第61話 白虎シーラとイズモの異変
ひよりの治癒魔法が白虎の体を包み、
裂けた傷がゆっくりと閉じていく。
白虎「……あったかい……」
ひより「もう大丈夫……少し楽になった?」
白虎は弱々しくうなずいた。
オカンは白虎をじっと見つめ、手をかざす。
オカン「<鑑定>」
光が白虎を包み、情報が浮かぶ。
オカン「聖獣・白虎(幼体)……名前は“シーラ”や」
太郎「聖獣!? なんでこんなとこに……?」
蒼真「俺も初めて見たぞ……」
シーラは震える声で語り始めた。
シーラ「……神剣……盗まれた……わたし……犯人を追った……
でも……返り討ち……
逃げて……ここまで……」
ひより「そんな……ひとりで……」
シーラ「……ご主人……巫女アマテラス様に……申し訳……ない……」
太郎「アマテラス……? 誰やそれ」
シーラ「……アマテラス様は……イズモ大神殿の巫女様……神剣を守る……お役目……」
シーラはオカンの前にぺたりと頭を下げた。
シーラ「……お願い……聖都イズモまで……同行して……ヒョウガミ様……」
オカン「うちはヒョウガミちゃうで。オカンや」
シーラ「……でも……そのお姿……神の気配……強い……」
オカン「これはただの大阪マダムの正装、ヒョウ柄や!神扱いすな!」
太郎「いや、ヒョウ柄で光っとったら勘違いされるやろ……」
オカン「光ってへん! これは“脂のテカり”や!!」
太郎「余計あかんわ!!」
翌朝。
太郎たちはシーラを連れて聖都イズモへ向かった。
街道に入ると、空気が重くなる。
蒼真「……なんか、空気が淀んでねぇか?」
シーラ「……イズモの結界……弱まってる……このままだと……邪神も……入ってこれる……」
太郎「邪神!? そら急がなあかん!」
ひより「シーラちゃん、いったん大神殿に戻って報告を」
シーラ「……うん……任せて……」
シーラは光に包まれ、大神殿へ転移していった。
オカン「転移ええなぁ……うちも欲しいわ。買える?」
太郎「売ってへんわ!!」
聖都イズモに入ると、街は異様なほど慌ただしくなっていた。
住民A「神剣が盗まれたらしいけん、怖いわ……」
住民B「結界が弱まっとるけぇ、神官さんらも大変そうだわ」
住民C「邪神が来るんじゃないかって噂もあるで……」
太郎「うわぁ……噂だらけやな」
蒼真「太郎、俺は神殿周りを調べてくる。お前は情報集め頼む」
太郎「ほな、たこ焼きとお好み焼き売りながら聞き込みや!」
オカン「情報は胃袋からや! 食わせたら口も軽くなる!」
太郎「悪徳スパイの発想やん!」
太郎はキッチンカーを開き、たこ焼きとお好み焼きを焼き始めた。
客A「おぉ……なんだぁこのお好み焼き……ヒロガのとは違うなぁ……」
客B「ほんに珍しい味だわ……でも、うんめぇなこれ!」
太郎「おおきに!」
オカン「この地域もヒロガ風が主流なんやろ……悔しいわ……!」
客C「兄ちゃん、この“ヒョウガミ焼き”もう一枚くれんか?」
オカン「ちゃうわ! 元祖お好み焼きや!!」
太郎「なんでヒョウガミ焼きになっとんねん……!」
客C「だってヒョウガミ様のおる屋台やし……ヒョウガミ様の料理かと思うたわ」
オカン「うちはヒョウガミちゃう言うてるやろ!!」
オカン「ヒョウ柄着てるだけで神扱いとか、どんだけ信仰心ゆるいねん!」
太郎「言い方!!」
太郎は焼きながら、客から情報を聞き出していく。
客A「神剣が盗まれたんは昨夜のことらしいで」
客B「最近、外から来た怪しい連中がおったけん……あれが犯人じゃないかって噂だわ」
客C「黒い服の女を見たって人もおるけんね……」
太郎「黒い服の女……?」
風が木の葉を巻き上げ、
その中心に蒼真の姿がふっと現れた。
太郎「おおっ……なんや急にカッコつけて出てきたな」
蒼真「うるせぇ。急いで戻ってきたんだよ」
蒼真は息を整え、真剣な表情で報告を始めた。
蒼真「神殿周りを調べてきた。
昨夜、黒い服の女が神殿の裏門から出ていくのを見たって証言が複数あった」
