第74話 ヒロガ焼きと失われたソース
タケベエの船が波を切り、ヒロガ本土へ向かって進んでいく。
潮風の中に、鉄板で焼けた香ばしい匂いが混ざり始めた。
太郎「……なんやこの匂い。腹減ってくるわ」
オカン「そらヒロガ焼きの匂いや。ええ匂いやけど……ウチの方が上品やで。ヒロガ焼きは“野生の香り”や」
太郎「野生言うな! 向こうの人に聞こえたら刺されるわ!」
タケベエ「また訳のわからん土地の話を……おおさか? そがぁな国知らんわ」
太郎「(また始まった……)」
船が港に近づくにつれ、煙とソースの甘い香りが濃くなる。
しかし――街の雰囲気はどこか沈んでいた。
港に着くと、ヒロガ焼きの屋台が並んでいた。
木製の屋台に鉄板が据え付けられ、布の暖簾が揺れている。
だが――
多くの屋台は暖簾を下ろし、鉄板の火も落ちていた。
蒼真「……活気がないな」
タケベエ「オタオタソースが手に入らん店は、もう焼けんのじゃ」
太郎「ソースひとつでここまで……?」
タケベエ「ヒロガのもんは、オタオタソース中毒じゃけぇの。あれがなけりゃ“味がせん”と思い込んどる」
太郎「中毒ってなんやねん!」
オカン「ソースは魔法やからな。中毒になってもしゃあないわ。ウチもソース切れたら禁断症状出るし」
太郎「出るんかい!! 病院行け!!」
太郎たちはキッチンカーでお好み焼きを作り出す。
ソースの香りが広がり、通りすがりの人々が興味深そうに覗き込む。
太郎「よっしゃ、焼くで!」
オカン「任しとき!」
だが――その前に、黒いローブを着た男たちが現れた。
ギルド男「ここでの販売は許可できん。ヒロガ焼きギルドの許可証はあるか?」
太郎「ワイらはヒロガ焼きやなくて、お好み焼きや!」
タケベエ「そうじゃ。これはヒロガ焼きとは違う料理じゃけぇ、問題ないじゃろ」
ギルド男「屁理屈を言うな。販売したければ――
一週間後の“ヒロガ焼き対決”で入賞してみせろ。 話はそれからだ」
太郎「なんで料理勝負に巻き込まれんねん!!」
オカン「料理勝負は男のロマンや! 逃げたらアカン!」
太郎「勝手にロマン押し付けんな!!」
そのとき、路地裏から弱々しい声が聞こえた。
「……た、助けてくれ……」
倒れていたのは、ボロボロの職人だった。
タケベエが抱き起こすと、男は震える手でメモを差し出した。
職人「わしは……オタオタソース工房の職人じゃ……ビリケーン教が工房を占拠して……ソースも……デーツも……全部奪われた……」
太郎「デーツってなんや?」
職人「南蛮の果物じゃ……南蛮の船は数年に一度しか来ん……前回、工房が数年分を買い占めた……じゃが今は……ビリケーン教の手の中じゃ……」
タケベエ「つまり、デーツはもう入手不可能じゃ」
太郎「いや、デーツなら……ワイの街のダンジョンで取れるで」
タケベエ「はぁ!? なんでダンジョンで果実が育つんじゃ!」
太郎「知らん! ダンジョンの気まぐれや!」
職人「で、デーツが……あるんか……?」
太郎「サーバーストレージに大量にある」
タケベエ「なんじゃその聞いたこともない倉庫は!」
太郎「説明してもわからんやつや!」
タケベエ「ほんならデーツは“ある”んじゃな?」
太郎「ある」
タケベエ「いや無理じゃろ」
太郎「ある!」
タケベエ「無理じゃ!」
太郎「なんでお前が決めんねん!!」
オカン「アンタら落ち着き! デーツはあるんや! ウチが保証したる!」
太郎「なんでオカンが保証人やねん!!」
タケベエ「……ほんなら最初からそう言えぇや!!」
職人はさらに続けた。
職人「じゃが……もう一つの素材……魔牡蠣のオイスターソースが……今は手に入らん……」
タケベエ「ノーミ島の海に棲む魔牡蠣じゃ。魔力が強いほど旨味があるが……普通の漁師では近づけん。海が荒れとるけぇの」
蒼真「つまり、次の目的地はノーミ島か」
太郎「なんでソース作るのに魔獣と戦わなアカンねん!」
オカン「美味しいもんは命がけや。料理は戦いや。覚悟決めぇ太郎!」
太郎「料理に覚悟いらんわ!! 家庭料理の範囲超えとる!!」
タケベエは薙刀を担ぎ、にやりと笑った。
タケベエ「かばちたれな。ほんなら行くぞ――ノーミ島へ!」
太郎「また海かい!!」
こうして太郎たちは、ヒロガ焼き対決に勝つための“魂のソース”を求め、ノーミ島へ向かうことになった。
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タケベエ「ノーミ島へ行くんはええが……覚悟しとけぇよ。魔牡蠣は洒落にならんけぇ」
太郎「なんでソース作るだけで命がけやねん!」
オカン「美味しいもんは命かけて作るんやで」
太郎「そんな重い料理聞いたことないわ!」
タケベエ「かばちたれな。ヒロガ焼きは魂じゃ」
太郎「魂の方向性が間違っとるんよ!」
ひより「で、でも……太郎さんのソース、きっと勝てます……!」
蒼真「問題は魔牡蠣の確保だ。太郎、逃げるなよ」
太郎「逃げへんけど……胃が痛いわ!」
オカン「大丈夫や。ウチがついとる」
タケベエ「ほぉ、心強いのぉ。……ヒョウガミ」
オカン「誰がヒョウガミやねん!!」
太郎「そこだけは絶対に訂正せぇ!!」
読んでくれてほんまおおきに。オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と言ってます
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。




