第76話 仁義なきお好み焼き戦争と悪魔の味
ヒロガの広場は、朝から異様な熱気に包まれていた。
祭りの日でもないのに、屋台が並び、子どもが走り回り、大人たちは酒を片手に「今日は勝負の日じゃ」と騒いでいる。
太郎「……なんやこの空気。完全に祭りやん」
晴斗「いや、祭りやろこれ。対決のついでに祭りしてるやん」
蒼真「むしろ対決が“祭りの口実”になっている気がする」
少し離れた場所で、玲奈とひよりが人混みを見ていた。
ひより「……人、多すぎ。アウェイってこういうことなんだ」
玲奈「でも太郎くんなら大丈夫だよ。なんか、そう思えるし」
ひより「根拠は?」
玲奈「……雰囲気?」
ひより「それ根拠じゃないよ」
タケベエが腕を組み、広場を見渡した。
タケベエ「ヒロガ焼きは、この街の誇りじゃけぇの。住人の気合いが違うんじゃ」
太郎「アウェイ感すごいな……」
オカン「気にせんでええ太郎。アウェイでも味で黙らせたらホームになるんや。味は国境も越えるし、ついでに常識も越えるで」
太郎「常識越えたらただの暴走や!!」
司会が壇上に立ち、声を張り上げた。
司会「本日の対決は──ヒロガ焼き VS 大阪風お好み焼き!! 審査するのは、ヒロガの皆さんです!」
太郎「……はい負けた」
晴斗「いや、まだ始まってへんやん!」
蒼真「票が地元に偏るのは当然だ。覚悟しておけ」
太郎「蒼真、慰める気ゼロやな」
太郎は気を取り直し、材料を並べた。
真・オタオタソースの瓶を開けると、濃厚な香りが広場に広がり、観客がざわつく。
観客A「なんやこのええ匂い……」
観客B「オタオタソースより深い香りじゃの……」
観客C「腹減ってきたわ……」
玲奈「……すごい匂い」
ひより「うん。これは勝てるやつだよ」
太郎は鉄板を熱しながら、前に食べたヒロガ焼きの味を思い出していた。
太郎「……なんか足りんかったんよな。せや、あれや……悪魔の味や……!」
晴斗「悪魔の味ってなんやねん!」
太郎「マヨネーズや!!」
蒼真「確かに……中毒性がある」
オカン「邪道言われても知らんで。邪道は正道より強いときあるんや。ウチの人生ほぼ邪道やし」
太郎「自分の人生を邪道でまとめんな!!」
玲奈「白い線……きれい」
ひより「絶対おいしいやつだよね、これ」
太郎はキャベツを刻み、豚肉を並べ、粉と水を混ぜて生地を作る。
鉄板に落とすと、じゅわっと音が響き、香ばしい匂いが広場に広がった。
観客A「ええ音じゃ……」
観客B「腹が鳴るわ……」
観客C「ヒロガ焼きよりええ匂いせんか……?」
ヒロガ焼き側の職人が焦り始める。
職人「お、おかしい……! 匂いで負けとる……!」
太郎は焼き上げたお好み焼きに、真・オタオタソースをたっぷり塗り、その上に白い線を描いた。
観客A「なんじゃその白い線は!?」
観客B「邪道じゃろ!!」
観客C「……でも、うまそうじゃの……」
観客D「白い線……なんか魔力感じる……」
太郎「魔力は入ってへん!」
オカン「味の魔力はあるけどな。人を堕落させる魔力や」
太郎「言い方ァ!!」
ひより「ほら、みんな気になってる顔してる」
玲奈「うん……食べたい顔だよね」
審査が始まった。
観客が一口食べるたびに、表情が変わる。
観客A「……うまっ」
観客B「なんじゃこの濃厚さ……!」
観客C「白い線のやつ、クセになるわ……」
観客D「ヒロガ焼きより好きかもしれん……」
ひより「みんな、顔変わってる……」
玲奈「うん。太郎くんの勝ちだよ、味は」
太郎(いける……これは勝てる……!)
最終投票が終わり、皆が壇上を見つめている。
司会が結果を掲げた。
司会「勝者── ヒロガ焼き!!」
太郎「1票差て!!」
晴斗「惜しすぎるやろ!!」
蒼真「アウェイでは仕方ないな」
タケベエ「まあ、ようやったで。かばちたれ」
オカン「負けたけど、顔は勝ったみたいやな太郎。あんた今日“顔面勝利賞”や」
太郎「いらん賞つけんな!!」
玲奈「惜しかったね……でも、すごかったよ」
ひより「うん。私なら太郎くんに入れてた」
しかし──
試合が終わった瞬間、太郎の屋台に人が押し寄せた。
観客A「その真・オタオタソース、売ってくれんか!」
観客B「白い線のやつも欲しいんじゃ!」
観客C「マヨネーズいうんか? あれ中毒性あるのぉ!」
観客D「デーツも売っとるんか!?」
観客E「ワシ、三本買うで!」
観客F「ワシは五本じゃ!」
観客G「ワシは……金がない……!」
太郎「最後の人、無理せんでええ!」
太郎「え、ええけど……?」
オカン「高値で売るで。勝負は負けても商売は勝つんや」
晴斗「オカン商売はえぐい!」
蒼真「まあ、需要と供給のバランスだ」
タケベエ「売れたら正義じゃけぇの」
ひより「わ、すごい人……!」
玲奈「太郎くんのソース、人気だね」
ソースもマヨもデーツも飛ぶように売れ、
ヒロガの広場は活気を取り戻した。
子どもたちは走り回り、
大人たちは「白い線のやつ、もう一本買うか」と騒ぎ、
屋台は行列が絶えなかった。
太郎「……なんや、負けた気せぇへんわ」
タケベエ「試合には負けたが……勝負には勝ったのぉ」
オカン「次はもっと儲けるで。太郎、財布の準備しときや。破裂するで」
太郎「財布破裂するほど売る気なんかい!!」
その頃──
お好み焼きギルドとビリケーン教は大騒ぎしていた。
ギルド「邪道じゃ! 邪道じゃああ!!」
ビリケーン教「白い呪いの線を広めるなぁぁ!!」
ギルド「マヨネーズは反則じゃ!!」
ビリケーン教「白い線は悪魔の呪いじゃ!!」
オカン「ほっとき。売れたら正義や。邪道は売れたら正道になるんや」
太郎「名言みたいに言うな!!」
こうしてヒロガの街は、太郎たちのソースとマヨネーズによって活気を取り戻した。
そして──
新たな騒動の火種が、静かに燃え始めていた。
────────────────────────
太郎「……なんか緊張してきたわ。手ぇ震えてきた」
晴斗「震えてんのは腹減ってるだけちゃう?」
蒼真「太郎、まずは落ち着け。キャベツが逃げるぞ」
太郎「キャベツは逃げへん!」
ひより「でも太郎くん、顔ちょっと青いよ?」
玲奈「うん……ソースの匂いで酔ってない?」
太郎「酔うかい!」
タケベエ「おどれら静かにせぇ! 鉄板の前は戦場じゃ!」
晴斗「戦場にしては匂いが平和すぎるけどな」
蒼真「……太郎、マヨネーズの準備は?」
太郎「ここにある! 悪魔の白いやつ!」
ひより「名前の付け方よ!」
玲奈「でも絶対おいしいよね、それ」
読んでくれてほんまおおきに。オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と言ってます
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。




