第53話 オカナ国とオーガの影
朝の海は、まるで磨き上げたガラスのように滑らかだった。
ミスリルクルーザーの船首が水面を切り裂くたび、
細かな飛沫が陽光を受けて虹色に光る。
晴斗「いや?……気持ちええなぁ。潮風が最高や」
蒼真「ここまで穏やかな海も珍しいな」
玲奈「空も海も澄んでて……なんか旅してるって感じですね」
ひより「太郎くん……見て……魚が泳いでる……」
太郎は手すりにもたれ、潮風を胸いっぱいに吸い込んだ。
潮の香りが鼻をくすぐり、心が少し軽くなる。
太郎「こんな旅も悪くないな……」
オカン「太郎、日焼け止め塗っときや。焦げるで」
太郎「誰が焼き魚やねん!」
オカン「焼き魚ちゃう、炙り太郎や。人気出るで」
太郎「出るか!!」
勇者たちは笑い声を上げた。
海の上では、悩みも疲れもどこか遠くへ流れていくようだった。
しばらく進むと、海の色が少しずつ変わっていく。
透明な青から、川の流れが混じったような淡い茶色へ。
蒼真「……川が多い国なんやろな」
晴斗「お、見えてきたで。あれがオカナ国か?」
遠くに、桃色の旗が並ぶ港町が見えてきた。
赤茶色の石造りの家々が並び、屋根は三角形で統一されている。
どこか素朴で、のんびりした空気が漂っていた。
太郎「なんや……可愛らしい国やな」
港に着くと、係員が目を丸くした。
係員「こ、こんな立派な船……どこで作ったんですか!?」
太郎「ちょっと魔改造しただけや」
オカン「最適や」
係員はオカンを見て固まった。
係員「……えっ……な、なんやその……ちっこいヒョウ柄の……妖精?」
オカン「誰が妖精や。おばちゃんや」
係員「しゃ、喋ったぁぁぁぁ!!?」
オカン「妖精より働くで。時給は高いけどな」
太郎「勝手に時給上げるな!」
太郎が手をかざすと、ミスリルクルーザーが光に包まれ──
ストレージへ吸い込まれるように消えた。
係員「えっ……消えた……? 妖精の仕業……?」
太郎「ちゃうわ」
オカン「せやで」
太郎「ややこしいこと言うな!!」
港の市場は、甘い香りで満ちていた。
桃色の果実“モーモ”、紫色の“グレプ”が山のように積まれている。
住民「兄ちゃんら、モーモ食べていき! 甘いで!」
ひより「……おいしい……!」
玲奈「このグレプ、果汁がすごい……!」
太郎「うわ……これ商売になるレベルやん……」
晴斗「これワインとかできへんのかな」
太郎「おまえはまだ飲めへんけどな」
晴斗「なんでやねん!」
オカン「買い占めや」
太郎「やめろ!」
オカン「太郎、商売するなら“買い占め→高値売り”が最適や」
太郎「悪徳商人の発想やめろ!!」
晴斗はモーモを丸かじりしていた。
晴斗「これ、めっちゃうまいな……!」
市場の端で、怒鳴り声が聞こえた。
ビリケーン神官「“奉納金”が足りん! 神を怒らせる気か!」
住民「そ、そんな……もう払えません……」
黒いローブの神官が、老人を地面に押し倒している。
晴斗「なんやあいつら……やりすぎやろ」
蒼真「またビリケーン寺院か……」
太郎「ほんまロクでもないな」
太郎は眉をひそめた。
オカン「ビリケーン? うちの近所にもおったわ。口だけ立派なやつ」
太郎「どこにでもおるんやな……」
港の外れでは、けがをした住民たちが座り込んでいた。
ひよりが駆け寄り、治癒魔法をかける。
ひより「大丈夫……痛くないようにするね……」
住民「ありがとう……ほんま助かる……」
オカンもアメちゃんを配り始めた。
オカン「ほれ、これ舐めとき。元気出るで」
住民「なんやこれ……めっちゃうまい……! 神の恵みか……?」
太郎「いや、ただのアメちゃんや」
オカン「神の恵みちゃう、オカンの恵みや」
太郎「ややこしいわ!!」
太郎が事情を聞くと、住民は震えながら語った。
「最近、沿岸の村が“オーガ島”のオーガに襲われとるんや。
金品だけやなく……娘まで連れていかれて……」
太郎「……オーガ、か……
なんでこういう厄介な奴ばっかり出てくんねん……」
住民は続ける。
「しかもや……ビリケーン寺院の神官が、
“奉納金を払えば守ってやる”って言うてくるんや……」
太郎「……完全に悪徳商法やんけ」
オカン「悪徳商法は許されへん。うちの町内会でも禁止や」
太郎「町内会レベルの話ちゃうねん!!」
太郎は蒼真に目配せした。
太郎「蒼真、ちょっと調べてきてくれへん?」
蒼真「任せとけ」
蒼真は影に溶けるように姿を消した。
風が吹き抜けるように、気配が消える。
しばらくして戻ってくる。
蒼真「太郎……やっぱりビリケーン寺院が絡んでる」
太郎「やっぱりか……」
蒼真「オーガ島のオーガと呼ばれるものたちがいる。
ただ、背後に寺院の神官の影がある。
奉納金を集めるために、オーガを利用してる可能性が高い」
太郎「……ほんまロクでもないな、あいつら」
オカン「太郎、こういう時は“しばき割引”や。二割増しでしばく」
太郎「割引の概念どこ行った!!」
太郎は立ち上がった。
太郎「よし、行くで。オーガ島や」
晴斗「やっと出番か!」
玲奈「準備はできています」
ひより「太郎くん……気をつけてね……」
オカン「オーガなんか、ピックで刺したら終いや」
太郎「物騒なこと言うな!!」
オカン「心配せんでええ。刺す前に説教したる」
太郎「もっと怖いわ!!」
こうして、太郎たちは
オカナ国・オーガ島のオーガ退治へ向かうことになった。
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晴斗「しかし太郎、オーガってどんな見た目なん?」
蒼真「大体デカくてゴツくて臭い」
玲奈「蒼真くん、それ偏見じゃ……」
太郎「いや実際そうやろ。前の世界でも似たようなんおったし」
ひより「太郎くん……刺すのはほどほどにね……?」
太郎「ほどほどに刺すってなんやねん」
オカン「太郎は刺突が本業や」
太郎「俺はあきんどや!!」
晴斗「でもピックで刺すんやろ?」
太郎「お前ら全員ツッコミ待ちか!!」
読んでくれてほんまおおきに。主人公は最弱ステータスやのに、自作AIだけは最強クラスでついてくるというバグみたいな状況で冒険しとります。
オカンは「ブクマ押しとき!損はさせへん!」とか「★評価?そら押すやろ常識やん!」と作者より前に出てくる始末です。
もし少しでも笑えた、続き読みたい、オカンうるさいけど好き、など思ってくれたら、ブクマや★評価で応援してくれたらオカンがめちゃくちゃ調子に乗ります。作者もついでに元気になります。ほな、次回もよろしく頼むで。
この作品はカクヨムにも同時投稿しており、どちらでも読みやすいように調整しています。更新はできるかぎり 毎日2回でがんばります。




