第60話 神の国シマナへ
砂漠を抜けると、景色は一気に変わった。
乾いた大地は次第に湿り気を帯び、草が増え、やがて畑と家々が見えてくる。
太郎たちは村の手前でラクチンたちを止めた。
太郎「……ここでお別れやな、ラクチン。今までほんま助かったで。ありがとうな」
ラクチンは鼻を鳴らし、太郎の手に頭を寄せてくる。
ひより「太郎さん……なんだか寂しいですね」
太郎「しゃあない。ここから先は砂漠ちゃうし、ラクチンらは砂漠のほうが居心地ええやろ」
蒼真「村の人が引き取ってくれるってよ。砂漠に戻る旅人も多いらしいし、ちょうどいいだろ」
太郎「そらよかったわ。無理に連れてくよりええ」
太郎はラクチンの背を軽く叩いた。
太郎「ほな、元気でな。また砂漠行くときは頼むで」
ラクチンは名残惜しそうに鳴き、村の人たちに連れられていった。
オカン「ラクチン、またな! 次会うときは“ラクチンポイントカード”作っとくで!」
太郎「勝手にポイント制度作るな!」
街道に入ると、異様な光景が広がっていた。
太郎「……なんやこれ。像か?」
街道の両脇に、無数の“妖魔の像”が整列して並んでいる。
石像のように動かないが、どれも不気味な気配を放っていた。
蒼真「気をつけろ。あれ……生きてるぞ」
太郎が一歩近づいた瞬間、
像の表面がバリッと割れ、中から妖魔が飛び出してきた。
太郎「やっぱりかい!!」
ひよりが前に出る。
ひより「……<聖域>!」
光が広がり、妖魔たちは悲鳴を上げて霧のように消えた。
太郎「像のフリして待ち伏せとか、性格悪すぎるやろ……」
蒼真「死霊系はこういうの多いんだよ」
オカン「ひよりの聖域があれば余裕や! “ひより無双”や!」
太郎「ゲームタイトルみたいに言うな!」
沿岸都市サカイミナに到着すると、
潮の香りとともに、街の活気が一気に押し寄せてきた。
屋台が並び、魚を捌く音、客の声、商人の呼び込みが飛び交う。
商人「タコールあるでー! 今朝とれたてだでー!」
商人「こっちも安いけぇ、見てってごしない!」
太郎「おお、めっちゃにぎわっとるやん。こういう市場はテンション上がるわ!」
太郎はタコールや海産物を次々と買い込む。
オカン「太郎、売れそうなもんは買い占めや」
太郎「おお!」
蒼真「いや、買い占めはだめだろ……ほどほどにしとけよ」
オカン「蒼真、商売は“早い者勝ち”や! 遠慮したら負けや!」
太郎「悪徳商人の理論やん!」
ミスリル製クルーザーに乗り込み、太郎たちはシマナ国へ向けて出航した。
ひよりが海を見つめながら言う。
ひより「こちらの海……来たときの海より波が高いですね」
晴斗「ああ、海が荒れてるな。シマナ国の海域は魔物が多いって話だ」
その言葉どおり、海面が突然盛り上がった。
巨大イカルンが姿を現し、触手を船へ伸ばしてくる。
太郎「イカルンでかすぎるやろ!!」
玲奈「来るよ、太郎くん!」
玲奈が杖を構え、魔力を集中させた。
玲奈「――<雷鎖>!」
青白い雷が鎖のように走り、
巨大イカルンの触手をしびれさせて動きを止める。
太郎「ナイスや玲奈! 今や!」
晴斗が剣で触手を切り払い、太郎が追撃してイカルンを甲板に引き上げる。
巨大イカルンは気絶しているが、身はしっかりしており、焼けば美味しそうだ。
オカン「太郎、これ……ええ素材やで。イカルン焼きに使えるわ」
オカン「イカルンは“足が命”や! 足だけでご飯三杯いけるで!」
太郎「食い意地張りすぎや!」
太郎「よっしゃ、持って帰るで!」
シマナ国・マーツエに到着。
太郎は早速キッチンカーを出す。
太郎「ほな、今日はイカルン焼きで勝負や!」
オカン「大阪名物のほうやで。丸焼きちゃうやつな」
太郎「そらわかっとるわ!」
刻んだイカルンを小麦粉と卵の生地に混ぜ、鉄板で押し焼き。
