第62話 月の殿ツクヨミと古き残滓
そのとき、重い扉が音を立てて開いた。
ツクヨミ「お姉さま、状況はどうなっていますでしょうか?」
スサノオ「そんなやつらに頼らなくても俺が行くぞ」
アマテラス「……ツクヨミ、スサノオ。来てくれたのですね」
黒い巫女服の女性と、武人のおっさんが立っていた。
玲奈「……黒衣の女……?」
太郎「玲奈、やめとけや……!」
ツクヨミは無表情のまま、玲奈の視線を受け止めた。
スサノオ「アマテラス姉さま。外部の者を神殿に入れるなど、正気とは思えませんが?」
太郎「なんやとコラ!」
スサノオが一歩踏み出す。
その気迫に、太郎は思わず足を引いた。
オカン「アンタ、うちの子に何してんねん? その眉間のシワ、アイロンかけたろか?」
スサノオ「ッ……!?(ま、眩しい……後光……!?)」
太郎「オカン、それただのヒョウ柄や!」
オカン「ヒョウ柄は万能や! 威圧もできるし、迷彩にもなるし、夜道も安全や!」
太郎「最後の用途なんやねん!」
アマテラス「二人とも、落ち着いてください」
アマテラス「まず……私たちの名について説明します。
“アマテラス”“ツクヨミ”“スサノオ”という名は、代々受け継がれる――役職の名前です。
古き神々の名前からいただいたと聞いています」
太郎「役職……?」
アマテラス「はい。私は“太陽の殿”。 昼の結界と神剣を司る者。
ツクヨミは“月の殿”。 夜の結界と浄化を司る者。
そしてスサノオは神殿護衛騎士長。 神殿を守る剣です」
玲奈「じゃあ……ツクヨミ様の黒い服は……黒衣の女じゃなくて……?」
ツクヨミ「これは月の殿の正式な装束です。黒は“夜”を象徴します」
玲奈「……疑ってすみません……」
ツクヨミ「構いません。黒衣の女が現れたのなら、疑われて当然です」
蒼真は手のひらに乗せた金属片を見せる。
蒼真「ビリケーン教の紋章や。外から来た連中が落としていった」
アマテラス「……ビリケーン教……まさか、あの邪教が……」
太郎「黒衣の女も見たって証言がある。ツクヨミ様の服に似てたらしい」
ツクヨミ「……心当たりがあります」
アマテラスは本殿の壁画へ歩み寄った。
アマテラス「では……伝承をお話ししましょう」
壁画には、古代の戦いが描かれていた。
アマテラス「古代、ビリケーンは“幸福を与える神”として崇められましたが……
裏では、人々の欲望を吸い取り力に変える邪神でした。
その暴走を止めたのが、ヒョウガミ様です」
太郎「なんでオカンを見るんや!」
オカン「うちは神ちゃうわ!」
オカン「せやけど“欲望吸い取る神”って……ビリケーン、ただのブラック企業やん!」
太郎「言い方ァ!」
アマテラス「ビリケーンは異界へ追放されました。
しかし……“呪い”だけはこの世界に残ったのです」
太郎「呪い……?」
アマテラス「その残滓が……後世の人間に影響を与えることがあります」
玲奈「じゃあ……黒衣の女は……?」
アマテラスは静かに目を伏せた。
アマテラス「黒衣の女――ヒルコは、私とツクヨミの兄弟弟子でした。
先代アマテラスの元で、共に修行した仲間です」
太郎「えっ……仲間やったんか?」
ツクヨミ「はい。
しかし修行の最中……ヒルコだけが“残滓”に触れてしまったのです」
アマテラス「その日から、ヒルコの神気は不安定になり……
結界に触れるだけで体調を崩すようになりました」
玲奈「そんな……」
アマテラス「神殿は彼女を“保護”という名目で……地下に隔離しました」
ツクヨミ「私たちは……会いに行きたかった。
でも、役職継承の修行で……ヒルコに会う時間が取れなかった」
アマテラス「その孤独を……ビリケーン教に利用されたのです」
太郎「……見捨てられたと思ったんやな」
アマテラス「はい。
そして……神剣を奪い、姿を消しました」
蒼真「シーラが追ってた黒衣の女……あれがヒルコってことか」
アマテラス「おそらく。
ヒルコは神気が乱れると、周囲の空気が揺らぎます。
それが“黒衣の女”として目撃されたのでしょう」
玲奈「……そんな過去が……」
ツクヨミ「シーラがヒルコと思われるものを追ったのですが、そこで何者かに攻撃を受け負傷しました。その場所が神殿地下の“禁足区域”です」
スサノオ「俺が先に行く!」
オカン「うちが先や!」
太郎「なんでやねん!」
オカン「危ないとこは年長者が行くんや! 人生経験の差を見せたる!」
スサノオ「年長者……? あなた、何歳だ……?」
オカン「レディに年齢聞くなや!!」
太郎「お前が言うな!!」
アマテラス「どうか……ヒルコを、そして神剣を……取り戻してください」
太郎「しゃあない……行くか!」
──イズモ大神殿、禁足区域へ。
太郎たちの次なる戦いが始まる。
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太郎「……禁足区域か。なんか嫌な予感しかしないんやけど」
玲奈「そりゃ“禁足”って書いてある時点でロクな場所じゃないよ……」
蒼真「まあ、行くしかないわな。ヒルコを放っとくわけにもいかんし」
スサノオ「俺が先頭に立つ。お前たちは後ろからついてこい」
太郎「なんでお前の後ろ歩かなあかんねん!」
オカン「太郎、文句言わんとき。危ないとこは強い人に任せるんが一番や」
スサノオ「……今のは褒められたと受け取っていいのか?」
オカン「褒めてへん。うちは太郎を守るだけや」
太郎「オカンが一番強いやんけ!」
玲奈「……ほんとに行くの? あの地下……」
蒼真「行くで。ビビってる暇はない」
ツクヨミ「ヒルコ……どうか無事で……」
アマテラス「皆さま、どうかお気をつけて」
太郎「よっしゃ、行くで! 禁足区域、突入や!」
読んでくれてほんまおおきに。オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と言ってます
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。




