郎の街へ赴き、このことを伝えてこい」
コハク「かしこまりました、父上」
こうして、武王オーダとキョウ帝国皇帝が同時に太郎の街へ向かうことが決まった。
帝都は騒然となり、太郎の街はまだ、その嵐の到来を知らない。
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皇帝「しかし……太郎という男、実に奇妙よな」
オーダ「奇妙では済まぬ。あれは常識を壊す男だ」
コハク「せやろ? うちも初めて会うた時、頭抱えましたわ」
皇帝「そなたが頭を抱えるとは珍しい」
コハク「父上、うちは普段から冷静どすえ?」
オーダ「いや、太郎の前では誰も冷静ではいられぬ」
皇帝「ふむ……ますます興味が湧くな」
コハク「オーダはん、覚悟しとき。太郎はんの街、想像の三倍は非常識どす」
オーダ「三倍で済めば良いがな」
皇帝「ははは! では我ら三人で確かめに行こうではないか」
コハク「父上、ほんまに楽しそうどすなぁ」
オーダ「……帝国の皇帝が楽しむ相手とは、太郎。恐ろしい男よ」
読んでくれてほんまおおきに。オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と言ってます
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