ソースとマヨを塗ると、香ばしい匂いが港に広がった。
住民が足を止める。
住民「……なんやこのええ匂い……」
住民「見たことない料理やな……食べてみよか」
一口食べた住民が目を丸くする。
住民「……うまっ!! なんやこれ!!」
住民「わしも一枚!」
住民「わしも!」
あっという間に長蛇の列ができた。
太郎「なんや、めっちゃ並んどるやん!」
オカン「そらそうや。シマナは神の国やけど、食いもんの神は太郎やで」
太郎「勝手に神格化すな!!」
さらに、オカンを見ると住民が自然に手を合わせて拝んでいく。
太郎「なんでオカン拝まれとんねん!!」
オカン「うちは“商売繁盛の神”や! 拝んだら財布が軽くなるで!」
太郎「詐欺神やんけ!!」
そのとき、街の噂話が耳に入ってきた。
住民「今年の“神集の儀”、ほんまにできるんかのう」
住民「神事に使う神剣が盗まれたらしいで」
太郎「神剣盗難……?」
玲奈「ただ事じゃないわね」
夕方になり、太郎たちはキッチンカーを片付け、宿屋へ向かった。
宿屋で夕食を済ませたあと、全員が一つの部屋に集まっていた。
オカン「今日もごっつい稼いだで。もちろん全部、投資にまわしたけどな」
太郎「また勝手に……」
オカン「太郎の金はうちの金、うちの金は太郎の金や!」
太郎「夫婦の財布の話みたいに言うな!」
その瞬間だった。
ひよりの足元に、細かな光がふわりと集まり、空気が震えた。
太郎「……なんや?」
光が一点に凝縮し、“何か”が床に倒れ込む。
小さな白い影。
ひより「きゃっ……!」
太郎が駆け寄る。
太郎「……白い猫? いや……」
よく見ると、それは傷ついた小さな白い虎の子供だった。
体は震え、呼吸も浅い。
白虎「……たす……けて……聖都……イズモ……危機……」
ひより「この子……聖獣……?」
蒼真「聖獣がこんな状態って……ただ事じゃねぇぞ」
太郎「なんで聖獣がここに倒れ込んでくるんや……?」
オカンは白虎をじっと見つめ、
いつもの軽口とは違う、低い声で言った。
オカン「太郎……これはほんまにヤバいで。“神集の儀”と“神剣盗難”……
全部、一本の線で繋がっとる可能性が高い」
太郎「……マジかいな」
白虎は震える声で続ける。
白虎「……イズモ……神々……あぶない……」
ひより「助けなきゃ……!」
太郎は拳を握りしめた。
太郎「しゃあない……行くしかないやろ。聖都イズモに!」
オカン「よっしゃ太郎! 神の国でも商売繁盛させたるで!」
太郎「今は商売ちゃうわ!!」
部屋の空気が一気に張りつめた。
こうして太郎たちは、
シマナ国最大の神域――聖都イズモへ向かう決意を固めた。
────────────────────────
太郎「いや?、イカ焼きめっちゃ売れたな! あれ行列エグかったで」
晴斗「途中で鉄板追加しなきゃ回らなかったもんな」
晴斗「俺、焼く係ずっとやってたから腕パンパンなんだけど……」
ひより「みんな笑顔で食べてくれて……嬉しかったです」
玲奈「太郎くん、あのソースの香りは反則だよ」
オカン「売上は全部まとめて投資に回しといたで」
太郎「また勝手に!? ワイの売上やぞ!」
蒼真「いや、太郎のじゃなくて“みんなの”だろ」
オカン「心配せんでも増やして返すわ。倍にしてな」
太郎「返してもらったことないやろ! 勝手にものを買いよるけど」
ひより「ふふっ……でも、今日も無事でよかったですね」
読んでくれてほんまおおきに。オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と言ってます
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。




