第69話 ミスリルの咆哮と塾長の最期
20階層の階層主バンパイア・カーミラは、太郎の包丁と晴斗の剣で切りつけてもコウモリ化し
攻撃が通じなかったが、玲奈の氷結魔法で動きをとめ、ひよりの聖魔法でとどめ。
敵は何もできずに崩れ落ちた。
太郎「よし、次いくで」
オカンが満足げに頷く。
ミスリルチャリは荒れた道も坂道も苦にせず、
太郎たちは迷宮を風のように駆け抜けていく。
晴斗「これ、ほんま反則やろ……」
太郎「男のロマンや!」
オカン「ロマンは腹の足しにならんけどな」
やがて、30階層の階層主の扉が見えてきた。
その前には、疲れ切った冒険者たちが地面に座り込んでいた。
「はぁ……もう足が棒じゃ……」
「武器がボロボロで使いもんにならん……」
「魔力切れで、立っとるだけで精一杯じゃ……」
「この先、進む気力が湧かんのぉ……」
太郎はキッチンカーを展開した。
太郎「ほな、商売の時間や!」
オカン「ここは地上の十五倍でいこか。客も喜ぶ、うちらも喜ぶ、WIN-WINの関係や」
晴斗「強気すぎるって!!」
しかし――売れる。
「う、うまい……!」
「十五倍でも安いわ……!」
「たこ焼き……沁みる……!」
玲奈「オカン、悪い顔してるよ」
オカン「商売は勝負や。勝てるときに勝つんが基本や」
太郎「悪どいけど……まあええか!」
十分に稼いだあと、太郎たちは階層主の扉を開けた。
中は広い洞窟のような空間。
その奥で、巨大な蛇がとぐろを巻いていた。
30層 階層主 クエバ・サーペント。
蒼真が影を伸ばし、動きを封じる。
太郎は包丁を構えた。
太郎「ほな、いくで!」
包丁が閃き、
クエバ・サーペントは一瞬で沈んだ。
太郎「なんか……拍子抜けやな。」
ひより「でも……太郎さん、すごかった……」
オカン「太郎の包丁は“食材”と判断した瞬間に性能三倍になるんや」
そのままミスリルチャリでさらに奥へ進む。
迷宮は湿気が増し、魔物の気配も濃くなる。
それでもチャリは軽快に進み、
太郎たちは4日で四十階層に到達した。
四十階層の扉の前にも、疲れ切った冒険者たちが座り込んでいた。
「もう限界じゃ……」
「腹より先に気力が尽きた……」
「この階層、魔物が強すぎるんじゃ……」
太郎はキッチンカーを展開した。
太郎「ここも商売チャンスやな」
オカン「地上の二十倍でいこか。ここは“絶望プレミアム価格”や」
当然、列ができる。
そこへ、列を押しのけて割り込んでくる数名の男たちがいた。
塾長「どけぇや! ワシらが先じゃ!」
取り巻き「腹減っちょるんじゃ、のけぇ!」
太郎「おい、割り込みはあかんで」
男たちが振り返る。
ビリ塾の塾長と、その取り巻きだった。
塾長「なんじゃ、お前……またヒョウガミに告げ口でもするんか?」
太郎「告げ口なんかせえへんわ! そもそもオカンはヒョウガミちゃう!」
取り巻き「ほぉ?? ほんなら誰がヒョウガミなんじゃ?」
太郎「そんなん知らんわ!!」
塾長「ふん……どっちでもええわい。ヒョウガミもろとも、ここで終わりじゃ!」
太郎「ヒョウガミちゃう言うてるやろ!!」
塾長は舌打ちし、取り巻きとともに階層主の部屋へ逃げ込んだ。
太郎たちはすぐに追いかけた。
部屋に入ると、今までの階層主の部屋とは比べ物にならないほど広大だった。
扉が閉まり、塾長が杖を掲げる。
塾長「ははは! お前らもこれまでじゃ!ビリケーン神殿から頂いた“従魔の杖”! これがあれば、この階層主も操れるんじゃ!」
取り巻き「塾長、やっちゃりましょうや!」
取り巻き「ヒョウガミも終わりじゃ!」
太郎「ヒョウガミちゃう言うてるやろ!!」
その瞬間、床が揺れた。
ミスリルゴーレム(極大)が静かに姿を現した。
吠えると、無数のミスリルゴーレム(中型)が湧き出す。
塾長「見よ! これがワシの――」
ドォンッ!!
極大ゴーレムが一歩踏み出した瞬間、
塾長と取り巻き数名が――
跡形もなく踏み潰された。
太郎「え……?」
晴斗「……踏んだね」
蒼真「足元におったな。あれだけ大きいと足元見えないよな」
玲奈「……合掌」
太郎「なんやこの雑な最期……!」
オカンの目が光った。
オカン「太郎、お宝や! 一匹も残すな!ミスリルは“拾った瞬間に利益”や!」
太郎「はいはい、わかったわ!」
シマナで鍛えた装備は、ミスリルゴーレムの硬い体を
バターのように切り裂いた。
晴斗の剣が閃き、蒼真のくないが貫き、
太郎の包丁が中型ゴーレムを次々と解体していく。
ドロップ品はすべてミスリルインゴット。
玲奈「これ……地上で売ったら大金持ちじゃない?」
オカン「ふふふふふ……! ミスリルは家計の味方や……!」
太郎「オカンの(笑)が止まらん!!」
最後に残った極大ゴーレムも、
太郎の包丁の一閃で粉砕された。
大量のミスリルインゴットが転がる。
オカン「全部拾うで!! 落としたら罰金や!!」
太郎「はいはい、わかってるって!」
────────────────────────
太郎「……しかし、塾長らの最期、雑すぎひん?」
晴斗「うん、あれはもう事故やね」
蒼真「迷宮における不注意は死を招く……典型例だ」
玲奈「でもさ、あの踏み潰され方はちょっと笑ったよ」
ひより「ひ、ひどい……でも……ちょっとだけ……」
太郎「ひよりちゃんまで!? 優しい子やと思ってたのに!」
オカン「アンタら、しゃべっとらんとミスリル拾いな!」
太郎「オカン、笑顔が怖いって!」
晴斗「いや、あれはもう“笑顔”やなくて“戦利品の顔”や」
蒼真「……確かに。光っている」
玲奈「ミスリルよりオカンの目のほうが輝いてるよ」
太郎「やめてくれ! オカンが本気出すと誰も止められへん!」
オカン「何か言うたか? 太郎」
太郎「なんも言ってません!!」
読んでくれてほんまおおきに。オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と言ってます
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。