太郎「黒い服の女……やっぱり噂は本当か」
蒼真「あと、外から来た怪しい連中が食事をした店にこれが落ちていた」
蒼真が差し出したのは、足の裏をかたどった紋章のバッジ。
ひより「それって……ビリケーン教信者の証?」
玲奈「まさか……ここまで来てるの?」
蒼真「可能性は高いな。それと――神殿の結界が弱まってるのも確認した」
太郎「マジか……いやな予感しかせぇへんな」
太郎が眉をひそめたその瞬間――
オカン「太郎、お客さんよーさん並らんどるんやから、早よ焼いたってや」
太郎「緊張感ないな!!」
晴斗「いや、むしろこの空気で商売できるのすげぇよ……」
太郎「なんでシリアスと屋台が同時進行やねん!」
オカン「人生はバランスや。焼きながら考えたらええねん」
オカン「悩みは鉄板の上で蒸発させるんや!」
太郎「名言風にするな!」
太郎たちが話していると、
白い衣をまとった巫女姿の女性が三名、深々と頭を下げて待っていた。
巫女A「太郎様、オカン様……大神殿よりの正式なご招待にございます」
巫女B「どうか、巫女アマテラス様のもとへ……」
巫女C「お急ぎいただけますと幸いです」
太郎「うわ……なんか急に格式高なったな……」
オカン「うちは神ちゃう言うてるのに、なんでこんな丁寧やねん……」
巫女たちはオカンのヒョウ柄を見て、
なぜかさらに深く頭を下げた。
巫女A「ヒョウガミ様……どうかお導きを……」
オカン「ちゃう言うてるやろ!!」
太郎「もう定着してもうてるやん……」
太郎「今日は早じまいやな……」
オカン「売上減るやんか!」
太郎「空気読めや!!」
大神殿の巨大な扉が開く。
白い光が満ちた神域の間――
その中央に、巫女アマテラスが静かに立っていた。
その横にはシーラの姿もある。
アマテラス「……ヒョウガミ様。よくぞお越しくださいました」
オカン「だからうちはヒョウガミちゃうって言うてるやろ!」
アマテラス「え……? ですが、そのお姿……私どもの知る……いえ、実際に見ていただくほうが早いですね」
アマテラスは太郎たちを奥の部屋へ案内した。
そこには、壁一面にレリーフが刻まれていた。
玲奈「これ……ヒョウガミ?」
太郎「豹頭の……女性やな」
オカン「ウチと全然ちがうやん」
太郎「ほんまや」
勇者たち「ほんまや」
アマテラス「ほんまや!!」
オカン「全員で言うなや!!」
アマテラスは表情を引き締めた。
アマテラス「すみません……なぜ同じような姿と思ってしまったのか……」
太郎「まぁええわ。呼び出したんは話があるんやろ、聞こか」
アマテラス「ありがとうございます。
実はシーラから聞いているかと思いますが、この大神殿にあった神剣が盗まれてしまったのです。
神剣は結界を守るためのもの。
このままでは……過去に追放した邪神が再びこの地に入ってきます」
太郎「マジか……!」
アマテラス「はい。ヒョウガミ様が来られたのでお力を借りたいと思い、お呼びしたのですが……」
そのとき、扉が開いた。
────────────────────────
太郎「しかし……ヒョウガミ扱い、完全に定着してもうたな」
オカン「うちは大阪のオカンや! 神格ちゃう!」
蒼真「いや、あのヒョウ柄の威圧感は神超えてるぞ」
ひより「オカンさん、歩くだけで光ってますし……」
オカン「これは保湿クリームのツヤや言うてるやろ!」
玲奈「でも“ヒョウガミ焼き”はおいしかったよ」
太郎「勝手に名物化すな!」
晴斗「もういっそ神殿前に店出したら? ご利益つきで」
オカン「ご利益つけたらホンマに神扱いやんか!」
太郎「……でも売れそうなんが腹立つねん」
読んでくれてほんまおおきに。オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と言ってます
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。




