第77話 レッドヘル暗部、動く
ヒロガの街が太郎たちのソースとマヨネーズで賑わいを取り戻した、その夜。
広場の片隅に、赤い影がいくつも揺れていた。
赤いヘルメット。
赤い外套。
そして、手には禍々しい神棒。
ビリケーン教暗部──レッドヘル。
レッドヘル隊長「……太郎どもを排除せよ。ビリケーン様の教えを乱す者は、生かして返すな」
赤い影が一斉に跳び出した。
太郎「なんや!? 赤いの来た!!」
オカン「あんなん夜道で出会ったら漏らすで。色が不穏や」
太郎「オカンの感想が一番怖いわ!!」
レッドヘルたちは神棒を振りかざし、太郎たちへ襲いかかる。
しかし蒼真はすでに動いていた。
蒼真「……遅い」
くないが閃き、レッドヘルの腕を弾く。
レッドヘルA「なっ……見えん……!」
レッドヘルB「こいつ……手練れじゃ……!」
だが隊長が神棒を構え、蒼真のくないを真正面から叩き落とした。
カンッ!
レッドヘル隊長「効かん。われらには一切効かんぞ。この“邪気を払う神棒”の前では、あらゆる異端の力は無力……!
今ので貴様のくないの動きは見切った。次は──貴様自身に打ち返す!」
太郎「なんで自信満々やねんその棒! ただの赤い棒やろ!!」
隊長の言葉を聞いたレッドヘルたちは闘気を高め、神棒を両手で握りしめる。
蒼真は静かに息を整えた。
蒼真「……なら、見切れない軌道でいく」
蒼真は腰のホルダーから、八本のくないを抜き放つ。
レッドヘルA「八本!? 無茶じゃろ!」
レッドヘルB「まとめて叩き落とせばええだけじゃ!」
蒼真は目を閉じ、一本一本に淡い神気を灯す。
蒼真「……曲がれ」
八本のくないを一斉に投げる!
レッドヘル隊長「来い!! 全部叩き落として──」
くないは一直線に飛ぶ。
レッドヘルたちは神棒で打ち返そうとする。しかし──
レッドヘルC「なっ……曲がった!?」
レッドヘルD「なんで背中側から来るんじゃああ!!」
レッドヘルE「こんなに曲がるスイーパー見たことない!!」
太郎「野球の魔球か!!」
くないは直前で大きく軌道を変え、まるで生き物のように死角へ回り込む。
蒼真「神気をまとったくないは……意思を持つ」
レッドヘル隊長「バ、バカな……! 神棒で払ったはず……!」
次の瞬間、八本のくないがレッドヘルたちの足元・腕・肩を正確に打ち抜き、全員が地面に転がった。
レッドヘル隊長「ぐっ……反則じゃろ……こんな曲がり方……」
レッドヘルB「物理法則に……謝れ……」
レッドヘルC「これはデッドボールでわしらの勝ちじゃ……」
太郎「最後の意味わからん、でも蒼真、強すぎるやろ……」
晴斗「いやもう頼もしすぎるわ」
蒼真は倒れたレッドヘルの胸元から、一枚の封筒を抜き取った。
蒼真「……これは」
太郎「なんやそれ?」
蒼真は封筒を開き、中身を広げる。
晴斗「うわ、なんか黒い書類やな……」
蒼真「ビリケーン教から、お好み焼きギルドへの賄賂の記録だ。
さらに……これは──“ヒロガ焼きをビリケーン焼きに改名し、街の誇りを奪う計画書”だ」
太郎「はぁぁぁ!? 何してくれとんねん!!」
晴斗「ヒロガの魂を奪う気か!!」
オカン「名前泥棒は一番あかんやつや! ウチの財布からポイントカード盗むのと同じくらい許されへん!」
太郎「例えが生活感強すぎるわ!!」
タケベエ「……ヒロガ焼きは、ヒロガの魂じゃけぇの」
太郎「やられたらやり返すで。ビリケーン寺院に乗り込むぞ!!」
寺院の前に立つと、そこには見覚えのある顔があった。
大司教「ふふ……また会ったな、太郎よ」
太郎「また悪さしとったんかい! 今度はヒロガ焼きの名前まで奪おうとしてたやろ!」
大司教「名前などどうでもよい。重要なのは“ビリケーン様の福”が広がることだ」
太郎「福ちゃうやろ! 毒やろ!! 街の誇りを奪うんが福なわけあるかい!」
大司教「誇りなど、我らの教えの前では塵に等しい」
太郎「ほな聞くけどな──ヒロガ焼きのどこが塵やねん!!」
大司教「……形が雑」
太郎「言うたなコラァ!!」
晴斗「太郎、落ち着け!」
オカン「いや落ち着かんでええ。これは許されへん。形が雑って言われたらウチでもキレるわ」
タケベエ「形が雑じゃと……? ヒロガ焼きは魂じゃけぇの!」
──そのときだった。
寺院の周囲に、ドドドドッと地響きのような足音が広がった。
太郎たちが振り返ると、そこには──
巨大なしゃもじを掲げたヒロガの住民たちが、ずらりと並んでいた。
住人A「兄ちゃん! ワシらも助けちゃるけぇ!」
住人B「ヒロガ焼きはワシらの魂じゃけぇの!」
住人C「白い線もう一本買うけぇ!」
住人D「ビリケーン退散じゃああ!!」
太郎「最後の人、動機が食欲やん!」
オカン「食欲は正義や。腹が満ちたら戦も勝てるんや」
太郎「戦国武将みたいなこと言うな!!」
住民たちが掲げるしゃもじには、
「ビリケーン退散」
の文字が力強く刻まれていた。
タケベエ「これがヒロガの魂じゃ。敵をめしとる覚悟はできとる」
そのとき、雷鳴が空を裂いた。
寺院の上空の黒雲が、ゴゴゴゴ……と音を立てて渦を巻き始める。
蒼真「……魔力の濃度が異常だ」
ひより「なにが……来るの……?」
玲奈「嫌な気配……」
大司教「ビリケーン様の怒りを知るがいい!! この街を“福”で満たすのだ!!」
太郎「福ちゃう言うてるやろ!! ほんまに聞く耳ないなこのおっさん!!」
黒雲が裂け、巨大な影が姿を現し始めた──。
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太郎「……みんな、ほんまに来てくれたんか」
住人A「兄ちゃんが頑張っとるのに、家でゴロゴロしとれんわい!」
住人B「ヒロガ焼き守らんと、ワシらの晩飯が泣くけぇ!」
住人C「いや晩飯の心配かい!」
オカン「でも気持ちはわかるで。食は命や」
晴斗「いや、命の順番おかしいやろ!」
タケベエ「兄ちゃん、ワシらは味方じゃ。安心せぇ」
太郎「……ありがとう。なんか胸にくるわ」
住人D「泣くなや兄ちゃん! 泣いたらマヨがしょっぱなるけぇ!」
太郎「マヨは泣かへんわ!」
蒼真「……来るぞ。雑談はここまでだ」
ひより「え、今いいとこやったのに……」
玲奈「いや、ひよりちゃんも乗ってるやん!」
読んでくれてほんまおおきに。オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と言ってます
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。




